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Aリーグ女子2021/22シーズン閉幕。

Aリーグは男子も女子もどうなるかわからないのが世の常ですが今シーズンのAリーグ女子は空前絶後の大波乱となりました。
コロナや悪天候により最後まで試合が延期になり、2022年3月10日にレギュラーシーズン最後の試合が終わり、その余韻に浸る暇も無く次の日からファイナルトーナメントに転がり込む慌ただしいスケジュール。
でもまずはリーグ首位(Premier)を守り切ったシドニー、そしてチャンピオンになったメルボルン・ヴィクトリーにおめでとうを。
そして「誰が最終的に勝利したか」ではとても語りきれない今シーズンのあれやこれやをなんとかまとめようとしてみます。
(応援してることもあってヴィクトリーの振り返りは別記事で)

食うか食われるかの混沌

順位表から見える範囲をはるかに超えてリーグ全体が荒波にもまれ続けたような今季。前述通り様々な理由で試合が延期されたり、チームの活動が一時停止したり、はたまた2月には週2くらいのペースでどんどん試合を消化したり、その間ずっとパースとウェリントンは本拠地を離れて試合を続けたり。どのチームも主力の選手が怪我やコロナ、代表招集などにより試合を欠場したことがあったはず。

その予期せぬ諸々によりチーム同士の強弱や相性のダイナミクスがこれまでより激しくアップダウンして、結果シドニーとメルボルンシティ以外は4点とか5点以上失点する試合を1回は経験することに。リーグの伝統的に強いブリスベンやキャンベラが調子が上がらない時期に8-2とか6-0とか大差で負ける(そしてファイナルに届かない)のを見るのはなかなかショッキングでもありました。でもそういうチームでも持ち直して別の試合で勝ちをお見舞いしたりするし、どこがどこを食らうか予測がつかない。本当にこのリーグはシーズンの短さに対して様々なことが起こりますね。

ただ色んな方向に感情を振り回されてまくっても「もっとシーズンを長くしてくれ」といういちサポーターとしての思いは変わりません。(というか今季の過密日程を見てもっとスケジュールに余裕があったらよかったのにと)
例えば今季がまだ続いていたらどこが一番恩恵を受けるんでしょうね。チームの調子も落ちついていく中でウェリントンとかが若干調子を上げてもそこまで大きく強くなるわけではなさそうだし、キャンベラは果たして上位までたどり着いたのか。ただ後半でぐぐっと強くなったアデレードはしばらく伸びて脅威になり続けそう。

今期の主役その1:ゴールキーパー

以前記事にしたように男子も女子も今期はなにかとゴールキーパーにスポットライトが当たるシーズンでした(男子は現在進行形でネタが増えている)。
女子で比較的最近の話だとあわやリーグ初のGKによる得点になるところだった事件(ニューカッスル・ジェッツ)やリーグ初のフィールドプレーヤーがゴールを守ることになった事件(ヴィクトリー)や、愛のあるゴールキーパー交代(ウェリントン)など、17歳(キャンベラのChloe Lincoln)から42歳(シティのMelissa Barbieri)までゴールを勇敢に守り、グランドファイナルまでチームの命運を変えるようなプレーを見せてくれました。

以前の記事を読んでいない方に補足するとタイポではありません、42(よんじゅうに)歳です。もともとシュート自体を打たれにくいシティではありますがほぼ毎週ナイスセーブでゴールを守ってました(むしろすぐ前にいる長年チームメイトやってるはずの味方からの無茶ぶりでピンチになることが・・・)。

現役選手としては年齢も活動年数(25年+)も国内記録保持者なので来年も元気に続けて欲しいです。

今期の主人公その2:ウェリントン・フィーニックス

2021/22シーズンから女子チームがAリーグに参入したニュージーランドのクラブ、ウェリントン・フィーニックス。参入の公式発表も開幕ちょっと前で、急いで集めた選手やスタッフはAリーグでプレーするために母国を出発し、男子もお世話になっているWollongongを本拠として全試合をオーストラリアでプレーしました。
選手はプロ経験ゼロの若い選手が多く、ニュージーランドのクラブという特殊な事情から選手が代表招集などで抜けても追加の選手を補充することが難しかったり、短いシーズンの中にファミリーとなって多くの困難に立ち向かってきた新参チームですが、開幕節の引き分け試合から今後手強い敵となるであろう徴候が見られ。

男子のウェリントンも「自分が応援してるチームの次に好ましく見ている」人が多いチームですが女子はそれ以上というか、多くのAリーグファンがその初めてのシーズンを見守り、成功を願い、そして初ゴールも初勝利も喜んだものと思います。
初めてのプロリーグでの試合、初めて決めた得点、初めて分かち合った勝利、ウェリントンの選手たちの数々の「初めて」を目にするのはサッカーを見る側としても本当に貴重な体験でした。

来年はきっとニュージーランドで試合もできてもっと強くなって戻ってくると思われるので今から気持ちの準備だけしておこう。

隠れた主人公:Cassidy Davis

今期からリーグ名が「Aリーグ男子・女子」となって各種記録も男子・女子共通で表示される・語られることが多くなりました。
その一例が先ほどのMelissa Barbieriの出場年齢・年数の記録であり、そしてニューカッスル・ジェッツのCassidy Davisが今シーズン打ち立てた109試合連続出場記録。Aリーグ男子・女子を通じて最長となる記録です。しかも「2013年のリーグデビューから継続して出場している(現在進行形)」という、さらにすごい偉業。

女子のリーグはシーズンが短いことやシーズンアウトになるような怪我が(オフシーズンでNPLでプレーしている期間も含め)多いこと、そして今シーズンのコロナやコロナが流行った後になぜか流行る胃腸炎などの欠場の可能性を考えると本当にすごいこと。ちなみにこちらの記事によると胃腸炎にはかかったけど出場はできたそうです。
彼女自身が言うように運ももちろんあったと思いますがここまで週1~2の試合に支障がでる負傷がないのは何か他にも理由がないかと不思議になります。しかも上のツイートの上位3人がニューカッスル男子・女子のみで100試合以上出場しているのも偶然にしてはすごい気が。Aリーグの七不思議の候補?

ファイナルトーナメントの仕様変更

前述の通りとにかく女子の試合が増えて欲しい中、ちょっとした仕様変更が。
今期からAリーグのファイナルトーナメントの試合数が僅かに増えました。
女子の場合、以前は:
上位4チームの決勝2試合→②それぞれの勝者が決勝
だったのが、今期からは
上位4チームの準決勝2試合→②1位2位の準決勝の敗者 vs 3位4位の準決勝の勝者によるPreliminary final→③1位2位の準決勝の勝者 vs Preliminary finalの勝者による決勝
というシステムに変更されました。(男子のシステムはまたその時に説明します)
つまり上位同士の準決勝に勝てば1週休みでそのまま決勝に行けるし、上位同士の準決勝に負けても敗者復活的なチャンスがあるしホームで試合ができる、結構色々面白い長所があるシステム。

特に今回ヴィクトリー(リーグ4位フィニッシュ)がチャンピオンになる過程で3位を倒し、2位を倒し、1位を倒すことになった事でこのシステムが最大限に生きた気がします。あとシティが2位だったことで「ホーム」でファイナルが出来たし制度としては一番良い形で味方になったのかも。もちろん他のチームにとってこのシステム変更がどう影響し得たかはわからないままですが。

今期もメルボルン・ヴィクトリーが最後のグランドファイナルまで残って、そして優勝したことで自分が応援しているチームのチームとしての姿を(期間として)最大限に見ることが出来たのですが、それでもシーズンの終わりは急で儚いものに感じます。
みんなNPLやサッカー以外の生活に戻って、いずれ帰ってくる選手もいる中海外移籍した選手は(こちらの次のシーズンがまだ確定してないのもあって)次応援できるのがいつになるか分からないケースも。
来年はさらに新しいチームがリーグ参入するという話もありますし、まだ夢物語のような未来像を描きながら、わくわくする報せに耳をそばだてながら次のシーズンを待ちたいと思います。

そしてチャンピオンとなったメルボルン・ヴィクトリーの今シーズンについてはこうご期待。