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議論によって最善の妥協点を探す -デンマークの民主主義から学べること-

7月5日に“World Report”の シリーズ第3回を、デンマークのロラン島に在住されているニールセン北村朋子さんをスピーカーにお招きしてオンラインで開催しました。テーマは「私たちがデンマークの民主主義から学べること」でした。

北欧の国デンマークと言えば、高福祉国家、幸福な国、SDGsが進んでいる国などのイメージが強いのではないでしょうか。

  • 高福祉国家:正確には「高福祉高負担」の社会です。医療費が無料、介護が無料、教育が無料など福祉は充実していますが、所得税は最高で52%(日本は最高で45%)で、消費税は軽減税率なしで一律25%とのことです。

  • 幸福度:2023年の世界幸福度ランキングは第2位(第1位はフィンランドで日本は47位)。

  • SDGs:2023年のSDGs達成ランキングは第3位(第1位はフィンランド、第2位はスウェーデンで日本は21位)。

また、民主主義指数という指標があり、2022年のデンマークは第6位です。第1位はノルウェー、第2位はニュージーランド、第3位はアイスランド、第4位はスウェーデン、第5位フィンランドで北欧の国が上位を占めています。ちなみに日本は第16位です。

スピーカーの朋子さんは、様々なデータをもとにデンマークについて解説をしてくれましたが、「民主主義とはなにか?」について以下のスライドで説明をしてくれました。

ニールセン北村朋子氏の資料より抜粋

プロがいるわけではなく、正解や完成形があるわけではないので、みんなで意見・考えを出し合って、誰一人排除せず最善の妥協点を探す必要があるとのことです。
「考え、トライし、育てて手直し、またトライし続ける必要性」を強調されていました。

そして、最善の妥協点を探すことは、子どものときに既にスタートしているそうです。それが森の幼稚園です。
森の幼稚園では、子どもたちが毎日の遊びを決めているそうです。子どもたち同士で話し合い、自分とは違う考えの子がいても、喧嘩になっても自分たちで、自分たちの最善の妥協点を探すということです。

朋子さんは、ブランコを例えにして説明をしてくれました。
子どもはみんなブランコに乗りたがります。でも、2回揺らせば満足する子もいれば5回や10回揺らしたい子など様々です。そこで子ども同士で話し合いブランコの乗り方を決めるそうです。
このように、子どもの頃から話し合い、全員で決めることを学び体験していることを知りました。正に子どもの頃から民主主義を実践しているわけですね。
日本の保育園・幼稚園の場合は、直ぐに先生が「一人5回ずつ」というようにルールを決めて、子どもはそれに従うのではないでしょうか。日本とは全く違うことに驚きました。

そして大人になっても、いつでも学べる機会があります。それが「人生の学校」フォルケホイスコーレです。
17.5歳以上であれば誰でも入学ができ、試験・成績・評価はなく、卒業証書・資格もありません。
全寮制で自分を知り、自分の強みを社会で活かす術を学びます。
人生で立ち止まり、自分と社会をよりよく知る時間です。
誰にも評価されずに自由に探究できる時間です。

このフォルケホイスコーレは、1844年にN.F.Sグルントヴィ氏によって開校されました。
背景には、民主主義社会への高まりに伴い、民主主義憲法と民主的な対話を重視した教育が熱望されていたことがあったそうです。

朋子さんのお話をお聞きして、教育の重要性を改めて感じました。だからこそデンマークでは義務教育から大学院まで無料、成人した学生には国から奨学金が出るのですね。

朋子さんのお話を伺って、フラットな関係で話し合うこと、そして最善の妥協点を探りトライ&エラーを繰り返すことが民主主義の土台に繋がることに気付きました。

アカデミーヒルズでは、議論の場として2019年に「みんなで語ろうフライデーナイト」を開催していました。

コロナ禍で開催が止まってしまいましたが、「語り合う場」に加えて「最善の妥協点を探ることが体験できる場」として再構築できると良いなと感じています。

※アカデミーヒルズのライブラリー会員は、アーカイブをマイページからご視聴いただけます。是非ご覧ください!

アカデミーヒルズ 熊田ふみ子

#アカデミーヒルズ #WorldReport #民主主義 #デンマーク #森の幼稚園 #フォルケホイスコーレ #ニールセン北村朋子

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