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夜のプロトコルのあった時代

意外と知られていない歴史のことを「意外史」と言ったりするが、平山亜佐子にも意外史がある。
そのうちのひとつが「夜のプロトコル」である。
これは「著者も本屋で本を売るだけではなくて、読者と直接交流したり発信する場が必要だ」という、今で言う「ゲンロン」のような思想を持ったグループで、メンバーは速水健朗津田大介いしたにまさき大山くまお成松哲、平山亜佐子の6人。
活動時期は2008~2011年と短いが、そこそこ精力的にイベントを行っていた。
当時のラインナップを見てみると……


2008/12/12 プレイベント

「郊外、東京、バイオレンス」
@イベントスペースCo-Net
深町秋生 x 速水健朗
気鋭のバイオレンス作家・深町秋生。彼がこれまでに発表した三冊の小説はどれも郊外が舞台になっている。深町が荒廃した日本の未来像とする国道16号線的ロードサイドをどのように分析しているのか。また、最新作『東京デッドクルージング』は東京(郊外)が舞台だが、取材で見た東京とはどのようなものだったのか。 さらに2016年東京オリンピック開催間近の近未来を舞台にした理由とは(『AKIRA』や『パトレイバー』は意識しているのかとか)(速水健朗)。

2009/2/10 第1回
「コンテンツ・メディア業界の1998年問題」
@高円寺SALON by マーブルトロン
津田大介×いしたにまさき×速水健朗
「コンテンツ・メディア業界の1998年転機説」をテーマに、この時代に起きたあらゆることを分析し、1998年転機説を存分語り尽くします。

2009/3/30 第2回
何が彼女をそうさせたか ~明治大正昭和 不良少女と少女ギャング団の時代~」
@千駄ケ谷Loop-Line
平山亜佐子×神田ぱん×毛利眞人
およそ100年前の明治の時代から、堕落書生を成敗したり、男装して女友達と貸座敷にしけこんだりする過激な少女たちがいたことは、意外に知られていません。そうした少女たちやその集団は、明治時代には「莫連女(ばくれんおんな)」や「悪少女団」と呼ばれ、大正時代には「不良少女」「不良少女団」、昭和初期には「モガ」「少女ギャング団」と呼称が変遷し、時代とともにその中身も変わってきました。今回は新聞記事を参照する第一部と、当時の音源を聞きながら解説する第二部の二部構成に仕立て、立体的に展開します。

2009/6/12 第3回
「現代漫才論序説 ~M-1から見る漫才の現在形」
@高円寺SALON by マーブルトロン
サンキュータツオ×大山くまお
一大コンテンツとしてメディアを席巻し続ける「お笑い」の世界。その嚆矢でありビッグバンともいえる「M-1グランプリ」を通して漫才の現代形を考察します。インタビューや感想文ばかりで、映画、音楽、演劇など他ジャンルに比べても脆弱な「お笑い」についての本格評論の試みです(大山くまお)。

2009/7/16 第4回

「「We love twitter & tumblr.」~あの娘、ぼくがリブログ決めたらどんな顔するだろう~」
@デジタルハリウッド大学メインキャンパス
津田大介×いしたにまさき×速水健朗×橋本大也(オーバルリンク)
ゲスト:id:otsune、id:ku、id:gamella、えふしん、及び交渉中のゲスト数名。また、シークレットの可能性あり

夜のプロトコルとオーバルリンクの共催でウェブサービス「tumblr」「twitter」をテーマにイベントを行います。
前半の「夜トコ」パートでは、これらを極めている達人たちにその魅力を語ってもらい、応用法についてもプレゼンしてもらいます。後半の「オーバルリンク」パートでは、これらのツールの可能性や未来についての語るパネルディスカッションを行います。

2009/11/15 番外編
「津田大介『Twitter社会論』から考える、つぶやき型社会の捕まえ方」
@東京カルチャーカルチャー
津田大介×小林弘人×仲俣暁生×速水健朗
著者の津田大介による「ツイッターは単なる情報発信ツールではなく、電子メールや携帯電話のように情報が行き来するための『社会的インフラ』として捉えられつつある」という認識をもとに、“コミュニケーションの変化が、メディアやコンテンツの在り方に影響を与える現状”をどう見るか、また今後どう進化していくかについて、つぶやき合います。

2009/12/28
「夜のプロトコル忘年会 09年オワタ\(^o^)/SP」
夜のプロトコルメンバー、津田大介、いしたにまさき、平山亜佐子、成松哲、大山くまお、速水健朗が、それぞれのテーマで今年の総括を行います。今年は多くの重要人物が亡くなりました。『My way』でも聞きながら故人を偲ぼうという方もぜひご参加ください。なお、イベントは1時間程度で残りの3時間は懇親会、忘年会、交流会を兼ねたパーティを予定しております。
【2009年のそれぞれの総括】
成松哲の今年、オレをシビレさせた5人
平山亜佐子気になる女のことばベスト5
いしたにまさきのネットカルチャー・ベスト5
大山くまおのローコストカルチャー・ベスト5
デジタル技術と社会の対立ベスト5(津田大介)

2010/1/8 第5回
平山亜佐子『明治大正昭和 不良少女伝』刊行記念
「“ジャンダークのお君”からニコール・リッチーまで~不良少女、セレブとビッチの100年史~」
@ジュンク堂新宿店 8F喫茶コーナー
平山亜佐子×速水健朗
毒婦、悪女、セックスシンボル、アイドル、セレブ、不良少女、ギャル、ビッチ……さまざまな呼び名はあれど、夜嵐お絹、高橋お伝といった毒婦をはじめとする世間を騒がす女たちが登場し始めたのはおもに幕末から大正にかけて。
彼女たちの登場は、近代メディアの勃興と深い関係がある。
そしてメディアが大量生産、大量消費に向かうとともにその存在はより商品性の高いフィクショナルな存在となる。
虚実ないまぜの“お騒がせ”な女たちの100年を、メディア史、不良少女史、女性犯罪史、ガールズイコン変遷史としてたっぷり語り尽くします。

2010/1/31 第6回
伊藤聡『生きる技術は名作に学べ』刊行記念イベント
「プロフェッショナル・エッセイスト(!?)の作り方」
@阿佐ヶ谷ロフトA
岸本佐知子×伊藤聡(空中キャンプ)
ブログ『空中キャンプ』の書き手、伊藤聡の初書籍(『生きる技術は名作に学べ』)を記念したイベントです。
ゲストには『ねにもつタイプ (ちくま文庫)』が文庫化されたばかりの翻訳家・エッセイストの岸本佐知子さんを迎え、伊藤氏が実際に本を書く経験でぶちあたった疑問などに答えていただきます。また、岸本さんが子供の頃によく読んだ本から、強く影響を受けた小説、エッセイなど、さらには、どうやって今の仕事に至ったのか、翻訳家になるための勉強法、どうしたらエッセイストになれるのか、エッセイストとはどんな仕事なのか、そして、人に読まれるための文章の書き方について、ファンの視点、物書きとしての後輩の視点から根掘り葉掘り、じっくり聞き出す予定です。

2010/4/24 第7回
速水健朗 円堂都司昭 栗原裕一郎 大山くまお 成松哲『バンド臨終図巻』(河出書房新社)刊行記念イベント
「解散のエステティクス、崩壊のロンド」
@阿佐ヶ谷ロフトA
栗原裕一郎×円堂都司昭×速水健朗×大山くまお×成松哲 ゲスト:磯部涼

前半パートは、バンドの解散について、貴重な映像や音楽を流しながら解散理由、顛末について5人であれこれ紹介します。
後半パートは、音楽ライターの磯部涼氏をゲストに迎え、栗原裕一郎氏とともに音楽ジャーナリズム・批評について語ってもらいます。
『バンド臨終図巻』は、音楽を語る言説の現状への問題提起という部分をちょっぴり抱えています。僕らは解散理由を調べる過程で、日本の音楽雑誌もグーグルも意外と使えないという事実に気が付きました。解散直後のメンバーインタビューといいながら、まったく当たり障りのない内容に終始するのが音楽専門誌の常。ファン向けではないスポーツ新聞や週刊誌の報道の方が先を行っているケースも多いくらい。こうした日本の音楽専門誌の現状、ロキ ノンの功罪、そして、台頭するネット時代の音楽メディアの可能性(Dommuneやナタリーなど)について語ります。

2010/9/4 第8回
真実一郎『サラリーマン漫画の戦後史』刊行記念イベント
「会社員中心的世界と柳沢きみおの憂鬱」
@阿佐ヶ谷ロフトA
真実一郎×速水健朗×柳瀬博一
「株式会社日本」とまで呼ばれる日本では、小説、ドラマや映画、さまざまな物語の舞台として会社やサラリーマンが描かれてきました。『サラリーマン漫画の戦後史』は、こうした数多のサラリーマンマンガを読み尽くし、日本社会の変化を読み解いていく極めて興味深い一冊です。今回は、出たばかりの本についてはもちろん、マンガ以外のサラリーマンコンテンツ、希代の漫画家柳沢きみおについて、大いに触れていきたいと思います。本書の中でも柳沢きみおは重要な作家として触れられますが、割愛された研究成果を大いに語ってもらいます。ラブコメマンガというジャンルの創始者のひとりでありながら、その後ラブコメを封じ、暗澹とした作風に転じていったのはなぜか。大御所でありがなら媒体や仕事の中身をまったく選ばない奇矯なワークスタイルの理由とは。謎の多い漫画家、柳沢きみおの作家像に迫ります。

2011/3/15 特別編
「黒人音楽として見るジャニーズ、及びK-POP ~極東★ふぁんくねす、情熱☆熱風せれなーで~」
@阿佐ヶ谷ロフトA
速水健朗×大谷能生×西森路代×矢野利裕
『チャールストンにはまだ早い』(田原俊彦)『ハイティーン・ブギ』『スニーカー・ぶる~す』(近藤真彦)……etc、これら楽曲のタイトルに使われている“チャールストン”も“ブギ”“ブルース”も初期ジャズ、黒人音楽の一形態。ジャニーズと黒人音楽、一見遠い存在に見える両者だけど、実は近いのです。
スライ・ストーンやジャクソン5をレパートリーにしていたフォーリーブス、郷ひろみの楽曲に見るラテンの影響、シブガキ隊に見るヒップホップの影響、少年隊やSMAPに見るディスコやファンクの影響などなど。そして最近では、嵐の櫻井君の“さくラップ”に至るまで、ジャニーズの歴史には黒人音楽の陰が色濃く刻印されています。彼らの歴史はショービジネスとブラックミュージック史に寄り添ったものと見ることができるのです。
さらに昨今、ジャニーズのライバルとして急浮上中のK-POP勢もまた、カニエ・ウェストやJAY-Z直系の黒人音楽のアジア的解釈という戦略を用いて日本の音楽市場を席巻しています。

振り返ってみると、わたしは第6回くらいから顔を出していない。
それもこれも第5回の速水さんとのトークで大失敗をしてしまったから(満場のお客さんの前でほとんど喋らなかった)。
「たっぷり語り尽くします」と言いながらほとんど喋らないとは、これいかに。
今では笑い話となっている。
いずれにしても紅一点というのはなかなか立ち位置が難しい。
まあこれも、青春の一ページということですかね。


【本日のスコーピオンズ】
47曲目「Blue Dream(Unfinished Instrumental)」
5th アルバム『〜暴虐の蠍団〜Taken by Force』(1977)より。
Unfinished Instrumentalとは……? と思いつつ聴いてみる。
うーん、なんかデヴィッド・リンチのドラマのサントラにありそうな
いなたいギターが果てしなく続く感じで、
どういう時にどういう気持ちで聴くのかちょっとわからなかったです。
ライブで衣装替えする間とか?(たぶん違う)

感想は以上です。

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