2021年に変わってほしいこと、変わってほしくないこと
(いつもとてもお世話になっているスペイン語スクール、通訳・翻訳会社のイスパニカ代表の本橋祈さんからの寄稿です。同じスペイン語業界で共に歩んでいく仲間として2020年の振り返りをまとめてくださいました。今年もどうぞよろしくお願いします!R.Y.)
特別寄稿 本橋祈(イスパニカ)
2020年はたいへんな年だった。あまのじゃくな私は、「一寸先は闇」の言葉があるくらいなのだから「予想もつかなかった」という言い方をしたくないのだけれど、それでもやはり、こんな1年になることは、今年のはじめには全く想像できなかった。
2020年はたいへんな年だった。たいへんな思いをした方が多かったと思う。しかし、ごくごく個人的に、私自身の1年を言葉で表すなら、2020年はとてもありがたい年だった。
私は、代表を務めている今の会社にかかわるようになった5年前、溜池山王教室で行われる通学スクールの教務担当として仕事を始めた。その後、翻訳の仕事の仕方を覚えたり、毎日の情報配信の校正をするようになったり、会社全般のことを把握して、ひととおりの業務ができるようになったつもりだけれど、ついつい力を入れてしまうのは、そして無意識に時間を割いてしまうのは、直接に生徒さんたちとやりとりする溜池山王教室の通学スクールの業務だった。
事務所と別に教室を月ぎめで借りての通学スクールは、正直、とても運営が難しかった。先代の社長である井戸が3つも借りていた教室は、私の力不足で、ひとつ手放し、もう一つも手放し、とうとう3つ全てを解約して、その都度、時間で借りるのみという状態になっていた。
それでも、経費削減をしながら、体験レッスンや新しい講座などを試みるうちに、なんとか黒字が出せるようになっていた。5年前、どうしたら生徒さんが来てくれるのか途方に暮れていた会話クラスは、今年のはじめにはすべてが満席になっていた。
その矢先の、新型コロナウイルス感染症の蔓延。私は、早々に通学スクールを休講にした。緊急事態宣言が発令されるより前の3月のことで、感染状況の実態や政府からの要請ということよりも、不安をもった生徒さんに「来てください」と言えない、というのが正直なところだった。
そのころは、教室に来ることに不安を覚える生徒さんがいる一方で、対面クラスを再開してほしいと願う生徒さんがいることも事実だった。けれど、私がスクール事業を全面的にオンラインに切り替えると判断したのは、今考えると、わりと素早かったと思う。
感染症が終息するともさらに爆発的にはびこるとも予想がつかない春先、私はなんとかゴールデンウィークにオンラインレッスンを開講できるよう、通訳者の先生方を中心に声をかけた。ZOOMの使い方にも慣れない、オンラインで生徒さんが来てくれるかもわからない、受講料や謝礼の相場もわからない、そんな中で先生方のご厚意、そして生徒さんたちのモニターレッスンに支えられて、なんとか5月にZOOMによるレッスンを開講することができた。燃え尽きた私は、6月になって遅い五月病にかかってしまった。
先生方に「すみません、しばらく五月病みたいになってました」と謝りつつ、夏からは本格的にオンラインレッスンの企画、受講生募集、開講に取り組んだ。少ない謝礼でとことん丁寧な授業を作り出してくださった先生方にはどんなに感謝しても足りないし、不慣れで不手際もたくさんあったクラスを、数多く受講してくださった受講生の皆さんにも、心からお礼を伝えたい。
何よりも私がうれしく、そしてありがたかったのは、こんなたいへんな状況の中でも、「スペイン語を学びたい」と考える人たちがたくさんいるということを実感できたこと。そう考えて、学習に取り組む世界中の人たちと、オンラインでつながることができたこと。
2021年は、また当然ながら2020年とはまったく違う年になるだろうと思う。しかし私は、「世界が一変した」と言われる2020年に、人々には「学びたい」という意欲があるのだということを、普遍的なことがらとして知ることができた。これは、2021年も変わらないはずだ。その思いを抱く人々とともに、新しい年をまた一歩一歩、あゆんでいきたいと思う。
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