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全部無駄じゃん。と思ったあの日〜50歳脳卒中で片麻痺リハビリ中〜

2022年7月6日49歳の時に脳卒中で倒れ、1週間後めでたく50歳に。
後遺症で右片麻痺になり7ヶ月のリハビリ入院。12月25日から手のリハビリも兼ねてnoteをはじめ、2003年2月10日に退院。現在は通所リハビリ継続中。これまでの経緯と入院闘病記はこちら↓

真っ赤なネイルを見つめながら

地下鉄のホームで突然倒れたあの日、わたしの指にはネイルサロンでやってもらったばかりの真っ赤なジェルネイルがしてあった。いつもはピンクやベージュ系が多いのだが、誕生日が近いのもあり久々の赤だった。

救急車で病院に運ばれて、ICUで検査に回されるという時に意識を失ったので、次に気づいた時には病室のベッドの上。動かなくなった自分の右腕を左手で持ち上げると、ダランと垂れ下がった指先と真っ赤なネイルが目に入った。真っ赤なネイルの指先だけが、それがわたしの手だと証明しているかのようだった。

ああ、手が脚も全く動かない。感覚もない。麻痺してるのか。自分の右半分が失われてしまったような、そこに腕も足も確かにあるんだけど存在が感じられない。なんとも言えない不安に襲われる。顔はかろうじて感覚があるもののヒリヒリとした皮膚の痺れと麻酔をされた時のような違和感がある。

意識が戻ってからも、脳の出血と腫れ、そして血圧が落ち着くまで、最初の1週間は寝たきりで食事もとれずほぼ動けなかったし、2週間ほどは意識もぼんやりとしていた。それを過ぎた頃にようやく、少しずつ自分の置かれた状況を客観視できるようになり始める。

爪、真っ赤だな…。病院には似つかわしくない爪に思わず苦笑いしたが、そもそも想定外の出来事だったんだから仕方ない。

左手の爪どうする?問題

やったことのある人ならわかると思うが、ジェルネイルというのはそう簡単には剥がれない。水仕事にも強く、長持ちする。が、突然の入院にはそれが仇になった。

まずコロナですっかりお馴染みになった、血中酸素濃度計(パルスオキシメーター)。ジェルネイルをしていると測れないという話を聞いていたが、それに関してはわたしの場合は特に問題なく大丈夫だった。

ひと月ほど経って爪が伸びてきてから、はてと気づいた。どうやって爪を切ろう???左手は動くから、右手の爪は切れるからいいとして、左手の爪は?しかもジェルネイルをどうやって取ろう?

麻痺した右手を左手で持ち、難儀しながらもなんとか爪を切る。ちなみに右手の麻痺は指先にまで及んでいるので、爪を切っていても指先の感覚が鈍く痺れがあり、未だにちゃんと切れているのかよくわからない。

さて左手。こちらは…歯でジェルを剥がし、爪を噛んで短くした。仕方ない。だって色々試したけど、右手で爪切りは持てないし。手がダメなら口があるじゃない。こうして無事左手の爪どうする問題は解決した。

ネイルもマツエクも…全部無駄じゃん。

倒れた日からちょうど1週間後には50歳の誕生日を迎えていたものの、意識がはっきりせず。自分の誕生日?何それ?といった感じで実感も全くなく。結局、病院のベッドの上で記念すべき日は過ぎていった。

そして四苦八苦しながらもなんとかジェルネイルを剥がし、すっかり素に戻った爪先。それに加えて、毎月行っていたまつ毛のエクステも美容院もメンテナンスにいけないまま。さらには歯の食いしばりが酷くなったのか、前歯の隙間が広がり、何年か前にやったインビザラインでの矯正も元に戻ってしまった。

なんだ。全部無駄じゃん。お金と時間をかける意味とわ…?
もうやらない。美容にお金なんかかけてもしょうがない。

そんな風に思っていたのと、急性期病棟にいた頃は自分で顔も洗えなかったし、シャワーだって介助で週に1度だったので(真夏なのに!)、化粧水をつけるなんて習慣すら無くなっていた。

美容は自分のため。自己満足で何が悪い。

それがどうだろう?7ヶ月の入院を終え、退院した翌日。まずは美容院に行った。その翌々日にはマツエクサロンへ。翌週にはネイルサロン。

入院中、退院してまずやりたいことは髪を切ることだったし、自分を”整える”ことだった。退院してもしばらくはリハビリ生活で、毎日特にどこかに出かけるとか誰かに会うとか、そういう予定がなかったとしても。

わたしにとって美容は誰かのためじゃなく、自分のため。自分が心地よく、気分を上げるために必要だから。つまり単なる自己満足だけど、自己満足で何が悪い笑

今まで通っていたサロンのうち、ネイルサロンだけは手すりのない階段を降りた地下にあり、別のサロンを探さないといけなくなったのと、何年もずっと担当してくれていた美容師さんが新店舗立ち上げで来月いなくなるのが残念だけど。


あとこれは完全に余談ですが…
美容系のサロンって古い雑居ビルに入っていることも多く、手すりのない階段とか、エレベーターはあってもビル入り口に階段があることが多い。障がいがなければ全く問題のない、気づきもしなかったハードルは美容サロンに限らず、世の中にたくさんあるんだなぁと思う今日この頃です。

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