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【座談会レポート】T3 PHOTO FESTIVAL TOKYOファウンダーと振り返るACN芸術部とのコラボレーション (前編)

※本記事は、前編と後編の二回に分けてお届けします。
 
T3 PHOTO FESTIVAL TOKYO(以下、T3)は八重洲・京橋・日本橋エリアで開催される屋外型国際写真展で、会期中は国内外の写真家の展示や学生プロジェクトなどのイベントが行われます。T3とACN芸術部の関係は2021年に始まり、2023年はクラファンの企画支援や作品展示、トークイベントでコラボレーションしています。
2023年の会期が終了し年が明けた1月、T3のファウンダーである速水惟広さんとACN芸術部の参加メンバーで座談会を開催しました。この記事ではコラボレーションで生まれた効果や芸術部に期待されること、アートとしての写真の現在地などについて語った様子を紹介していきます。


座談会参加メンバー
T3 PHOTO FESTIVAL TOKYO: 速水惟広さん ACN芸術部: 佐藤(守)、佐藤(究)、伏見、三原、遠山、岡村

T3とACN芸術部の3年間

佐藤(守):T3の支援が始まって3年が経ち、芸術部をT3の企画の一部に取り込んでいただいたきました。芸術部との3年を振り返って感じられること・芸術部の印象についてお聞かせください。
 
速水さん:T3と芸術部の関係は2021年にクラファンを支援いただく形で始まりました。手伝っていただいたおかげで今年は過去一番のサポートがあり、成果が出ている事がありがたいです。最初はクラファンをやる案もありませんでした。T3は無料で見られるイベントでコアなファンの声を聞けることはあっても、金銭的な対価や直接の応援メッセージには大きな喜びを感じます。フェスティバルを実施するだけでは目に見えないものを知るきっかけになりました。
 
今年の芸術部の展示は会場の検討や内容を話し合いながら一緒に進められたのが刺激的な体験でした。芸術部の活動を知った他の企業からも芸術部のような活動をしたいと声が上がるなど、京橋・日本橋・八重洲エリアへの新しい価値の創造がありました。それはT3としてで動いるだけではリーチできなかったことです。この活動が種になり、次のステップに繋げることが出来たことは大きい。
 
佐藤(守):芸術部の活動や関係性がきっかけで活動している外部の方は他にもいます。部員のパートナーが別の企業で芸術部を立ち上げたことも。公共性のある場所や展示に顔を出して活動を公表することに意味を感じる。T3でもそのような展開ができたと思います。
 
速水さん:写真の撮影が好きな人は多くても、アート作品としての鑑賞と距離がある人は多いです。芸術部のようにアーティスト・専門職ではない人達がこうして関わってくれることが嬉しく、ファインアート領域に写真が入ってくることの理解促進も期待しています。
 
佐藤(守):写真と言うジャンルの教養を広めることについて参加メンバーはどう思って活動していた?
 
佐藤(究):去年の今頃は本気で写真について知ろうと思っていなかったです。冬休みにベンヤミンを読んで、写真というものの背景や評価を知れたのが今年のブレイクスルー。読んでいて写真って面白いなと思えたところを他の人に話して共有し深めるが2024年の目標です。

日本の写真作品の評価

速水さん:パリフォトという世界最大の写真フェアがあります。197の出展の内アジアからの出展は10、その中で日本の出展が7を占めていました。日本人が考える以上に日本の写真家の作品には高い価値が付いています。実は日本の写真史の長さは写真発祥の地と言われるフランスやイギリスとあまり変わらず、写真が誕生してから日本に輸入されるまでのタイムラグがほとんど無いのです。欧米は、自分たちに勝るとも劣らない厚みの歴史が日本にあることを衝撃と共に発見したんです。

日本の写真が欧米で高い評価を受けているのに、日本人がそれを知らないことが勿体ない。ヨーロッパの知識人からすると不思議な状況です。日本では作品の唯一性を求められる傾向がありますが、複製芸術である写真の魅力について撮ることに限定されない面白さがもっと語られてもいい。芸術部のような存在が写真について話すことは、写真に詳しくない人達でも「語って良いんだ」と思える安心感につながる。写真の面白さを広げる可能性になると思います。
 
佐藤(究):写真に興味のある人が集まって語る事があまり無かったので、そうした機会があると良いと思います。敷居の高さを感じる人との橋渡しは我々の価値貢献として関わりたい部分です。
 
佐藤(守):写真は日々何十枚も撮るのだけあり身近で、作品として考えることのギャップがあります。T3でのツアーや展示作品を作る中で写真の面白みが分かり、造詣も深まって来た。そういう機会をいただけることがありがたいです。
 
速水さん:芸術部が入る事である種の鏡になっていると思います。ある程度は芸術に造詣がありつつも、これまで写真と深く関わって来なかったぐらいの人達からのフィードバックを得られる。価値があるのに知られていないものにポテンシャルがあり、芸術部のような活動がきっかけで興味を持ってもらえることも大きいインパクトです。
 
佐藤(守):そうしたギャップを埋めるイベントや活動は芸術部に出来るところだと思っています。芸術部には日本のアートを扱うチームもり、活動の中でそれぞれの領域に触れる敷居を下げている。
 
速水さん:写真は撮るハードルが低く、自分が撮ったものと他の人が撮ったものとの違いや良し悪しが分かりづらいです。SNS上で人気な写真はもちろんあっても、ファインアートの文脈もあることを知ってらえる場を作りたい。
 
伏見:展示に行くような人は観る敷居は低くても「良い写真だったね」で止まることが多いと思います。若手作家の作品を扱って頻繁に展示を入れ替えたり売るための展示をしているギャラリーはよく見かけますが、写真だとそういう場はあまり無い印象です。
 
速水さん:写真は売るのが難しく、アートフェアでは作家に売り上げを渡すために出展料や輸送費などのコストを回収しないといけない。売れる作家しか連れて来られなくなり、若手作家の作品を出しづらくなってしまうことがあります。新進気鋭作家のお墨付き写真でも意外と安く買えるのが写真です。それを知ってもらえる場を作り、買いたい人が安心して買えるものをそのような場に出すのが大事なことだと思います。
 
三原:写真を買おうと思った時にイエローコーナーなどで好きなもの手に入れることはハードルが低いですが、アート作品を買おうとなった時にどうしようと思う事は多いですね。
 
速水さん:価値のある作品を手に入れたいという欲求に対応するのはギャラリーの役割だと思います。ギャラリーはもっとオープンな場になり得るし、ギャラリーも色んな人に来て欲しいと思っているのですが、外から見たら敷居が高く見えてしまうギャップがありますね。 

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後編では、各メンバーのT3に対する思いや参加を通して変わったこと、写真に出来る表現について考えたことについて語ります。

参考リンク:
T3 PHOTO FESTIVAL TOKYO
 
Text: Yoshie Okamura|Accenture Art Salon