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歴史遺産や旧き良きものへの対応

2号館ありがとうプロジェクトの2つの狙い

昨年の7月13日から1ヶ月ちょいかけて描きあげてきた神戸市庁舎2号館のミューラルアート(壁画)ですが、いよいよ解体工事の仮囲いが設置されました。

「2号館ありがとうプロジェクト」と題して開始したアートプロジェクトですが、大きく2つの目的を持っています。

1つは、アーティストが生活できる街にしようという目的で、そのステップとしてみんなが気軽に楽しめるアートを増やすということ。

もう1つは、「旧き良きものを大切にする」ことです。

2号館の歴史

市役所2号館は63年前(1957年)に建てられました。当時の写真見てみるとなかなかイカす建物です。

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63年も経てば建物としては十分な歴史を持っています。
そもそも63年前(1957年)は神戸市役所が今の三宮の地に移転してきた年。そしてその時に建てられた本庁舎(当時は1号館)が今のこの2号館です。8階建でした。

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そして平成7年1月17日に阪神淡路大震災で6階部分が座屈し潰れてしまいます。その後破損した5階から上を撤去し、4階建てにしたことろにプレハブの5階を増設し、5階建ての2号館になります。

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ガラス張りだった南北の壁面は補強のためにパネルが張られ見事な殺風景に・・・。

2号館の思い出

私が入庁したのは2001年だったので、その時には2号館はこの姿でした。新規採用ですぐにこの2号館に入っている都市計画局に配属され、そこから合計して15年の歳月をこの庁舎で過ごしました。

旧い庁舎なので、夏は蒸し風呂、冬は冷蔵庫並み。温暖化対策のため、定時(17時半)になると空調が切られるし、昼休みや時間外は基本的に消灯されていたので、寒い・熱い・暗いと「いい思い出になる」環境でした。

実際、冬は底冷えがひどいので足元の床に段ボールや発泡スチロールを貼っていました。建物の中で防寒着を上下着て仕事していましたね(笑)

そんな2号館もいざ解体となると寂しいものです。15年間お世話になった気持ちになり、ふつふつと感謝の気持ちとお別れに対する寂しさが沸いてきます。

「僕より長く2号館で働いていた先輩方はもっと寂しいだろうな~」と素直に思えました。

旧き良きものを大切にする

解体計画がちゃくちゃくと進む中、「つなぐ課」に異動となりさまざまな社会課題を追いかけて解決に向けてコーディネートを頑張っているときに、「歴史的な価値があるものが簡単に消失している」という課題に向き合いました。

神戸は異国情緒あふれる街というのが一般的なイメージですよね。そう、昔から外国人居留地があったために洋館を中心として歴史的な建物が多くあります。
※実は洋館だけでなく茅葺きの建物も800棟ほどあり、現存する中で日本最古と呼ばれる箱木千年家もあります。

でも、たくさんある歴史ある洋館でも維持管理されて残していけるのはほんの一部です。文化財保護行政としては結構頭が痛い問題です。
そのまま維持管理することが大変なので、活用して残すということが求められており、その好事例として挙げられるのが北野地区の異人館を活用したスターバックスです。

この建物は「文化財」として登録されていたので活用され守ることが出来たのだと思います。国でも県でも市でも、歴史的な建物を守るために文化財登録することは常套手段の一つです。

でも文化財登録は結構ハードルが高い。登録されると維持管理に補助が出たりするメリットがある一方で様々な規制があり、デメリットを感じて登録したがらない所有者もたくさんいます。

文化財を守るのは最終的には所有者や地域の方々のその建物に対する愛着だったりリスペクトだったりすると思うのです。が、愛着より経済性が勝ってしまうのが実情です。

神戸市庁舎の2号館は文化財登録もされていませんし、三宮エリアの再整備プロジェクトの中の大きなピースの1つです。震災で深く傷ついているし、耐震性も微妙です。これから市民を守っていく砦としては少々役不足。なので取り壊されることも仕方ないです。

でも、あっさり壊してほしくない。せめて63年間頑張ってきた建物に最後の花道を!という思いで始めたのが実はこの「2号館ありがとうプロジェクト」でした。

ミューラルアートだけではない建物の花道

2号館の最後をアートで飾るプロジェクトは市役所としてではなく、ほぼ個人として実行しました。このコロナ禍で市税投入は理解を得るのが難しいし、税金投入することで手続きが複雑になって解体までに間に合わないと思ったからです。
※その辺はまたKobe Mural Art Projectの記事で語ると思います。

アートを飾るだけではなく、もっとみんなで楽しみたかったので、「2号館の中にアーティストをたくさん入れてアートギャラリーにしよう」とか、「1階ロビーを開放してOBや関係者に来てもらい感謝の落書きをしよう」とか、「リアルバージョンのスプラトゥーンを建物内でやろう」など、いろんな案を出しました。憎っくきコロナの影響で実現できたものは少なかったですね。

もうすぐ解体が始まりあっという間になくなる

2号館の敷地全体に万能塀が張られたのが昨年末。そして1月に入って徐々に足場が地上から立ち上がってきて、27日にはTOPの写真のようにミューラルのすぐ下まで届いています。もうすぐ足場で覆われ、パネルが張られて見えなくなります。
そして轟音とともに市庁舎の壁もろともつぶされ、あっという間に更地になってしまいます。

市役所にゆかりのない方なら、更地になってしまった時に、「あれ?ここって何が建ってたっけ?」みたいなことになります。無くなってみて初めて、ちゃんと覚えていなかったことに気づくのです。

今回は華やかなアートに飾ることでみなさんの視線を集めることができ、写真を撮ったりることで認識をし、記録や記憶に残してもらえたのではないかと思います。

ある方に「解体される建物にこういう向き合い方があるんだ!」って言われました。建物への感謝の気持ちが表れ伝わったことが嬉しいです。

神戸遺産認定制度の創設

旧き良きものを大切にするために、つなぐ課として新しい制度を提案しました。それが神戸遺産認定制度。

文化財指定を受けたものは補助制度はあるが、所有者等にとっては自己負担も大きい。
さらに未指定のものは助成は少なく、さらに経済的負担が増加。
神戸歴史遺産制度は、これらの歴史遺産を広く知ってもらう事により継承意識の向上を図るとともに、ふるさと納税等の寄附をもとにした新たな経済的支援制度により、多くの人と一緒になって貴重な歴史遺産の継承を支えていくための仕組みです。
神戸歴史遺産とは、法や条例で指定等を受けた文化財と、未指定ではあるが次世代に継承すべき歴史的遺産を新たに認定し、これらを合わせて「神戸歴史遺産」とします。
認定された未指定文化財は原則として所有者等への規制は伴いません。

ってことが「つなぐ課」で提案し「文化財課」につなぐことで実現しました。緩い認定制度で少しでも地域に認知が広がり、愛情とリスペクトでもってうまく活用されるようになればいいなと思います。


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秋田大介(社会課題解決コーディネーター)
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