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無責任に愛した

携帯をひらけば、フラッと連絡こないかなとか考えたりする。街中で劇的な再開を果たせないかな、なんて金色の髪の毛を目で追ってしまう。僕が運命の人だと思っていたのはどうやら錯覚で、彼女はそう思えなかったらしい。

時に僕は、彼女の影を拭ってあげたいと傲慢にそう願っていた。孤独だと嘆く彼女に手を差し伸べ、グッと引っ張ってあげたかった。がむしゃらに優しさをぶつけ、彼女を肯定した。それは基盤に好意があったのはもちろん、素直に彼女の生き様を尊敬していた節もある。大学生の僕には経済的に彼女を支えてあげることも出来ないし、成熟していない心で考えてることなんて彼女には全てお見通しだった。彼女は「ありがとう」とそう言っていたが、無責任な愛は彼女を傷つけてしまったことだろう。暴走を始めた僕のエゴは酷く醜いものだった。

彼女は僕に優しさを求めていて、それは確かだ。きっと僕がその優しさとやらを履き違えてしまった。救いたいとか、なんでもしてあげたいとか、そういうものじゃなかった。きっと、彼女は僕に救われることを望んでいなかった。救われる時、人は勝手に救われるから。誰かに救ってもらうとかそういうのじゃない。多分、その過程の中にただ、僕が居て欲しかっただけなんだ。歩き疲れた時の公園のベンチみたいに、ディズニーで並んでる時に寄りかかる壁みたいに、ただそこにあって、少しだけ痛みや苦しみを紛らわせることの出来る、そういう存在であればそれだけで良かったんだろう。

むやみやたらに発砲された優しさに応えることもできず、それを受け入れる余裕もないことに僕は気づけていなかった。優しさの時限爆弾をたくさん抱えれば、壊れてしまうなんてすぐに分かったはずなのに。自分のしてる優しさに溺れて、気持ち良くなっていた僕をどうか救ってあげてほしい。

貴方の存在を僕が生きる理由にしてごめん。夢の中みたいなボヤけた画質で貴方を愛してごめん。いつまでも貴方といる世界を望んでしまってごめん。正直、知らない貴方が増えていくことが嫌で仕方ない。もし、偶然に出会うことがあっても貴方はもう見ず知らずの人になってしまっていることだろう。僕が想っている時間にしか、生活に貴方が居ないなんて、酷だね。未だに見ず知らずの貴方に惹かれているよ。

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