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【コラム的】私とゴリ師匠の美肌挑戦記(1)【短編小説】

<あらすじ>

 幼馴染のクール男子、ケントと久々のデート。
 部活で忙しかった私にとって、久々のオフは最高の日になるはずだった。
 ケントが差し出したプレゼントは、何と、掌サイズの【ゴリラ】のぬいぐるみだった!

「ん、ゴリラ可愛いよな」
「……」

 はにかんでゴリラぬいぐるみを差し出すあたり、悪気はないのだろう。
 だが、その一言に私はノックアウトした。
 ゴリラは可愛くない。
 デート後、布団の中で丸くなって泣いていると、先ほどのゴリラのぬいぐるみが話しかけてきた。

「おい、ウホ。悔しくないのか。肌美人になって見返してやるしかない。今すぐ決心しな!」
「ゴリラがシャベッタァ!」
「ウホ、俺は美肌の精霊ゴリラ。よろしくな!」

 こうして、再びニキビが増えてきた私の肌質改善のため、ゴリラ師匠と私による原因の追究と対策が始まった。
 目指せ、美肌マスター。
 ケントから「あれ、最近……キレイになったね?」を勝ち取れビクトリー!

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<キャラ>


・浦裕宇帆《ウラユウホ》:主人公の元気な女子学生。最近また、ニキビ肌が悩み。幼馴染のケントはモテモテのイケメン。そんな彼からのプレゼントは、ゴリラのぬいぐるみだった。

・前田研斗《マエダケント》:長身でクールな口調の男子学生。ユウホの幼馴染。同じ部活で、気心しれた仲間だと思っていた、幼馴染ユウホの変貌にドキドキ中。ゴリラぬいぐるみ愛好家。

・ゴリ師匠:掌サイズのぬいぐるみゴリラに宿った美肌の精霊。ユウホを一人前の美肌マスターへ導く。ケントがゴリラぬいぐるみ趣味と知るが、ユウホには言わないでおこう。

・(ユウホの)母:笑顔で、娘の美肌道を応援する身内。幼馴染のケントがゴリラのぬいぐるみに夢中なのは昔からだった。娘がゴリラのぬいぐるみと話すのは、愛情の裏返しと気づいている。

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【第1章】美肌の精霊ゴリラ! 

 幼馴染のケントが久々に、遊びに誘ってくれた。
 高校まで少し疎遠だったけど、大学のサークル活動で、バドミントンの男女混合ダブルスに、一緒に出るようになったのもある。
 最近、私はある悩みを抱えていた。頬や顎、額に出来る赤い粒々。
 一時なくなったはずで、大学生になってまた出来た、大人ニキビである。

 このせいで、可愛い服装にあまり馴染みがなくなり、スポーツ系の服装ばかりしていた。
 服を見ても、可愛い小物を見ても、ケントと一緒なのに全くテンションがあがらなかった。
 休憩に入ったお洒落な店で、フルーツパンケーキの山を見て、ようやく私は目を輝かせる。

「ふわぁ、映えるねぇー♪」
「食べないの? カメラ撮るのはわかるけどさ」
「失敬な。ケントくん、こんなの全部食べるに決まっているでしょうがぁ!」
「はは、そうだな」

 流石に全部は行けなかった。ケントが最後まで責任を取って食べてくれた。
 店を後に。何だか胃もたれして、公園のベンチに座っていた。
 すると、ケントははにかんで、ラッピングされたソレを渡してくれた。
 積極的なケントは珍しいなぁ、と思いつつ、ソレを手にした私は口を開く。

「開けていい?」
「良いよ」

 私の手はするりとリボンを解いた。
 中から出て来たのは、【ゴリラ】のぬいぐるみだった。
 うん、マジ【ゴリラ】のぬいぐるみ。
 え、嘘でしょ。【ゴリラ】だし、【ゴリラ】はないよね。
 私が衝撃で青い顔をしていると、ケントは目を輝かせて言った。

「ん、ゴリラ可愛いよな」
「……」

 この後、どうやって【ゴリラ】を連れて帰ったか、私は記憶がございません。
 ただ、気づけばケントの姿はなく、私の家の私の部屋の私のベッドの布団の中で、シクシク泣いていたようだ。

 だって、【ゴリラ】は可愛くない。

 すると、学習机に投げ捨てられていた【ゴリラ】のぬいぐるみが喋った。

「おい、ウホ!」
「ウホじゃねー! 私の名前は、ユウホだぁ!」

 思わず、布団を押し上げて、飛び起きた。
 すると、あの掌サイズのぬいぐるみ【ゴリラ】が、ダンディな声で私に声をかける。

「悔しくないのか。肌美人になって見返してやるしかない。今すぐ決心しな!」
「ゴリラが人語をシャベッタァッ!」
「その程度の戯言か。お前の悩みはその程度か。お肌美人になりたくないのか」
「おい、ゴリラ。お、をつければ何とかなる肌じゃねーんだぞ。この大人ニキビ様はしつこいんだよぉ!」

 私はアヒル口で、【ゴリラ】を涙目のまま睨んだ。
 【ゴリラ】の目は鋭いがその中に優しさがあった。
 私と【ゴリラ】、お互いに、お互いの目を気に入った。【ゴリラ】がようやく名乗る。

「なるほど……。ウホ、俺は美肌の精霊ゴリラ。よろしくな!」
「だーかーらー! ウホじゃないのー。ユウホなのー!」

 ん、この【ゴリラ】は今、美肌の精霊と言ったよね。
 藁《わら》にでもすがる気持ちで、【ゴリラ】にすがれってか。
 【ゴリラ】は歯を見せて笑った。

「ゴリラ頼みでもいいじゃないか、最近、キレイになったね?って、あの仏頂面の男から言われたくないか?」
「わかるか……私の気持ちがゴリラにはわかるのか!!」
「わかるとも! だから、まずはお前を一人前の美肌マスターにしてやろう!」
「有り難き幸せ!」

 紅潮した頬の私は、美肌の精霊【ゴリラ】に敬礼を返した。
 そして、私とゴリラの美肌挑戦記が始まる。
 ニキビの原因を追究し、対策して、目指せ、美肌マスター。
 ケントから「あれ、最近……キレイになったね?」を勝ち取れビクトリー!

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【第2章/前編】ゴリラの指導で、私の肌質改善中!(上)

 ゴリ精霊に、コーヒーでも飲むか?と聞くと、ぬいぐるみが飲めるかよ、と丁重に断られた。
 左様か。
 【ゴリラ】は落書き帳に、図を書いて、肌の説明を渋い声で始めた。
 まるで美肌の大学教授である。

「これから、5ステップでスキンケアを学んでもらう。自分の生活で良いところはそのままに、ダメなところは改善していくと良いだろう」
「はーい!」

 ベッドサイドに座る、私はニコリと、【ゴリラ】に微笑んだ。まだこのときは余裕があった。
 ゴリ講義は、1~5ステップ。以下、こんな感じ。

1.肌の構造
2.美しい肌とは
3.ニキビ
4.スキンケアの仕方
5.その他要因 (食事、運動、入浴、睡眠)

 私は【ゴリラ】が人間の肌の構造やそのケアを良く知っているなと思ったが、下世話なので喉で止めておいた。
【ゴリラ】は基礎から話を始める。

>肌の仕組みは、表皮・真皮・皮下組織と皮溝からなる。

皮膚構造

 外側から。
 皮溝《ひこう》。形や深さがキレイに整っているのが素敵肌になる。いわゆる、肌のキメ。
 表皮《ひょうひ》。外部刺激のバリア機能をもつ。内部を保護する役目。一番外側は『角質』。
 真皮《しんぴ》。肌を守る『皮脂《ひし》』を作る。
 皮下組織《ひかそしき》。皮膚組織に栄養を届ける。もしくは老廃物を運び出す。

 この4つのバランスで肌は構成される。
 細胞の生まれ変わり、いわゆる『皮膚のターンオーバー』は平均28日間かかる。

 私は唸った。ガチの中のガチで攻めて来た。でも、良く分からない部分が結構ある。
 【ゴリラ】は質問を認めた。ただし、挙手制だ。

「はい、質問! 表皮って一番外側の皮膚でいいよね。そこにかかる刺激って、UVとかで良いの?」
「あぁ、そうだ。紫外線《UV》。肌の乾燥。過度の摩擦《ゴシゴシこすり過ぎ》。コレなんかがメジャーな外部刺激になるだろう」
「なんとなーく分かるかな。肌がボロボロになりそう……。でも、意外だったな。皮脂が皮膚を守っているの?」
「あぁ、そうだ。過剰な皮脂のイメージが強いからな。しかし、適度な皮脂は必要な存在だ。外部刺激から肌を守るのだよ」
「え、守る? そうそれがあんまりイメージわかないんだよねぇ……」
「こういうことさ」

>皮脂の役目:水分の蒸発を防ぎ、皮膚に潤いと滑らかさをプラスしてくれる。
 気温が高いと、皮脂が多くなり。気温が低いと、皮脂が少なくなる。

皮膚・水分・油分

 私は頷いた。気温が高いと皮膚から出るもの。
 まぁ、汗だよね。
 水分を過度に蒸発させると、ガッサガサ肌になっちゃう。
 水分だけだと、蒸発してしまう。油で蒸発を防ぐって訳ね。

「そういうことだ。さて、次のステップへ進もうか」
「えーと、美しい肌?」
「さっくり、説明するぞ」

>美しい肌:色ムラなく、均一で、みずみずしい。
 つまり、水分量や皮脂量が、過不足なくバランスが良い状態。
 皮膚の仕事である、最前線でバリアを張り、外部刺激をシャットダウンするのが丁度良い。
 ここが目指すべき場所。

 【ゴリラ】はヒトの肌の理想しか語らない。私が良い例だろう。すぐ反論する。

「そうならないんだけど? 赤肌でニキビ様が支配しているわ」
「肌トラブルになっている状態が一番良くないとわかるからな。それだけが、美しくならない原因ではないが、まず『ニキビ』という状態を知った方が良いな」
「それな」

 私は相槌を打った。【ゴリラ】も真っ直ぐな目で頷く。

>ニキビ:尋常性《じんじょうせい》ざ瘡《そう》という皮膚が病気の状態。

ニキビ

 いわゆる2パターンある。
・思春期ニキビ:成長によりホルモンバランスが乱れるが、大人になると消える。
・大人ニキビ:毛穴に皮脂が過剰に詰まり、皮膚の炎症を起こしている状態。

 さらに、色でもニキビは重症度がわかる。
・白ニキビ:初期状態
・黒ニキビ:白ニキビが酸化した状態。
・赤ニキビ:アクネ菌の侵入を許してしまった状態。
・黄ニキビ:膿が表面に見える状態。潰すと痕が残る!

 重症化した赤みは、ビタミンCを頑張って補給しても、数年かかることもある。個人差あるが、重症化させないことが大事である。

 突然ですが、【ゴリラ】クイズ! ウホウホ!

「え、何だよ!」
「ニキビの原因は様々あるが、どうすればニキビにならないでしょう?」
「対策の話か? え、教えてくれないの?」
「教えるよりも、自分で考えた方が、実行しやすくないかな?」

 えーと。
・皮脂が動けるようにする。
・アクネ菌が増えないようにする。

【ゴリラ】は言った。ファイナルゴリラアンサー? 
 いや、賞金出ないだろう。でも、ファイナルゴリラアンサー。

「25点解答だな」
「だろうなぁ。聞いた話のそのままだもん」

>肌の予防
・清潔に保つ
・角質をあまり厚くしない
・アクネ菌を寄せ付けない

>角質→ピーリング剤<酸で角質を除く>。ただし、肌の刺激が強いので、最初は「石けん」など、肌に優しいものを使うとよい。
>清潔・アクネ菌を除く→洗顔を考える。

 私は【ゴリラ】の解答も100%でないと思った。眉をひそめる。

「洗顔を考える? 雑すぎない」

<(2)につづく>


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