食べられないこと

キッチンから料理をする音が聞こえる。
私は極端な偏食なため、食べられるものが非常に少ない。
同居人は私が食べるか否かを確認せずに毎日食事を作る。
大抵のものは私の口には入らない。

たくさんの食材が混ざった料理が苦手だ。
炭水化物が口内の唾液により分解されていく感覚が苦手だ。
そもそも咀嚼が苦手だ。

私は、食べることに対する苦手意識が強い。

キッチンで何かを作る音が聞こえてくると、とても苦しい気持ちになる。
一口でいいから食べなさい、と言われることが目に見えている。
私はほんの少しだけ食べ、しばらくしてこっそりとお手洗いでそれを吐く。

このまま、食べられずに倒れても、そのまま命が尽きても構わない。
私は人の好意を無碍にすることですら厭わない、悍ましく薄情な生き物なのだ。

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