夜の七時、異世界着。
「はぁ……実在するんやな、トーキョーって」
画面越しでしか知らなかった世界、東京。それはもう煌びやかで、山々に囲まれた我が家とはもう別の世界線にあるのだろうとさえ思っていた。夜を無視してギラギラと騒ぐビル、ビル、ビル。常に視界にちらつくヒト、ヒト、ヒト。うわぁホンモノや。洗練って感じする。
「うち、ここでやってけんのかなぁ」
異世界転生モノの主人公って、こんな気分なんやろか。
まだがらんとしている部屋に荷物を置き、近所を散策。スーパー近くて良かっ……いや野菜高すぎ。自炊、高くつきそやなぁ。今日はもう外食でいっか。
「いらっしゃいませ!」
親近感を覚えた暖簾をひょいとくぐった先。
カウンターの向こうに見えたくしゃり笑顔。
「外寒かったでしょう、ゆっくりしていってください」
いかん、今なんか生まれた。
(あーちょろい、ちょろいなうち。異世界でもがんばれる気ぃする)
新生活に彩りを添えてくれそうなときめきが萌芽した。
ここまで読んでくださって、本当にありがとうございます。何かあなた様の心に残せるものであったなら、わたしは幸せです。