僕の地獄に絶えない音楽はHR/HM!!
『TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ』を見たんですけど、なんで地獄で獄卒が唄う歌ってHR/HM(ハードロック・ヘヴィメタル)なんだろうか。
別に『TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ』に限ったことではなく、鬼や悪魔が歌う歌って割とハードロック。ヘヴィなメタル。
悪魔なキャラクターってたいていヘヴィメタな感じ。まさか歌までは歌わないでも、ファッションはもう基本的にヘヴィメタル。
デスノートのリュークとか
日本でパッと思いつくハードロックバンドも聖飢魔Ⅱだし。
そしてデトロイト・メタル・シティのクラウザー様!
デトロイト・メタル・シティ。あの、メタルと渋谷系を盛大に揶揄ったマンガでも、メタル=悪魔崇拝者みたいにデフォルメされてる。(っていうか元ネタはKISSなのかなこれ)
ファック早口勝負だー!!
「オレは音楽に感謝している。ミュージシャンにならなければ猟奇的殺人者になっていたから――」
HR/HMの起源とは、1970年代初頭、英国のバンド、ブラック・サバスだとする説が強い(別説はレッド・ツェッペリン)
ブラック・サバスですよ。黒ミサ。もうね、この時点で悪魔だよね。
あの、ステージで蝙蝠食って病院に搬送された伝説を持つオジー・オズボーンのバンドだ。
バンド名の由来はマリオ・バーヴァのホラー映画『BLACK SABBATH』で、映画公開時、長蛇の列が出来ていたことから、「人間は恐怖を求める」という着想を得た、とウィキペディアに書いてありました。
なるほど、ホラー映画由来。
この時代、ロックは技術をどんどん突き詰め激しくなり、ハードロックと呼ばれていた。さらなる刺激を求めて、彼らは「人を怖がらせる音楽を作る」というコンセプトで楽曲を作った。
ブラック・サバスやレッド・ツェッペリンなど新しいバンドが作る新しい音楽。それは70年代後半こそ飽きられることもあったが(その代わりとしてパンクが生まれたし、激しさ自体は引き継いでいる)
パンクが収束すると一気に息を吹き返し、サウンズ誌の記者ジェフ・バートンにより『ヘヴィメタル』と名付けられた。
ハードロックはわかるよ。激しいロック、そのまんまだよね。
でも、メタルってなんぞや? ロックだったのがどうしてメタル?
その語源はここにある。1950年代、ビート世代の小説家、ウィリアム・S・バロウズ。彼が書いた『ソフト・マシーン』の中にヘヴィ・メタルという単語が登場するのだ。
後に『ノヴァ急報』という小説でそれは麻薬のメタファーだといわれ、強く作用し長く続くものだという。ジェフ・バートンはこの小説たちから、ヘヴィメタルという単語を抜き取ったのだ。
麻薬のように、強い音楽ってことですね。
このビート世代の小説家というのが、ユースカルチャーを調べる中でかなり重要なところに居ましてね。
同じくビート世代のジャック・ケルアックの小説『路上』はヒッピーのバイブルとなっている。
この『路上』というのは、ケルアックとバロウズ、あともう一人ギンズバークという詩人の3人でアメリカ中を放浪したことが下敷きになっていて、彼らが旅をしなかったら現代のファッションやら音楽の形が変わっていたかもしれない、という重要さ。
しかしまぁ、まさかヒッピーとメタルが同じビート世代から出てきたものだったとは! 一方は「ラブアンドピース」一方は「マザーファッキャ~~!!」が合言葉だというのに面白いもんですね。
しかし、まだヒッピーとの縁はある。メタルの音楽的源流に、ビートルズの「ヘルタースケルター」があるが、この曲にこじつけて大事件を起こした者がいる。
ヒッピーを食い物にし、宗教的な思考で縛った殺人鬼、チャールズ・マンソンである。
こいつは「ヘルタースケルター」は世界の破滅を予言してる、などと言い、なんやかんやこじつけて洗脳したヒッピーたちに金持ちを殺させまくったのだ。
その所業、まさに悪魔。そして、そのまま鬼である。
そして……ヘルタースケルターは事件によって影を背負い、同じような音楽路線を持つメタルも、また殺人鬼の影を背負った。
ブラック・サバスによりホラー映画と殺人鬼は結びつき、そして今なお現代においても、ヘヴィ・メタルの中に延々と鎮座している。
先日『シリアルキラー展』を見に行ったけれど、そこにはわたしのようなサブカルクソ女のほかは、メタラーばかりがいた。
そして、小さな画廊をぎゅうぎゅう詰めにしていたのだ。
そう、メタラーが来るのも納得だ、シリアルキラーこそ確かにメタルの語源のひとつであったのだ。
だからメタルは、悪魔が歌う。
でもさ……『TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ』のオチでもあるけどさ……きれいで心穏やかなだけの世界って、つまんないよね。
退屈だよ。
血を吐き泥をすする地獄のような場所、悪魔のいるところ、殺人鬼にお似合いの世界、そんなところは、御免だけどさ。
見るんだったらただ穏やかな世界より、そんな地獄絵図のほうが見たくない? そう、「人は恐怖を求める」。
そしてカッコイイとは、そんな地獄絵図の中でも楽しそうに笑っている、悪魔のことをいうのかもしれない。
だって、今わたしたちが住んでいるココは、お世辞にも天国とは言えない。どっちかっていうと、地獄に近いような気がする。
ロックを突き詰めていくうちに、ロックスターは悪魔になった。
殺人や負の感情さえカルチャーにして、音楽にして。
なんか、逆にすごい前向きじゃない? っておもう。
どんなものでも創作物に、成果にする。それはきっと、悪魔にはできないことだろうな。
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