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国際芸術祭「あいち2022」 : アートを通して考える激動の3年間

過去記事のアップです(2022年9月20日)

(アクセンチュア芸術部  鈴木 健)

インクルージョン&ダイバーシティを積極的に推進するアクセンチュアには多様なバックグランドを持つ社員が集まっています。社員のいろいろな興味に対応したクラブ活動があり、会社としてその活動をサポートしています。

今回は、そんなクラブの中でも、自分の好きなアートを楽しむことはもちろん、社内セミナーの開催や、アート団体の支援等活発に活動している芸術部のメンバーから、アクセンチュアも協賛する国際芸術祭「あいち2022」についてのレポートをお届けします

国際芸術祭「あいち2022」愛知芸術文化センター会場外観(Photo : Ken Suzuki)

みなさんこんにちは、テクノロジー コンサルティング本部所属の鈴木です。現在は通信メディア系企業のシステム構築支援に従事する傍ら、芸術部で企画・編集・ライティングを担当しています。2022年7月30日から10月10日まで開催されている国際芸術祭「あいち2022」を、会場からレポートします。

1. Prologue – 「あいち」を訪れる

筆者は学生時代からのライフワークとして、旅行がてら地方の芸術祭に足を運ぶことが多い。

草間彌生のかぼちゃを模した作品で有名な直島を含む瀬戸内地域で開催される「瀬戸内国際芸術祭」や、坂本龍一をゲストディレクターに2014年から始まった「札幌国際芸術祭」など訪れたものをあげればきりがないが、こうしてみると改めて現在の日本国内には多くの芸術祭があることに気づかされる。その中でも今年、特に楽しみにしていたのが今回の「あいち2022」だ。

というのも、森美術館館長の片岡真美氏を芸術監督に迎えた今回のテーマは “STILL ALIVE”。前回開催時の2019年から今回の2022年までといえば、いうまでもなくCOVID-19のパンデミックによって働き方や生活様式が大きく変わった3年間であり、その期間を経た我々にとって、これほどクリティカルなテーマはないだろう(筆者自身も2021年夏にデルタ株に感染したが、“まだ生きている”…!)。

参加作家も河原温や塩田千春、バリー・マッギーにガブリエル・オロスコといった国内外の有名作家から、ミニマルミュージックの大家スティーヴ・ライヒまで……弊社がスポンサードしているという奇妙な偶然もあり、とある8月の週末にひとり名古屋へ足を運んだのだった。

2. Still Alive – 「あいち」で出会う

河原温 ルウィットに宛てた電報、1970年2月5日 《I Am Still Alive》(1970-2000)より
LeWitt Collection, Chester, Connecticut, USA
©One Million Years Foundation

品川から新幹線で名古屋へ、そこから在来線で栄駅へ向かう。

駅を降りてすぐのところにあるのが、今回のメイン会場となる愛知芸術文化センターだ。

荷物を預け、展示室に入るとまず現れるのが河原温による一連の作品≪I Am Still Alive≫である。1970年に始められ、2000年までに約900通が世界各地の知人、キュレーターなどに送られたこのシリーズ作品。宮崎駿の『となりのトトロ』(1988)の作中にもある通り、電報とはそもそも緊急性を伴う連絡手段であり、とりわけ誰かの生死・安否がその記載内容となることも多い。

「私はいまだ生きている」とは、逆説的に河原が死に直面しているとも受け取られるメッセージであり、この電報を受け取った人が状況を心配する様子が想像できる。

今回の「あいち2022」の表題曲ともいえる作品であり、パンデミックを経た我々にとってより身近にも感じられてしまう作品だ。

3. Event Horizon – 「あいち」で考える

ローマン・オンダック《イベント・ホライズン》2016の展示風景 (Photo: Ken Suzuki)

愛知芸術文化センター会場におけるもう一つのハイライト作品だと個人的に感じたのが、スロバキア出身アーティストであるローマン・オンダックの≪Event Horizon≫ (2016) だ。

1本のオークの木の幹を100枚に切断し、その年輪に応じた1917年から2016年までの歴史的な出来事をひとつひとつのピースに刻印した作品であり、床に設置されているピースは展覧会期間を通して毎日1枚ずつ、壁に掛けられていく。

この作品、もし昨年目にしていたなら、ピースに刻まれた出来事に対して「あぁ、世界史の授業で習ったなぁ」程度の感想しか持たなかったかもしれない。しかしながらローマン・オンダックの故郷スロバキアに奇しくも隣接するウクライナでは、現在進行形で戦争が起こっているという現実を通り抜けた2022年現在改めて作品に対峙すると、ピースに刻まれている歴史上の出来事と、今私が立っている現在は確実に地続きにあるのだということをまざまざと思い知らされる

4. Epilogue - 「あいち」を離れる

紹介した作品を含め愛知芸術文化センターでの展示を鑑賞したのち、会場を後にした。

紙面の都合上今回は割愛するが、この後名古屋名物のひつまぶしを堪能し、さらに電車に揺られて一宮会場の展示も鑑賞。夜は名古屋在住の知人と酒を飲みかわし、終電にほど近い新幹線で帰京したわけだが、確実にこの芸術祭を体験する前と後では見える景色が変わっていることに気づく。それは決して酔いが回っているからではなく、現在進行形での歴史と個人を接続して考える機会を与えてくれた芸術祭によるものだろう

3年に一度開催される現代芸術を通した世界の定点観測、あなたも是非「あいち」を訪れてほしい。

国際芸術祭「あいち2022」

会期 : 2022年7月30日(土) – 10月10日(月・祝)

会場 : 愛知芸術文化センター、一宮市、常滑市、有松地区(名古屋市)


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