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本の推し活 -ブックナビクラブ-

アカデミーヒルズのメンバーズ・コミュニティ「ブックナビクラブ」の2024年最初の定例会(1/13開催)でシェアされた本を紹介します。

『2035年の世界地図 -失われる民主主義、破裂する資本主義』

・エマニュエル・トッド氏(フランスの歴史人口学者)
・マルクス・ガブリエル氏(ドイツの哲学者)
・ジャック・アタリ氏(フランスの経済学者)
・ブランコ・ミラノヴィッチ氏(セルビア共和国出身のルクセンブルク所得研究センター上級研究員)
4名の世界的識者へのインタビューに対する日本人識者の論評で構成された本です。
紹介してくれたメンバーは、「範囲が広すぎるので各々の識者の考えを知りたい場合は、各著書を読むのがいいのではないか。一方で、世界で起きている現象は複雑に絡み合っているので1つの現象だけにフォーカスすると見誤ると思った」と感想を述べてくれました。

参考までに、マルクス・ガブリエル氏は2020年に、エマニュエル・トッド氏は2021年と2022年にアカデミーヒルズで開催したInnovative CIty Forumにご登壇いただいています。


『The Tokyo Toilet』

The Tokyo Toiletというプロジェクトをご存じですか?
「日本の街は清潔で安全で素晴らしい、日本のおもてなしの心は美しい」とよく言われますが、取り残されているのが公共トイレではないでしょうか。
不潔、危ない、使いたくない・・・というネガティブな形容詞がつく公共トイレですが、それをアートの力で変えようという狙いです。
渋谷区の17の公共トイレが、安藤忠雄氏、隈研吾氏、佐藤可士和氏をはじめとした著名な建築家、クリエーターによってデザインされて生まれ変わりました。
詳細はプロジェクトのサイトをご覧ください。

2024年のアカデミー国際長編映画賞にノミネートされた「PERFECT DAYS」は、役所広司さんが演じるトイレの清掃員を描いた映画ですが、正にこのプロジェクトのトイレが舞台になっています。

プロジェクトのサイトには、本当の清掃員の方のインタビュー動画が掲載されています。今までは掃除をしているときに見向きもされなかったが、新しくなったトイレでは「お疲れ様です。ありがとう!」と声を掛けられるようになったそうです。
綺麗に使ってもらうための注意書き等は一切なく、アートの力で綺麗さを維持しているそうです。改めてアートの力を感じました。

参加したメンバーからは、
「家のトイレではしないことを公共トイレだと平気でしてしまうことがある。公共トイレを綺麗に使うということは一番ハードルが高い利他の心かもしれない!」、
このプロジェクトは、トイレをアートの力で素敵な場所にすることで、人を内面から綺麗にしている」というコメントがありました。


『世界は分けてもわからない』

分子生物学者の福岡伸一氏の著書です。
大学生で就活をしているときに、コンサルタントの先輩から薦められて読んだというメンバーが紹介してくれました。
“ぐっときた”パートは、商品添加物の人体への影響を講義している章だそうです。食品添加物は腐るものを止める薬で、微生物の働きを止める役割をして微生物が繁殖しないようにしています。しかし一方で人間の腸には多くの微生物が存在して、人間は微生物と共生していることも事実です。
一部分だけを切り出してみても本当の姿は分からない、周りとの繋がりで成り立っていることを知った、と感想を述べてくれました。
ところで何故、コンサルタントの先輩がこの本を薦めてくれたのか?という点ですが、社会の仕組みがどんどん複雑化をしたことで、様々なところで専門化が進んでいます。コンサルタントも人事系、戦略系・・・と専門化しているが、その部分だけを見ても分からない全体を俯瞰することの大切さを知ってもらいたかったのだと思うとのことです。
「世界は分けてもわからない!」ということですね。

『消齢化時代』

生活者の意識や好みや価値観などについて、年齢による違いが小さくなる現象「消齢化」が進んでいるそうです。
例えば、「ハンバーグが好き」、「超能力を信じる」、「離婚はしないほうが良い」等についての20歳代と60歳代の違いが以前は40ポイントあったのが、2020年には19ポイントへ減少していたそうです。
その結果、B to Cマーケティングでの一番の物差しであった「年齢」がなくなり、「べき論」が通用しなくなっているとのことです。
年齢だけではなく、ジェンダーによる違いも小さいなってきています。男性用化粧品や日傘など。
では、年齢や性別という物差しがなくなり、次の物差しがあるかと言えば、それは見つからず、男性だから、女性だから、〇歳代だから…ではなくその個人の好みがストレートに消費に影響していると言えます。
この本は博報堂生活総合研究所によるものですが、定期的にその時代の社会のトレンドをテーマに出版しています。
この本を紹介してくれたメンバーは、時代のトレンドを見ていくためにもこの研究所が出版している本は必ずチェックしているとのことでした。

『家族不適応殺 新幹線無差別殺傷犯、小島一朗の実像』

次に紹介してくれた本は、2018年6月9日に起きた殺人事件、走行中の東海道新幹線の車内で男女3人が襲われ2名が重軽傷男性が死亡した事件の犯人について論じた本です。
この事件の動機は「刑務所へ入ること、無期懲役になること」だったそうです。そのために一審で無期懲役となったときに、法定で万歳三唱をしたという普通では考えられない行動を犯人はしたそうです。
犯人は「刑務所へ入れば生涯保証される」と考え、人を殺して謝罪しないなど「無期懲役」を狙って用意周到に殺人を行っていたようです。
この本を紹介してくれたメンバーは、実際に起きた事件や出来事をもとにした映画やドラマは好きだが、この本は「無期懲役になるために人を殺す」という考えられない動機について知りたく手にしたそうです。

『図解 宮中晩餐会』

この本は、明治以降開催された宮中晩餐会のメニューが紹介されています。
テレビのニュースでは、海外からの国賓を招いて宮中晩餐会が行われたという報道で乾杯のシーンを目にします。しかし実際にどのようなお料理がサービスされているのかを知る機会は殆どないですよね。
中国やフランスでは招くお客様によって、料理やワインの種類(ランク)が異なるそうですが、日本の場合は相手によって変わることはなく、その国との関係でメニューを考えるそうです。
ところで、「ボンボニエール」をご存じですか。

日本の宮中晩餐会では、金平糖を入れた細工を施されたボンボニエールが記念品として配布されるのが慣わしになっているそうです。
コレクターがいるそうで、メルカリ等で売買されているとのことです。

紹介してくれたメンバーは、「料理の本なのに、写真やイメージ絵がないので、メニューから想像するしかないのが残念」とコメントをくれました。
宮中晩餐会へ招待されることは無いと思いますが、一度は参加してみたいですね!

今回は6冊の本が紹介されましたが、分野が全く異なる本、自分では決して手にしないであろう本を知ることができ、楽しい時間を過ごしました。

アカデミーヒルズ 熊田ふみ子

#アカデミーヒルズ #メンバーズ・コミュニティ #本 #推し活 #読書会




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