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本を併読しないメリット

「併読」とは、複数の本を同時進行、並列的に読んでいく読書の仕方のこと。以前noteに「併読のすすめ」という記事を書きましたが、今回はあえて併読ではなくて、本を一冊ずつ読んでいくことのメリットについて書いていきます。

併読にはメリットもありますが、かといって本を一冊ずつ読んでいくことがダメだというわけではありません。本を一冊ずつ読んでいく読み方には特に名前がついてないと思うので、ここでは「単読」とでもしておきます。

さて、「単読」のメリットは何かというと、今読んでいる本を読み終わるまでの間、その本の世界に”脳内ハック”されることだと思います。たとえば、夏目漱石の小説『こころ』を単読しているとすると、読み終わるまでの間は、『こころ』のストーリーの中のどこかの地点に自分が生きている感覚。読書をしていないときでも頭のどこかで『こころ』のことが気になっている状態。これは、『こころ』の世界に脳がハックされているといえます。そして、この脳がハックされる度合いは、併読よりも単読のほうが強いように思います。

『併読』してる場合も、それぞれの本によって脳内ハックがおこなわれていますが、どこか断片的で没入感が低く、あまり臨場感は強くない。『単読』している場合は、まさにその一冊だけにフォーカスして読んでいるので、本の世界への没入感や臨場感も強い。ゆえに、より印象も濃厚なものとなり、記憶にも残りやすいように思います。

特に小説については、併読よりも単読した方が深い体験ができそうです。これは映画で考えるとわかりやすい。いくつかの映画作品を同時に少しずつ観ていくよりも、ひとつの作品を最初から最後まで通して観た方が楽しめる(もちろん、それが良い作品であることが前提ですが)。

まあ、小説と映画とでは表現形式が異なるので、単純に類推して考えることはできないのかもしれませんが、やはり一冊ずつ読んでいく「単読」に特有の体験はあるのだなあ、と実感しているこの頃です。



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