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テレコミュニケーション編集部『一次産業の課題解決へ 地域IoT』

大変面白くて学びになる本でした。
本書はNTTアグリテクノロジー社が各地域の一次産業事業者らの課題解決に伴走しているPoC事例集です。

全体を通して素晴らしいと感じたポイントは2つあります。
1つは、IoT製品によってしっかりと顧客の売上UPに繋がるような取り組みになっていることです。
日頃、自分が業務DXの提案をする中で、売上が上がるか明確にコストが下がる提案が出来ないと、単に楽になるというバリューではなかなか提案が通りづらいなと感じます。

本書の取り組みは、IoT製品の導入によって現場に行く頻度が減ったことや家族と旅行に行けるようになったことなど、「手間の削減」はもちろん成し遂げているのですが、それ以上に売上が上がる取り組みとしてフィーチャーされていることが素晴らしかったです。

例えば、IoTデバイスを活用した徹底的な温度管理によりスイカの収穫時期を最適化することで、ブランドのランクを最高ランクで出荷することができ、売上高UPにつながった事例。
外気温積算920度での出荷を目標にしており、これまでアメダスの情報などから積算管理をしていたが、ピークから5日程度のズレによりBランク品での出荷になってしまうケースも多かったという。しかし、ハウス内のスイカの高さに温度センサーを設置してより正確な温度管理をしたことでピークから2日以内の出荷に納めることが出来てAランク品での出荷量を増やすことに成功したんだと。

質の良いスイカを提供することで付加価値を増大し、単価アップに繋がるのは本当に理想シナリオなのではないかと思いながら拝読していました。素晴らしい事例。

2つ目は、次世代への技術継承などに計測データを活用しようという方針が全ての事例から読み取れることです。
今回本書を読んで改めて思いましたが、例えば農業は、ハウスの温度管理や湿度管理を間違えると全てがダメになるリスクを孕んでいます。そこを長年の経験と勘でやってきている農家さんが大半を占めているわけです。
その技術継承を若い世代にすることは並大抵のことではありませんし、一人前になるまでに何十年もかかる産業に携わりたい人は少ないはずですから、人手不足問題は加速するばかりです。そのような問題意識が強いのか、誰でも80点を出せる仕組み作りにIoTを活用するのだという強い意志を全ての事例から感じました。

特に秋田県の椎茸栽培の事例では温度管理と散水による水分量管理が本当に難しいみたいでした一つ間違えると全てがダメになる(自分も大学時代椎茸育てたことあるのでめちゃわかる)。リスクをデータが低減してくれており、さらなる技術の平準化が進んで人不足問題が解消されると良いなと思いました。

これだけ広くPoCをやれているのはNTTさん本当に流石だなと感心しました。途中でも「実証から実装へ」という言葉が出てきましたが、顧客と共に継続的な成長が可能な事業モデルを目指して、取り組みがさらに進化することに期待したいです。

※本noteで利用しているAmazonリンクはアソシエイトリンクを利用しています。

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