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感情を作るための仕掛けを作る

レッスンで爆発的にテンションを上げるエクササイズをやることがあります。

何か簡単な動作を演じてもらう中で、自分のタイミングで突然爆発的にテンションを上げてもらいます。

それは表に出てくる表現でやってもらうのですが(例えば大声が出るほどの何か)、

演技初心者には演じている中でただ大声を出すことすら難しい。

そういうわけで、自分の殻を破るというのを目的のひとつとしてやっています。

テンションを上げるといっても、実際には「驚き」とか「ウェーイ!」なやつじゃなくて色々ありますよね。

ショッキングなほどの哀しみとか、死ぬほど嬉しいとか。
 

もう20年近く前だったと思いますが、菅原文太さんが徳川家康の役をやっている現場に行ったことがあって、

その時、文太さんはすでに半分引退したような感じの時期で、

衣装を着ていない時はどう見てもただのおじいちゃんだったんです。

しかしカチンコが鳴った瞬間に家康になってしまい、怒りを表すシーンでは、

大きな声も出さない、顔も体も動きがほとんどないのに、怒りが爆発しているのがわかりました。

内側のテンションが瞬間的に「ドンっ!」と上がる感じです。

これが一流の俳優なんだと、震えましたね。
 

感情を大きくするには、俳優自身が、
(殆どの場合台本に書かれていない)何かを設定しておく必要があります。

これが私が「仕掛け」と言っているものです。
 

例えば怒るシーンであれば、まずなぜ怒るのかを台本から読み取るのですが、

それは脚本に明確に書かれている場合もあるし、そうでない場合もあります。

俳優が脚本を読む力が絶対的に必要です。

安易な浅い脚本読解で読み取れる”理由”や”原因”だけじゃ足りない場合がほとんどだと思ってください。

なぜ怒るのか、その怒りはどこから来るのか、その根本的な原因を探ります。

役の心理を深掘りしていけば、実は怒ってないかもしれないですよ。もしかしたら怒りよりも悲しみが大きかったりするかもしれません。

そしてその怒りはどこに向かっているのか。セリフでは相手に怒っているけれど、実は自分に対して怒っているかもしれません。

それらの選択肢を、演じる俳優自身が「これなら感情爆発するわ」というところに設定することが大事です。

多くの場合、自分の経験と重ねてうまく感情が引っ張ってこれるような仕掛けを作ります。

それを時限爆弾のようにシーンの途中に置いておく感じです。

ただ、実際に現場で演じるときの表現はそのシーンに適したものでなければいけません。

こういったことを緻密に組み立てるのも俳優の仕事です。面白いでしょ?

今回はこの辺で。

私の文章力ではちょっとわかりづらかったかもしれません。ま、実践しないとですが、ご質問があれば受け付けます。

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