【インタビュー】音声ガイドナレーションのプロフェッショナルに聞く~「1894 Visions展」の収録現場から~
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三菱一号館美術館で開催中の話題の展覧会「1894 Visions ルドン、ロートレック展」。音声ガイドのナレーションをつとめるのは、声優の安井邦彦さんです。まだ暑さが残る2020年9月某日、都内スタジオでその収録が行われました。本日は特別に、その様子を少しだけお見せします😲
―音声ガイドナレーションの超プロフェッショナル!安井邦彦さんってどんな人?
アニメやゲーム、映画の吹替など、様々なジャンルで幅広く活躍する声優の安井邦彦さん。人気格闘ゲーム『ザ・キング・オブ・ファイターズ』の八神庵役などでご存知の方も多いかもしれませんね。
魅惑の低音ボイスでファンを虜にしてきた安井さんですが、実は、音声ガイドナレーションの「超一流のプロフェッショナル」だということをご存知でしょうか?東京国立近代美術館や京都国立博物館、九州国立博物館など、国立美術館・博物館の常設展ガイドのほか、世界遺産である元離宮 二条城のガイドナレーションを務めるなど、全国各地の美術館・博物館、文化施設の音声ガイドで引っ張りだこ!弊社制作の音声ガイドでは、2006年頃からナレーションをお願いしてきました。
専門用語が多い美術館・博物館の音声ガイドナレーションは、少し特殊なお仕事です。聞き手がきちんと内容に集中できる正確な発音、聞きやすい明瞭な声。コンマ数秒まで計算された「間合い」で最後まで飽きさせない、高いナレーション技術が求められます。そんなスゴ技を持つ安井さんに、収録後、少しお話をうかがってみました。
■日本人の画家たちも憧れた「1894年」のパリの空気に触れてみたい
―さて、今回は三菱一号館美術館の10周年を記念する「1894 Visions ルドン、ロートレック展」の音声ガイドのナレーション収録でした。気になる作品などはありましたか?
安井さん まず「1894年」という時代を取り上げていること自体が面白いですよね。原稿を読んで、とてもワクワクしました。新しい芸術表現がたくさん生まれ、活気に溢れた・・・なんとも良い時代じゃないですか。実際に展覧会場へ行き、その空気に触れてみたいです。
安井さん ロートレックの『彼女たち』など、ヨーロッパの画家たちの作品ももちろん面白いのですが、私は、日本の山本芳翠や黒田清輝の絵も気になりました。今回紹介されている時代より少しあとの画家ですが、私は藤田嗣治が好きなんです。黒田清輝は、藤田の先生だった人でしょう?今回の展示の中では、日本の洋画はこうやって始まったんだということも見えてきますし、この時代の日本人の画家たちはみんなパリへ向かった。「1894年」前後のパリは、どんなに魅力的な街だっただろうと、もっと知りたくなりました。
■ロートレックが描いた、アリスティド・ブリュアンを演じて
―今回のガイドは、来場者全員が無料で聞けるアプリ型の音声ガイドです。来場前に聴くことができる体験版のコンテンツでは、ロートレックが描いたアリスティド・ブリュアン役も演じていただきました。いかがでしたか?
安井さん う~ん、大丈夫だったかなって(笑)。こんなんじゃないって思う人がいたらどうしようかと、それが心配です。でも、シャンソン歌手ですから、ダミ声で低音で、ちょっと斜に構えるようなイメージで・・・。「この絵を見てください」と説明するナレーションとは、また違った気持ちで取り組みました。
■一人でも多くの方にちゃんと伝わるナレーションを届けたい
―安井さんは、音声ガイドナレーションをこれまでたくさんされていますが、読むときに何か気を付けていることなどはありますか?
安井さん 一人でも多くの方に納得していただくことが、すべてだと思っています。ちゃんと伝わるように読む。当たり前ですが、それが私の仕事です。例えば、目で読めばわかるけれど、音で聞いただけではすぐに理解できない言葉というのは結構あると思うんです。そこをいかにきちんと伝えることができるか。いつもそんなことを考えています。
―今日の収録でも、文章の意味が正しく伝わる区切り方はどこか、といったことを一緒に考えてくださいましたね。ありがとうございます。
安井さん 音声ガイドの原稿は、耳慣れない言葉、専門用語もたくさん出てきますから、それらをしっかり自分の中にインプットして収録に臨むようにしています。年代の雰囲気をきちんと伝えるというのも大切だと思います。例えば、お客様が集中して絵を見ながら聞いていて、耳に入ってくる言葉が「1894年」ではなく「1984年」のように感じられてはいけないと思うのです。その数字ひとつでも、約120年前の時代の空気を感じていただけるように読みたいですね。見ている絵とシンクロして、正しい情報が一瞬で体に入ってくるようなナレーションになればいいなと思います。
日々の生活の中でも、正しい言葉遣いやアクセントを意識しています。だから正直、何を見ても聞いても気が休まりません(笑)。でもそれくらい、音声ガイドは大事に読みたい、そう思うんです。もしもこれからガイドナレーターを志す方がいたら、日頃使う言葉にも意識を持って毎日を過ごすということを心がけてみてほしいなと思います。
―安井さん、貴重なお話をありがとうございました!
安井邦彦さんが音声ガイドナレーションをつとめる「1894 Visions ルドン、ロートレック展」は三菱一号館美術館にて、2021年1月17日(日)まで開催しています。ぜひガイドとともにお楽しみください!それではまた😉
(聞き手・執筆:アコースティガイド・ウエムラ)
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ー展覧会情報
「三菱一号館美術館開館10周年記念
1894 Visions ルドン、ロートレック展」
会期:2021年1月17日(日)まで開催中 ※展示替えあり
会場: 三菱一号館美術館(東京都千代田区丸の内2-6-2)
開館時間:10:00〜18:00 ※入館は閉館の30分前まで
(祝日を除く金曜と会期最終週平日、第2水曜日は21:00まで)
休館日:月曜日*と展示替えの11月24日(火)、25日(水)、年末年始の12月31日(木)、2021年1月1日(金)
*月曜日が祝日の場合と10月26日(月)、11月30日(月)、12月28日(月)、2021年1月4日(月)は開館
ー音声ガイド情報
「1894 Visions ルドン、ロートレック展」では、ご来場の全ての皆様に、無料で音声ガイドをご利用いただけます。音声ガイドのご利用には、ご自身のスマートフォンもしくはタブレットに専用アプリをダウンロードいただく必要があります。アプリを事前にダウンロードして会場にお越しいただくとスムーズです。
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収録時間:約30分
ナレーター:安井邦彦
スペシャル解説:安井裕雄(本展担当学芸員)
※音声ガイドに関する詳しい情報は、【こちら】もご覧ください。
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