#31 雪隠と留学 [第3部 スペイン編] ep.XV「来客②」
翌日はスイスで研究出張中の先生のマドリード侵攻である。
事前に「観光客の行かない地元民の店を見つけよ。パエリアやアヒージョなどの子供騙しは既に攻略済みだ」とのお達しがあった。
すぐさまスペイン人のクラスメート、ギジェルモに連絡。なんとかそれらしい店に狙いを定め、杉田さんと共に迎え撃った。はたから見ればまたもや関係性のよくわからない面子での食事。
ちょうどソル広場とモンクロア市役所の中間あたりにあるバル兼レストランの「El Tendido」は店内の壁中に闘牛の写真や絵が所狭しと飾られており、入店した夜七時過ぎにはまだカウンターで飲んでいるお客さんが数名だけでがらんとしていた。
八時半ごろから徐々に混み始めた。このスペイン人の生活リズムを直に感じられて先生も笑顔を隠せない。
お気に召していただけたようでいつものように高めの打点から料理の写真を撮っていた。杉田さんは顔を真っ赤にしながら赤ワインを傾けている。珍しく二軒目に行こうと言い、奢ってくれた。
次回予告『雪隠と留学 [第3部 スペイン編] ep.XVI「香水と憐れみ」』
現在、海外の大学院に通っています。是非、よろしくお願いします。