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通称じゃ困るんです

日本では婚姻時、96%は女性が姓を変えている。その変更手続きにかかる時間は膨大だ。私の場合は組織の代表ということもあり、登記など役所への変更届も多く発生した。

十九日に岡山県議会で夫婦別姓反対の意見書が可決された。「家族の絆」「子どもに悪影響」など、科学的根拠のない感情論には反論する気もうせる。ただ、気になるのは「旧姓を通称で使い続ければいい」という考えだ。

旧姓の「岩附」を通称として仕事で使い続けた理由は継続性。このインターネット時代、変えた姓で検索しても、過去にメディアに掲載された自分の記事などが出てこなくなることを危惧した。自分のキャリアが分断される気がしたのだ。

実際、困る場面も出てきた。パスポートを登録すると、その名がそのままネームタグに使われてしまう国際会議や、自分が岩附由香であることを証明できるIDがないことなどだ。事務所に東京都のNPO担当者から電話があったとき、受けたインターンさんが私の本名を知らず、「そのような名前の者はおりません」と答えてしまったという笑い話さえある。

これはどっち?という迷い、説明の手間、行き違いによる雑務と不利益、そして、二つの名前を生きる違和感。だから、通称じゃ、困るんですよね。

NPO「ACE」代表 岩附由香

(2021年3月30日の東京新聞・中日新聞夕刊コラム「紙つぶて」に掲載)

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