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【日本トライアスロン選手権女子レースレポート】

日本最速を決めるレース日本選手権。
例年開催されていたお台場海浜公園から場所を移し、宮崎県宮崎市シーガイアで開催されました。実施距離は、昨年、初となるスプリントディスタンスでしたが今年は距離を戻して、オリンピックディスタンスでの実施。

日本最速を決めるレースとはいえ今年は、同日に開催されるレースが韓国🇰🇷とメキシコ🇲🇽でもあり、パリ五輪を見据えた世界ランキングを上げたい選手がそちらのレースを優先して、フルメンバーでの開催は叶いませんでした。
ヘウンデ韓国WTCには岸本・福岡、ラパス🇲🇽ATCには宮崎・酒井・池野が出場しました。昨年準優勝の中嶋、リオ五輪代表の佐藤、東京五輪代表の高橋らも欠場となりました。

レースランクはWTCS(World Triathlon Championnship Series)をトップとして、次がWTC(World Triathlon Cup)、そしてATC(American Triathlon Cup)など大陸ごとのCTC(Contineltal Triathlon Cup)が続きます。上位ランクのレースに出場するためにはポイントを重ねて世界ランキングを上げていく必要があります。そのため日本選手権(NTC:National Triathlon Championships)よりも上位ランクのレースを選択したと思います。

《優勝の獲得ポイント》
WTCS:1000P
WTC  :500P
CTC    :250P
NTC    :50P
(上記はOD開催の場合、SDは20%減。CTCにはQF係数適用)
1つ順位を落とすごとに獲得ポイントが7.5%減少していくので、日本選手権優勝50PはWTCS40位、WTC31位、CTC22位相当となります。

女子の優勝候補は6度の日本チャンピオンに輝いている上田藍、今季で一線を退くと発表しているので有終の美を飾れるかどうか。その対抗馬として、若手筆頭の中山彩理香や佐藤姫夏が挙げられます。ベテランvs若手の構図の中でレーススタートを迎えます。
ちなみに一線を退くと発表している選手は他に、西麻依子や高嶺直美もいます。

気温17℃、水温21℃、北風7mの吹き荒れる中、8時にビーチスタート。

〜Swim1500m=750m×2〜

横一列のスタートからうねる海に向かって泳いでいきます。この環境下ではプールでのスイム力よりもうねりや波をこなす技術が必要なOWでのスイム力の方が重要になってきます。第1ブイへの直線は300mあり、ここで先頭に出たのが江田、積極的にレースを作っていきます。その後ろに中山・久保埜が続いていきます。江田を先頭に綺麗な縦一列になった3人がストレスなく泳ぎ進めるうちに後続を離していき、750mの1周目を終えた時点で4番手の佐藤に12秒差をつけて2周目に進みます。2周目も先頭の3人は後続との差を開いていき、レースが動いたのはゴールまで200m地点。久保埜がペースをあげて先頭に出て、中山・江田の順番になってスイムアップ。
波打ち際の泳ぎの処理で江田が7秒遅れながら、トランジッションに進んでいきます。後続では47秒差で蔵本・佐藤・池口を皮切りに8名の集団が続き、ここに優勝候補の上田が入っています。

〜Bike40km=5km×8〜

有料道路を往復する平坦コースではあるものの、北風が強いためハードなコースに変貌。集団形成をしていくバイクのこぎ出しでは、世界の舞台を数多く経験している中山と久保埜の2人がスムーズに加速&集団形成を済ませて江田を置き去りにしていきます。

Lap1
中山・久保埜
+30s 8名(江田/上田/池口/佐藤/江成/杉原/蔵本/西)
1周目を終えて中山・久保埜の2人集団、単走を強いられた江田はあっという間に後続に吸収されてしまいます。30秒差に8名の集団を形成し、先頭集団を追いかけます。

Lap2(10km)
先頭(Lap8:16) 中山・久保埜
+30s 8名(江田/上田/池口/佐藤/江成/杉原/蔵本/西)
先頭と後続差が変わらない1周。後続集団でローテーションできないメンバーがおり、そのせいで集団内で細かい速度差ができてしまい、ペースがうまく作れない様子。

Lap3(15km)
先頭(Lap8:18)  中山・久保埜
+30s 8名(江田/上田/池口/佐藤/江成/杉原/蔵本/西)
風の強い厳しい環境下ではあるものの、先頭集団はイブンペースで周回をこなしていきます。後続集団はまだペースに乗り切れていない様子。この周回で井出がリタイヤ。

Lap4(20km)
先頭(Lap8:25)  中山・久保埜
+26s 8名(江田/上田/池口/佐藤/江成/杉原/蔵本/西)
+1:10 5名(武田/太田/高嶺/加後/潮田)
先頭集団のペースが若干落ちる。後続集団のペースは変わらないものの差が詰まる。
第3集団との差とメンバーも分かり始める。

Lap5(25km)
先頭(Lap8:25) 中山・久保埜
+10s 6名(江田/上田/池口/佐藤/江成/杉原/蔵本/西)
+1:06 5名(武田/太田/高嶺/加後/潮田)
4周目で差が詰まったことがわかった第2集団の士気が高まり、一気に差をつめて射程圏内に。

Lap6(8:17)/Lap7(8:17)/Lap8(8:35)
先頭10名    /先頭10名 /先頭10名
+1:07 5名  /+1:21 5名 /+1:30 5名
6周目に第2集団が先頭集団に追いつき10名の集団に。集団内では追い風区間で上田が積極的にペースを上げて、集団が縦長になる場面が多くあり、後続の選手はかなり脚を使わされている様子。
そこから集団メンバーに変化はなく、後続集団との差が若干開きながらバイクフィニッシュ。

〜Run10km=2.5km×4〜

久保埜、中山、上田、蔵本といった実力のある選手が素早くトランジッションを終えて、飛び出していきます。500mで上田・中山の二強が先頭争いになります。世界レベルのラン力を持つ上田に少しでも長く一緒に走っていようと中山も食らいつきます。1km地点になると早くも上田が単独トップになります。強風の中にも関わらずペースは1km3:23ほど。

Lap1      /Lap2         /Lap3
上田              /上田           /上田
+25s蔵本・中山/+36s蔵本・中山/+40s蔵本
+35s久保埜       /+1:18佐藤・西 /+52s中山
+40s佐藤     /    久保埜   /+1:50久保埜
+45s西・江田   /         /+2:05潮田
2位争いは3周目に蔵本が前に出て中山を離すことに成功、3周目には1分30秒差の第2集団の潮田が猛追し、先頭集団のメンバーに追いつき始めます。先頭上田のペースは後半でも1km3:39で走り続け、優秀の美となる7度目の日本チャンピオンに輝きました。2位は蔵本でキャリアハイの成績を残し、3位で中山がフィニッシュ。ランで驚異的な追い上げをみせた潮田が4位入賞。

《レース結果》

優勝 上田藍
2位 蔵本葵 +1:04
3位 中山彩理香 +1:20 U23優勝
4位 潮田小波 +2:06
5位 久保埜南 +2:16
6位 江田佳子 +2:39
7位 西麻依子 +3:02
8位 佐藤姫夏 +3:24 U23 2位
9位 江成みなみ +4:15 U23 3位

ベテランvs若手といった構図の中で、うねりのある海や強風といった過酷な環境下を多く経験してきたベテラン勢がうまいレース運びをして上位に入りました。獲得ポイントの多くランクの高いレースが同日開催となりフルメンバーでのレースとはいかなかったものの、逆に若手の名前を国内に発信する良いきっかけになりました。若手選手はこのレースがキャリアハイにならないように、着実に力をつけていってほしいです。

学生支援と学生結果

学生支援・応援企画で賛同していただきました皆様、ありがとうございました。学生たちには1人25,600円の支援をすることができました。JTUからの宿泊指定ホテルであるシェラトン1泊分(25,000円!)になりました!

支援した学生の戦績は下記の通りになります。
◯中山彩理香(日本大):3位表彰台、U23優勝
スイムから先行、バイクでの2人逃げ、そしてラン序盤での上田についていく積極性、若手筆頭の走りをみせた。2週間後のアブダビWTCSに出場。
◯佐藤姫夏(敬愛大)    :8位入賞、U23準優勝
最年少出場者ながら、バイクでは積極的にローテーションメンバーに加わりこれからを期待させる走りをした。
◯武田結(東北大)       :11位
バイクの追走集団を積極的に牽引し続け、同じ集団にいた選手からも別次元のバイク力に一目置かれる走りをした。
◯池口いずみ(日体大):14位
バイク先頭集団で走行するも風とペースの速さに苦しめられ、バイクの疲労からランで大きくペースを崩す。これもレベルの高位レースだからこその経験。

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