君に贈る読書
「はい、これプレゼント」
彼女はそう言って僕に一冊の本を差し出した。
彼女は本が、読書が好きだ。ふだん物静かな彼女だけど、好きな本の話をするときには、言葉を尽くして感想を懸命に話してくれる。そんな彼女の姿が愛おしかった。
本の内容は彼女にふさわしく、どこか幻想的で、でも心が温かくなるような物語で、僕の心にじんわりと染み渡るようだった。
その本の一節に鉛筆で線が引いてあり、「MからAへ」と書いてあった。Mは彼女のイニシャル、Aは僕のイニシャルだ。
「君の未来の半分を僕にくれるなら」
主人公の少年のセリフだ。
僕は本の中から返事の言葉を見つけ出し、「AからMへ」と鉛筆で書いた。
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