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名建築と住む人 ~東京・銀座の中銀カプセルタワービルで生まれたコミュニティーと今後のプロジェクト。

黒川紀章が設計した世界的にも有名な中銀カプセルタワーの、今とこれからを取材しました。
(エース2021年秋号特集「すまいのかたち」より)

「ここは建物だけでつながっているコミュニティーができていて、住んでいるのはほとんど女性。銀座の片隅の名建築の中が、『女子寮』あるいは『長屋』みたいになっています(笑)」。そう答えてくれたのは、中銀カプセルタワービル保存・再生プロジェクト代表の前田達之さん。「メタボリズム」を提唱し、この建物を設計した黒川紀章も、まさか長屋のような暮らしができるとは想像していなかっただろうと同氏は話す。

 1972年完成の中銀カプセルタワービルは、都市や建築も時代に合わせて新陳代謝をしながら成長するという思想のもと、交換可能な140戸のカプセルで構成された分譲集合住宅。
 10㎡のワンルームは、大きな丸窓と、テレビやオーディオ機器などがある
壁面収納、それに小さなユニットバスがあるだけの小さな空間。竣工当時は入居者にビジネスマンを想定し、掃除や洗濯はホテルのようなサービスを考えていたようだ。

住む人に支えられる建築

「解体が決まり、現在住んでいるのは10名くらい。デザイン、アート、メディア系など面白いものが好きな人が集まっています。以前は弁護士事務所が多かったんですが、だんだん入居者も変わってきて、今はクリエイティブな仕事をしている人が多いです」と前田氏。

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 建築と住む人。時代の流れとともに、どんどん中の住人は入れ替わりながら、外側は半世紀前と変わらない。良くも悪くもそのままの状態。しかし、“そのまま”の魅力に引き寄せられ、さまざまな人が集まり関わっていく。今後は“ネクストカプセル”のかたちを探し、カプセルを再活用するためのプロジェクトが計画されている。

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カプセルを再生・活用する動き
解体が予定される中銀カプセルタワービルは、カプセルを取り外し、美術館への寄贈や宿泊施設などでの再活用を進めるプロジェクトが始動している。「メタボリズムのコンセプトを引き継ぎ、次につなげる」という設計思想を継承し、カプセルの改修は黒川紀章建築都市設計事務所が担当。建物記録のための書籍の出版や、カプセル改修のためのクラウドファンディングも行う。https://www.nakagincapsuletower.com/

写真=繁田諭



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