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【旧乙庭blogサルベージ】20081001 020的 Schocking Beauty 000

まえがき

2008〜2016までexcite blogにて乙庭のブログを書いておりました。
旧ブログサイトを閉鎖する方向で、古い記事をnoteの方に移行して1箇所におまとめすることにしました。

【旧乙庭blogサルベージ】は、2008~2016年のexcite blog期、2015~2022年のword press期のブログ記事の再掲シリーズです。

随分昔の振り返り記事になりますが、古くから乙庭をご存知の方は懐かしんで、最近乙庭を知った方は乙庭の成り立ちから今日までの歩みを回顧録的にお楽しみいただければ幸いです。

特に2008〜2016のexcite blog時代は、ただの趣味の園芸家だった私(の庭)が、たまたま引っ越した賃貸住宅に庭に植物を植え始めたところから、その植栽が雑誌などのメディアに掲載されたり、若手建築家の目に留まって植栽設計の道を歩み出したり、そして、ACID NATURE 乙庭を起業して初の自著の出版に至るまで、と私の人生の転機になることがたくさん起こりました。

それから随分長い月日が経ち、いくつかのブログサイトを経てnoteに辿りついて1年半くらいになるでしょうか(2024年2月時点)。

noteでの毎日更新がほぼ習慣化でき、今後も長く居続けられるネット上の居場所と思えるようになったこと、これまでに書いたことがネット上のいろいろなところに散在している状態になっているのも煩雑だなと思っていたこと、私自身もう滅多に訪れない旧ブログを月額費用を払って維持だけしているのも不経済だなということもあり、重い腰を上げて旧ブログの記事をnoteの方に徐々に移行して、移行完了の暁には旧ブログを閉鎖することにしました。

前置きが長くなってしまいましたが、2008年 excite blog期の最初期の記事を再掲します。

2024年現在の視点で見返してみて、時代の変遷により分かりにくくなっている部分は適宜 ※注釈をつけたり読みやすく編集しております。


【 020的 Schocking Beauty 000】※1

庭主は 草花という 言の葉得たり
                                     Convolvulus cneorum
Pansy 'Black Atlas'
Phormium tenax 'Purprea'
Tulipa 'Queen of Night'

(撮影20020419)

作家が言葉で自分の世界を表現するように、
ガーデナーにとって庭は文章であり、
植物達はその文章に命を与える
言葉のような存在であると思うんですね。

植物という生き物を時間をかけて育てていると
それらがあるとき言葉のように意味を帯びて語りかけてくる。

そう考えると、庭作りとは、 生物と人為が一体化したような
とても意味深い芸術的行為ともいえるのではないでしょうか。

同じ植物が植えてあっても、
庭の景色には庭主の人柄がよく現れるし
文脈のある庭とあまり何も考えていない庭では
なぜだか確実に深みというか訴えかけてくるものが違います。

「植物で綴る読み物」
当時(※2)はそんなことを意識しながら乙庭を作っていました。

ピラカンサの背景の前に黒紫の花と青白い葉達が
織り成す 物憂げな春の庭。

チューリップとパンジーという、ベタ中のベタな組合せですが、
ただ楽しげな春の庭とは 何かが確実に違うように思えませんか?
(再掲本文ここまで)

※1)「020的 Shocking Beauty」(オツオテキ ショッキングビューティ)は、2002〜2004にかけて、ブログやSNSの前進ともいえるコミュニケーション・発信サイト「関心空間」に太田敦雄が投稿していた自庭の写真シリーズです。
1枚の写真と1行あるいは一言のタイトルのみで構成され、植物の組み合わせで庭の景色以外の思想や連想を導くような試みでした。
「関心空間」掲載時には植物名さえも記載していませんでしたが、2008〜のexciteブログ再掲時に植物名と解説文を追記しました。
「020的 Shocking Beauty」は、シリーズで000〜108までありましたが、2016年の「関心空間」サービス終了時にコンテンツのサルベージに失敗し、その多くが消失してしまいました。

※2)太田敦雄が群馬県前橋市の実家で趣味の園芸家として庭いじりを楽しんでいた乙庭 第1期 1999~2004年


【過去記事再掲に寄せての追記 20240303】

今は昔、インターネットが一般にも普及し、個人のホームページで画像掲示板などが賑わっていた2000年代初頭、私が「関心空間」という隠れ家のようなサイトで発表していた写真シリーズ、「020的 Shocking Beauty」。

当時の私は、あまり意味もないキレイな庭を作りたいとか、庭を通じてネットで多くの人と友達になりたいとかいう欲求はなくて、ただただ「自庭の植栽という媒体を通じて、庭の景色以上のなにかしら思想やメッセージを伝えたい」と思っていました。

言葉多く説明するのではなく、庭の一部を切り取った1枚の写真とごく短いタイトルのような文のみ。写っている植物の名前を知りたい人にはとてももどかしく不親切なシリーズではありましたが、2024年現在から振り返ってみても、私の園芸・植栽・人生における思想の原点がほぼ全てこのシリーズに集約されているように思います。

庭主にとって植物は単語のようなものでそのボキャブラリーを連ねることで植栽という文脈を作ることができる。庭を創る者は文字ではなく植物で多くを語れるものだ、という概念は私が園芸を始めた頃から一貫して考えていることで、現在でも変わらず抱いている信念です。

正直、カッコはいいけど「何も伝わってこない植栽」は世の中にはたくさんあるなーと思います。
たとえパッと見の見映えがよくなくて「こういうことが言いたいのですね」と分かる植栽の方が、私は感動的な植栽だと思います。

そして、植物のボキャブラリーを豊かに持っていないと植栽のいい文脈も創れないし、他人の植栽を深く読み解くこともできないとも思います。

植物は庭という自分の家に同居している生き物です。
園芸家たる者、同居人の植物の名前や出自やその植物との思い出などは、ただの知識というよりも「自分らしく語る言葉や修辞法」として覚えておきたいし、意味を持って使いこなせるとよいですよね。


【太田敦雄の著作、掲載誌の紹介】

私 太田敦雄の著作や掲載誌をいくつかご紹介します。
2024年1月16日発売(本記事執筆時点では発売前)のガーデニング雑誌「Garden&Garden vol.88 (Spring 2024)」。
巻頭特集「風景ガーデニング」にて、私 太田敦雄 / ACID NATURE 乙庭 を8ページにわたり掲載いただいています。私の設計案件の中でもこれまで一般誌で解説紹介していない2つの住宅を実例に写真豊富に、自分が思い描く植栽風景を形にしていく思考のコツなどについて解説しています。私のページ以外も人気ガーデナー、ガーデンデザイナーさんの多様な植栽事例をお楽しみいただけます。


私と、おぎはら植物園の荻原範雄さん、フローラ黒田園芸の黒田健太郎さん・和義さんご兄弟との共著作「グリーントータルプランツブック」。前半の1/3を私が執筆担当しており、実例も交えた植栽論と植物の解説をしています。


私の最初の著作本「刺激的・ガーデンプランツブック」は、出版社のご都合で現在絶版となっていますが、この本に書いた内容も含めて、今後の出版物に盛り込んで、なんらかの形で情報としてこれからも手に入るようにはしていきたいと思っています。


noteの「乙庭植物図鑑」では、これまでの著書では解説していない植物も積極的に取り上げていく予定です。
自分だけの特別なお庭造りの参考になれば幸いです😊✨



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