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Wリーグ2020/21シーズンまとめ

Wリーグ2020/21レギュラーシーズン・ファイナルシリーズ全日程これにて無事終わり。リーグ優勝(Premiership)のシドニーFC、そしてチャンピオン(Championship)となったメルボルン・ヴィクトリーの両チームに心の底からおめでとう。(もちろんヴィクトリーに関してはここに書く以上に喜んでますし浮かれてます)

サッカーのプレーもそれ以外も色んなことがたくさん起こったシーズンでした。前シーズンこちらにいたスター選手の多くが外国に移籍したり開始が遅くなったりしてどうなるかと思われたことも懐かしいほど色々あってハラハラドキドキ、面白いシーズンだったと思います。

そんな今シーズンでまず予想されていたのは選手の大規模な世代交代による若手の台頭。たくさんの若い選手が出場機会を掴んで活躍しました。そして多分予想外だったのがリーグ順位の超接戦。得失点差でファイナルシリーズを逃したアデレードは本当に残念でした。他クラブからも賞賛されるプレーもそうですしシーズンを通して何か大きく落としたわけでもなかったですし。まあそのアデレードを蹴落とす形で最後の2節でトップ4に食い込みあわや優勝も掴める位置に付けたのがヴィクトリーなのですが。ただ(困難が多々あったパースを除けば)比較的格差が少なく、トップ4争いを中心にシーズンを通して見応えがあったと思います。

ここからはちょこっとずつトピック毎に振り返ってみます。

飛び道具祭り

今シーズンの名ゴールハイライトを見るとわかるのですがとにかく遠くからゴールを狙う&決めることが多かったシーズンでした。

(この動画には入ってないですがセミファイナルでもすごいのがいくつかありました)

特にキャンベラはシーズンの前半ではボックス外からのシュート・ゴールが圧倒的に多く、逆にヴィクトリーは全体的には少なかったり(ただKyra Cooney-Crossが何かにつけて距離のあるシュートを狙う傾向も)。

基本的にWリーグでは引いて固めるチームはいないのと若い果敢なアタッカーにテクニックが備わっているのが関係しているのかな。あと女子のゴールキーパーが体格的にできることの限界とかも。来シーズンは何らかの対策されて変わったり(=減ったり)する可能性も無ではないのでちょっとだけ言及してみました。

柔軟に適応する力(その1)

Wリーグのシーズンは短いながらシーズン前半では州間移動の規制、そしてその後もピッチのコンディションや天候などによりスケジュールが安定しないことが多かったのが強く記憶に残っています。どこのクラブもある程度影響を受けた中シーズンをだいぶ遅れて始めることになったパースの大変さは桁違いだったはず。

ヴィクトリーもスケジュールの変更や現地に移動してからの試合延期など色々ありました。JeffことHopkins監督はこんなことを言ってたそうで。

"We've prepared for Perth, we've prepared for Sydney, we've prepared for Perth again, the last few days we just didn't know what we were preparing for."
(パース戦プレビュー:https://www.melbournevictory.com.au/news/w-league-preview-victory-v-glory-1)

別の試合の前には「選手も監督も大変だけどもっと大変なのは分析スタッフと飛行機やホテルを予約する担当のスタッフ」というようなことも言っていました。予定外のことが多く起こったシーズンですがたくさんの人たちのおかげで無事終えることができて本当によかった、感謝しかありません。

柔軟に適応する力(その2)

選手たちが適応する必要があった場面はスケジュール面以外にも。
Wリーグは選手の入れ替わりがあっただけでなく元々の選手層がそこまで厚くないこともあって何かのはずみで本来専門のポジションとは違うポジションをこなさなきゃいけないことも珍しくなく(女子サッカーではよくあることですかね)。

ヴィクトリーでいうとPolly Doranがその主たる例。前シーズンまではウィングで交代要員だったのですが今シーズンからは右サイドバックでレギュラーに。最初こそちょっと心配だったのですが試合を重ねるうちにヴィクトリーの8試合クリーンシートを支える強固なディフェンスの一員へと成長し「いやサイドバック以外最初からありえなかったのかも」と思うほどに。
ヴィクトリー以外だとシティの若い右SB、Naomi Chinnamaがシーズン終盤は3バックシステムでCBとして起用されてたのを見たのですが今後どういう使われ方になるか興味深いです。

放送に関するエトセトラ

短いシーズンで試合数が少ない中放送トラブルは数々ありましたねー・・・(汗)
とりあえずカメラの数だったり画質だったり、あと海外配信用Youtubeリンクは毎試合しっかりして欲しいです。(もちろんAリーグの方も含めて)ちゃんとやってくれるところに放送権が行きますように。

ポジティブな話でいうとWリーグOGだけでなく現役選手(しかも若めの選手まで)が他クラブの試合の実況席に座るという試みが良かったです。ヴィクトリーのキャプテンAngie Beardが実況出るときはそれ目当てにシティの試合見ました。彼女も若いんですがWリーグにはもう長く出てますし性格もしっかりしてて人前でしっかりしゃべれるし、プロが隣にいる状況で支えられ学びながら仕事してたようだったのでこれからも出て欲しいです。
(ただこのシステムでネックなのはパースやアデレードなど州内に1クラブしかない都市では採用しにくいという地域格差。パースでの試合とかだと実況席に1人だけとかいう場合も多いですしちょっとずつでもなんとかならないかなあと地味に思っていることの一つです。)

選手のリクルート

前述の通り選手の大幅な入れ替わりがあった今シーズン、各クラブが選手を揃える課程でも異例なことが多々ありました。

先日の試合で言われていたのがシドニーは特にローカル(国内)の選手、以前からシドニーに所属していた選手を早く確保して入国後の隔離の心配なくチーム作りをしていたのが功を奏した面もあるそうで。逆にシティは海外移籍の影響が一番重かったチームで全体的に加入発表も遅く、またシーズン開始後も海外から来たり戻ってきたりした選手が何人かいたこともあり足並みが揃いにくかった、と言えるかもしれません。

ちょっとその話からはずれますが面白いなと思ったのはアデレードのIsabel HodgsonとChelsie Dawberの2選手がWリーグのオフシーズンでもNPLで一緒にプレーしていて、連続的に一緒にプレーすることによって磨き上げられたコンビネーションがWリーグでも生きているという話。どれくらい意図的に選手獲得に活かせるのかわかりませんが実現できれば選手・クラブどちらにも良いことかも・・・?

今シーズンがWリーグ初参戦の選手も多くいましたしベンチスタートからレギュラーにステップアップした選手もたくさんいました。きっと来シーズンはどこのクラブもある程度の安定とさらなる成長を求めてチームを作るはず。特に守備陣は安定性が大事ですしヴィクトリーの今のDF4人は是非来シーズンも揃って砦になっていただきたいです。

短いシーズン

以前シーズンが短いと大きい怪我をしてしまうと早い段階でもシーズンアウトということに言及しましたがそれでなくても12試合という短いレギュラーシーズンのうちにチームを安定させるのは至難の業。今シーズンのように特に環境の変動が激しいと特にそうですね。ヴィクトリーはなんとかトップ4に入れるように間に合ってその上でファイナルトーナメントでピークを迎えた形でしたが、なかなかそうもいかなかったチームもいくつかありました。

かなり接戦なリーグ順位に加えて各試合のウェイトも大きく見てる側も毎週緊張の連続でしたが、12試合だとやっぱり見て応援する側もやっとチームの全貌が見えてきたころにはもうリーグ順位もだいたい決まってきてシーズンも終わりに近づいて、くらいの感覚もあるのでなんだか儚いというかもうちょっと長く見たいなあ、というシンプルな感想もあります。
(それに加えて選手のお給料とかチームワークの成長とかホーム&アウェーで全チーム対戦できるメリットとか、そういうことももちろん。)

2021/22シーズンは・・・どうなるでしょうねえ。
各クラブが特に守備の選手をキープできるとより安定するかな、と思いますしミドルシュートも対策されて減る可能性も。今シーズンステップアップした選手層より若い選手が出てくるのはまだちょっと後になるのかな。今回活躍した選手がさらに成長してリーグ全体のレベルが少しでも上がるといいなと思っています。

国外移籍はまだまだ難しいままですかね。外国から来る選手もそうですがWリーグは今シーズン遅く始まったため北欧などのリーグなどと噛み合いが悪くなり、ファイナルシリーズを前にして移籍となった選手もいました。Matildasの招集もファイナルシリーズとタイミングが悪かったですし(新しい監督からの国内の選手の評価がどうなるか気になってたので残念)。そういった国外との連携が来シーズンはもうちょっと良くなるといいなと思っています。