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思ってたんと違う

さぁ、新年度だ。新しい学校、職場でスタートを切る人も多いと思う。私も二十数年前、晴れて志望の大学に入学を果たし、意気揚々だった。ところが、一言でいえば「思ってたんと違う」。ほかの大学に行っている友だちがキラキラして見える。とにかくここを脱出しようと、交換留学の希望を出した。まだ演習の「B」と体育の「A」しか成績が出ていない一年生の夏に。

人気の留学先は成績優秀な上級生たちがその一、二席を争う。一年生での応募は極めてまれで、分が悪い。だから、異例の七人枠があった米国のマイアミ大学を第一希望にした。

うまく合格でき、十カ月を過ごしたマイアミの留学生活は実に楽しかった。その留学期間を終えて、一カ月間、アメリカ一人旅をした。

立ち寄ったメキシコで、子どもの物乞いに会った。少し離れたところで、お母さんらしき人が空を見つめている。「なんで、子どもにこんなことをさせるのだろう」。このときに感じた怒りと残念さが原点となり、国際協力の道を志した。

もし初めから楽しい学生生活だったら、この出会いはなかった。だから、学校や会社が志望や期待通りじゃなくても、腐らず、顔を上げ、見渡してみてほしい。まだ見えていない未来につながる道があなたをきっと待っているから。

NPO「ACE」代表 岩附由香

(2021年4月6日の東京新聞・中日新聞夕刊コラム「紙つぶて」に掲載)

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