夜の音

パートナーが静かに寝息をたてていた。
その隣に潜り込んだ私は、彼にぴたりとくっついて、その胸が規則的に上下に動くのを見ていた。

ふと、思っていたことが口を衝いて出た。

私だけのあなたでいて。
ずっとどこにもいかないで。
私をひとりにしないで。

それは掠れた小さな声であったが、彼は目を覚まして私の頭を撫でた。
そしてこう言った。

「また、卑屈になってる。」

私はどうやら卑屈になりがちな人間のようだ。
抱きしめられるだけでは足りない。
私のことだけを愛しているのだと言ってくれなければ安心できない。
そして、すぐに私なんて必要ないんでしょう、などと言ってしまう。

彼は自ら言葉で愛情表現をしてはくれない。
しかし、その行動や態度は私を心からいとおしく思ってくれているのだと理解はできる。
つまり、私が求め過ぎているのだ。

昨夜、その件で小さな言い争いをした。
その時点で私は睡眠導入剤を飲んでいたので、自分でも支離滅裂なことを言っている自覚があった。そしてそのまま意識がぼんやりとして、ああもう眠ってしまいそうだ、と思った。
その時彼が、私の背中をぽんぽんと優しく撫でた。
親が幼い子供を寝かしつけるように。

私は自分の背中を撫でてくれる手のあたたかさに安心し、彼の腕にしがみつくようにして眠りに落ちた。

深い夜の音と、彼の呼吸の音が聞こえた。

こうやって、私は自分の魂を手繰り寄せながら生きているのかもしれない。
眠りにつく寸前、そんなことを考えた。


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