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小説・物語食卓の風景

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郊外で何不自由なく暮らしていたリタイヤ男性が失踪。家族や周りの人たちの戸惑いを軸に、家庭によって異なる家事のあり方について考えます。育児真っ盛りの娘、子どもがいない夫婦の姉、シン…
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#父親育児

物語食卓の風景・イクメンになりきれない夫⑤

物語食卓の風景・イクメンになりきれない夫⑤

 2日後、勝は急に命じられた仕事が多過ぎて残業になり、帰宅したのは夜11時を過ぎていた。すると、リビングのソファで香奈子がぼんやりしている。一続きになっているダイニング側の照明が消されているので、妙に暗く感じる。ぼんやりと「お帰り」という香奈子。勝はとっさに、急に夕飯がいらないと言ったことを恨んでいるのかと警戒した。そういえば、夕食がいらなくなったことをLINEしたときの反応が遅かった。

「ごめ

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物語食卓の風景・イクメンになり切れない夫④

物語食卓の風景・イクメンになり切れない夫④

 先週まで読んでくださっていた方々、すみません。ここの主役は香奈子じゃなくて勝になってしまったので、タイトルを変更しました。さて、食洗機が入ったおかげで香奈子の後片づけもまもなく終わり、家族でくつろぐ時間になりました。香奈子がリビングに来て、ソファーで勝のそばに座る。

「さっきの続きだけどさ。お母さんに会うの、気が重くてさ。ちょっと顔を出すぐらいならともかく食事をするとなると、すぐに帰れないじゃ

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物語食卓の風景・イクメンになり切れない夫③

物語食卓の風景・イクメンになり切れない夫③

 「とりあえず今回の会食は香奈子に任せるよ。またお義母さんと衝突しちゃったりしたら、グチはいくらでも聞くからさ。あ、洗い物俺やろうか?」

「いい、いい。ほらこの間食洗機買ってもらったじゃない。セットするだけだからさ」

「あ、そうか。まだ食洗機がある生活に慣れないな。やっぱり違うか?」

「うん。もうお皿なんてピッカピカ。手で洗うより高い温度で洗うからかな。でもね、鍋は下洗いをちゃんとしておかな

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