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集まる場所が必要だ!

アカデミーヒルズが主催するプログラムについて、オンライン中心からリアル開催へ少しずつ移行しています。
やはり、リアルに集まる方が人と人との交流が生まれやすいと感じるからです!
色々な方とお話する中で、「リアルに集まりたい」「初めて会う人とはリアルの方が良い」「信頼関係はリアルでなければ生まれない」など、リアルの良さを表現されます。
肌感覚では「リアルが良い」と感じつつ、何故そう感じるのかを知りたいと思っているときに、六本木ヒルズライブラリーで見つけた本『集まる場所が必要だ』にヒントを見つけました。

この本の日本語版への序文では、

オリンピックはスポーツイベントであると同時に、交流の機会でもある。何千人もの選手が選手村に住みこみ、生涯にわたる人間関係を築く。無数の人たちが競技を一緒に見て、フランスの社会学者エミール・デュルケームが「集団的興奮」と呼んだものを経験する。これは場所を共有するからこそ得られる稀有な自己超越の瞬間だ。

『集まる場所が必要だ』(エリック・クリネンバーグ, 藤原朝子訳, 2021年)8ページ

と、記されています。
「社会的興奮」とは、複数の個人が共通の目的意識のもとに集まると感情が共有されて、そこに個人を超えた集団としての感情や意識が形成されるという考え方です。

そもそも、エミール・デュルケームの『社会学的方法の規準』では、集団と個人の関係を以下のよう記しています。

集会で爆発する集合的感情は、単に全員の個人的感情に共通して存在していたものを表現しているのではない。すでに示したとおり、それはまったく別の何ものかなのだ。集合的感情は、共同的生(vie commune)の結果物、つまり個人意識の間で取り交わされる作用と反作用の産物なのである。そして、この感情が各々の個人意識の内で共鳴するのは、まさしくそれが集合的な起源から得ている特別なエネルギーによる。全員の心が一つになって響くのは、自発的な予定調和による一致ゆえではない。同じ一つの力が、同じ方向に全員の心を駆り立てるのだ。各人は全員によって導かれるのである。

『社会的方法の基準』(エミール・デュルケーム, 菊谷和宏訳, 2018年)60ページ

エミール・デュルケームは19世紀末から20世紀初頭に活躍された方ですが、20世紀半ばには、クルト・レヴィンが『場の理論』を提唱しています。
「人の行動には、その人の特性と周囲の環境が関係している」という考えです。関数で表現すると以下になります。


B=f(P, E)
B: behavior(行動)/ P: person(人)/ E: environment(環境)


人の行動には環境が大きく影響していることを示しています。
クレド・レヴィンは、マサチューセッツ工科大学のグループ・ダイナミクス・センターの所長を務めて、リーダーシップ、集団的意思決定、アクション・リサーチなどのグループ・ダイナミクスの重要な研究分野を立ち上げた研究者です。

肌感覚で「リアルが良い!」と思う要因を、研究者の方々は理論化されていました。
今回のパンデミックによって、「人がリアルに集まる」ことの意義を改めて認識できたと思います。
しっかりと感染予防をしつつ、リアルに集まって交流することによってしか生まれない「力」を創れる場を築いていきたいと思います。

アカデミーヒルズ 熊田ふみ子

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