【乙庭植物図鑑】20230301 レマフィルム ミクロフィルム (= マメヅタ) (Lemmaphyllum microphyllum)
これまで、著書や歴代ブログやwebメディアなど、さまざまな媒体に植物の解説を書いてきましたが、結構情報が散逸している状態になってきたので、マイペースではありますが、note.に私の植物や植栽に関する知識をまとめていきたいと思います(ライフワークにできたらいいな😊)。
今日は、現在進行中の植栽案件でその案件特有の素材として採用していて、私自身もあえて現代のガーデニングで樹木幹や庭石、擁壁やブロック塀などに着生させたら面白いなと大注目しているシダ植物、 レマフィルム ミクロフィルム (= マメヅタ) (Lemmaphyllum microphyllum)を紹介します。
マメヅタは日本の本州以南、台湾、中国などを原産とするウラボシ科のシダ植物です。
丸く少し肉厚の葉やツタのように茎を伸ばして樹木などに着生して平たく広がりながら育っていく姿が、一般的な羽状複葉のシダ植物の印象とは大きく異なり、ガーデニング素材としてはとても意外性を感じさせてる素材です。
日本では山林で樹木や岩に着生している姿が比較的普通に見られます。山間地や山林に近い住宅地などでも車道脇の擁壁や民家の生垣などに着生してる例も多いです。
日本にも多く自生していて、日本人にとっては山や林で見かけている植物かもしれないですが、例えば都市部生まれ都市部育ちの人にとってみればとても珍しい植物にも感じられるでしょうし、小さく丸い葉姿や着生して這い広がる生態も、一般のガーデニング植物の範疇でみればとても風変わりなものといえるでしょう。
茎を伸ばしながら着生体に張り付いて広がるような育ち方をするもの、あるいはマメヅタのような小さな丸い葉を細い茎に茂らせる植物としては、他にフィカス プミラやへデラ(アイビー)、ワイヤープランツなどがありますが、これらの植物は小さいうちはとても可愛らしいのですが、とても旺盛に育ち繁茂しすぎてある時点から手に負えなくなったりコントロールが難しくなる傾向があります(段々可愛いと感じられなくなってくる ^^;)。
その点、マメヅタはこれらの植物よりは生育が緩慢で繁すぎて困るということもなく、肉厚の丸葉の姿を長い期間「可愛いなー」と楽しめます。
元来が着生植物なので、地面に植えなくてもビカクシダや洋ランで行うような板付けで育てたり、ミズゴケなどの基材を用いて樹木の幹にくくりつけて着生植物の世界観を演出することができます。
着生のメリットとしては個体自体が大きくなくとも樹木幹などの「欲しい高さ」に取り付けることで欲しい景色が得られる点にありますね。
小さい植物だけど地面にしゃがみ込まずに眼の高さで楽しめます。
マメヅタの葉には丸い形の栄養葉とヘラ状に細長い形の胞子葉があります。
比率的に多く出る栄養葉は、地面からの水分が得にくい着生の生態に順応して肉厚で水分を溜めやすいつくりになっています。
マメヅタはパッと見、シダ植物とは思えないい草姿をしていますが、胞子葉の裏側を見るとシナモン色の胞子がびっしりついていて、「こう見えてもシダ植物なんだなぁ」と実感できます。
日本にも自生している植物なので、日本の気候環境にも合い、活着してしまえば育てやすいです。耐寒性もあるので寒冷地を除いては屋外で越冬可です。
主に山林に生息しているので直射が避けられる半日影、適度に湿度がある環境で育てましょう。
マメヅタは都市への人口集中が起こる以前は身近な山林でよく見られる植物だったため、山野草の愛好家の間でもありふれた植物としてあまり重用・注目されることはありませんでした。
しかし、高度に都市化が進んでいる21世紀においては、普通に生活しているだけならほとんど目にすることのない、「身近にあるけれどレアに感じられる植物」と化しているともいえるでしょう。
あえて熱帯の着生植物ではなく、日本にも自生する着生シダや着生ランなどを用いて垂直面を緑化するようなガーデニング手法はとても「古くて新しい」面白い領域なのではないかなぁと、乙庭でもたいへん注目しています。
着生植物を上手に活用することで、今まであまり好きじゃなかった既存の大きな庭木の幹とか、庭の景色を邪魔してるなーと思っていた擁壁やブロック塀と和解できるというか、なんだか積極的に好きになっていけそうじゃないですか?
マメヅタ、一歩間違うととても野暮ったい感じになりそうな、植える者の植栽センスが問われるリスキーでギャンブリングな感じ、珍しくない植物で見たことのないような世界観が演出できるような可能性を多いに感じさせる、乙庭好みの面白素材です。
■レマフィルム ミクロフィルム (= マメヅタ)
■ 学名 : Lemmaphyllum microphyllum
■ ウラボシ科 耐寒性多年草
■ 花期 :
■ 草丈 : 2〜4cm(石垣や樹幹に着生して平たく広がる)
■ 耐寒性 : 強い
■ 耐暑性 : 強い
■ 原産地 : 日本 (本州以南)~台湾、中国にかけての東アジア
最後に私 太田敦雄の著作や掲載誌をいくつかご紹介します。
2024年1月16日発売(本記事執筆時点では発売前)のガーデニング雑誌「Garden&Garden vol.88 (Spring 2024)」。
巻頭特集「風景ガーデニング」にて、私 太田敦雄 / ACID NATURE 乙庭 を8ページにわたり掲載いただいています。私の設計案件の中でもこれまで一般誌で解説紹介していない2つの住宅を実例に写真豊富に、自分が思い描く植栽風景を形にしていく思考のコツなどについて解説しています。私のページ以外も人気ガーデナー、ガーデンデザイナーさんの多様な植栽事例をお楽しみいただけます。
私と、おぎはら植物園の荻原範雄さん、フローラ黒田園芸の黒田健太郎さん・和義さんご兄弟との共著作「グリーントータルプランツブック」。前半の1/3を私が執筆担当しており、実例も交えた植栽論と植物の解説をしています。
私の最初の著作本「刺激的・ガーデンプランツブック」は、出版社のご都合で現在絶版となっていますが、この本に書いた内容も含めて、今後の出版物に盛り込んで、なんらかの形で情報としてこれからも手に入るようにはしていきたいと思っています。
noteの「乙庭植物図鑑」では、これまでの著書では解説していない植物も積極的に取り上げていく予定です。
自分だけの特別なお庭造りの参考になれば幸いです😊✨