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【乙庭植物図鑑】20230110 ナンディーナ(= ナンテン) ‘織姫’ (Nandina domestica ‘Orihime’)

これまで、著書や歴代ブログやwebメディアなど、さまざまな媒体に植物の解説を書いてきましたが、結構情報が散逸している状態になってきたので、マイペースではありますが、note.に私の植物や植栽に関する知識をまとめていきたいと思います(ライフワークにできたらいいな😊)。

今日は、お正月飾りとかでおなじみのベタな庭木 ナンテンと同じ仲間とは思えない、装飾的な細葉がとてもお洒落でとても乙庭好みな品種 ナンディーナ(= ナンテン) ‘織姫’ を紹介します。

撮影:2024年1月10日

本種 ‘織姫’ は、細い糸葉がとても装飾的で、春〜夏は濃緑色、晩秋〜冬にかけては
真っ赤に紅葉する葉色もとても美しく、また庭木としてよく知られるナンテンと同じ仲間とは思えないような葉の様子も意外性バッチリで、オーナメンタルなリーフプランツとしても楽しめる、ガーデニング素材としてもたいへん面白いナンテンの葉芸品種です。

ナンテンは、季節感と野の風情のある葉や実が、お正月飾りや生け花、日本料理の彩り材料などにしばしば用いられたり、音が「難転」つまり「難を転ずる」に通ずることから、縁起の良い木とされ、鬼門に植えられる慣習があったりと、日本人にはなじみの深い、かなりベタな庭木ですよね。

ちなみにナンテンは、日本料理の飾りに使われたり漢方薬の分野ではのど飴などの生薬に用いられたりするので食しても安全なイメージを持たれがちですが、全草に毒性があるので安易に口にしないよう注意が必要です。

ナンテンは中国や日本の関東以南の比較的あたたかい地域の山林に自生が見られる
常緑もしくは半常緑性の低木です。
冬季最低気温マイナス5℃程度になる、乙庭のある群馬県前橋市では冬季もほとんど葉を落とさず常緑で楽しめます。

撮影:2022年12月18日


本種 織姫は江戸時代から明治にかけて、古典園芸の分野で作出された「錦糸南天」と呼ばれる糸葉の系統を受け継ぐ矮性で多幹性の品種です。

非常に細い糸葉がとても装飾的で洒脱な雰囲気があり、春〜夏は濃緑色、晩秋〜冬にかけては真っ赤に美しく紅葉します。

庭木として馴染み深いナンテンと同じ仲間とは思えないような葉姿、四季の葉色の変化も楽しめ、日本国内でも流通量が少ないのはもちろんのこと、海外においてはほとんど知られていない美麗かつ強健で育てやすい常緑低木です。

SNSなどを通じてアマチュア園芸家でも世界に向けて容易に発信できる時代、
ぜひ日本から世界に向けて発信したいオーナメンタルなリーフプランツといえるでしょう。

樹高80cm〜1m程度の矮性品種で樹形は株元からたくさんの細い幹をまっすぐに
伸ばした株立ち状になります。

寄せ植えなどにも使いやすく、冬姿も美しくウィンターガーデンにももってこいの素材です。

南天というと、昭和の民家の北側に定番的に植っているような、ちょっとダサ古めかしいイメージもありますが、本種 ‘織姫’ は、そのイメージを払拭・逆転できるおもしろ素材でもあります。

非常に細い糸葉は軽やか・装飾的な印象で、耐陰性もあり、日陰の植栽でも重苦しくなく、ほどよく目立ち植栽映えがとてもよいです。乙庭的にはなにげにパーフェクトに近い庭植えパフォーマンスのある品種と評価しています。

日向・日陰のどちらにも耐え、和洋どちらの雰囲気の植栽にも似合います。
日向でユッカやアガベと同じ風景に混ぜ込んでもカッコいいですし、日陰でギボウシやヒューケラ、シダなどと合わせてもよく似合います。

あえていうなら、和モノと合わせるよりは、洋な雰囲気の植物と合わせる方が、本品種の意外性が際立って面白いでしょう。

ナンテンは土壌の乾燥にはあまり強くないので、土中まで完全に乾燥しないような場所に定植するとよいです。

レアで繊細そうな見た目に反して性質も丈夫。生育は比較的緩慢で樹形も乱れずコマメな剪定の必要もなくローメンテで楽しめます。
園芸家にとってもはメリットばかりの素晴らしい品種ですね。


■ ナンディーナ(= ナンテン) ‘織姫’
■ 学名 : Nandina domestica ‘Orihime’
■ メギ科 耐寒性半常緑低木
■ 花期 : 春
■ 樹高 : 1m程度
■ 耐寒性 : 強い
■ 耐暑性 : 強い
■ 原産地 : 中国、日本(原種の主な生息地)


最後に私 太田敦雄の著作をいくつかご紹介します。
私と、おぎはら植物園の荻原範雄さん、フローラ黒田園芸の黒田健太郎さん・和義さんご兄弟との共著作「グリーントータルプランツブック」。前半の1/3を私が執筆担当しており、実例も交えた植栽論と植物の解説をしています。


私の最初の著作本「刺激的・ガーデンプランツブック」は、出版社のご都合で現在絶版となっていますが、この本に書いた内容も含めて、今後の出版物に盛り込んで、なんらかの形で情報としてこれからも手に入るようにはしていきたいと思っています。


noteの「乙庭植物図鑑」では、これまでの著書では解説していない植物も積極的に取り上げていく予定です。
自分だけの特別なお庭造りの参考になれば幸いです😊✨




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