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落胆の先には希望がある-カーティス教授の政治シリーズ「最終回」-

アカデミーヒルズのライブラリー会員限定イベント「カーティス教授の政治シリーズ」最終回を、6月6日に開催しました。
2007年にスタートしたこのシリーズは、ライブラリーイベント一番の長寿コンテンツです。

カーティス教授は1964年の初来日から60年間、日本の政治を国内外から研究されてきた政治学者です。そしてアカデミーヒルズでは50回以上のご講演をして頂きました。
第1回は2007年3月にグレートブックスライブラリーというお部屋で10名程度で開催したことを覚えています。
そして最終回は60名以上のメンバーがカーティス教授の最後の講演を堪能しました。

この日のカーティス教授のキーワードは期待と落胆でした。

期待と落胆Ⅰ(米国)

2007年のイラク駐留米軍の兵力の増強や、2008年のリーマン・ショックなどによる落胆から、2009年のオバマ大統領の誕生という期待へ展開しました。特に米国の人種問題が良い方向へ進むと期待しましたが、期待ほどには結果が得られず、2017年のトランプ大統領へと繋がります。2021年には初の女性副大統領が誕生し落胆から期待へ転換しかけましたが、上昇しきれないままに今年の大統領選挙を迎えます。77歳のトランプ氏と81歳のバイデン氏の戦いに期待することは難しいと思いますが、カーティス教授は「その次を狙って若い政治家が育ってきていると思う。それを思うと落胆から期待への転換点が見える」と語ってくれました。

米国と日本の政治の歴史について語るカーティス教授

期待と落胆Ⅱ(日本)

2006年まで首相を務めた小泉純一郎氏は、80%近くまで伸びた支持率のもと、郵政民営化をはじめ多くの改革を断行しました。カーティス教授は「小泉氏の強みは、負けることを恐れないところです。彼は総理大臣になりたかった訳ではなく、自分のやりたいことを遂行したかったのです。今までの首相とはスタイルが違うので、周りはプレッシャーのかけ方が分からなかったと思う」と小泉氏を表現されました。
そして小泉氏以降、毎年首相が変わる(2006年安部晋三氏、2007年福田康夫氏、2008年麻生太郎氏)という自民党への国民の落胆の結果として、2009年には民主党政権がスタートしました。しかし、2011年の東日本大震災による民主党への落胆で、2012年に自民党、安部政権が誕生しました。期待は高くありませんでしたが、結果的には一強で長期政権となりました。

期待への入口か?

「安部晋三氏の一強によって自民党の派閥の機能が低下して、今の自民党はガバナンスが効かない状態で、既に今までの自民党ではない」とカーティス教授は説明されました。そして、「次回の衆議院議員選挙では、自民党にとっては厳しい結果になる可能性が高いが、単独で政権を取れる野党がいないのも事実」と付け加えて、「そういう意味では今が変われるチャンス。いや変わらなければならない。国民がもっと政治に興味を持ち、今の怒りを明確に表現する必要がある」と強調されました。
「日本は落胆から期待へ転換する入口にいる。それを起動させるのは、皆さんですよ!」と投げかけられました。

民主主義とは面倒で非効率な仕組み

最後に、「21世紀に民主主義という仕組みが適切かどうかは分からない」という話題になりました。
民主主義とは、効率性ではなくプロセスを重視する仕組みなので時間がかかります。テクノロジーの進化でハイスピードで社会が変わる時代においては、中国のように一党独裁の方が決断が早く効率的です。
しかしいつも適切な判断をする訳ではなく、一人の力で船を漕ぐリスクが非常に高いことを考えると、独裁が良い訳ではありません。
「効率性を高めながら、いかにプロセスを守るかが重要で、民主主義を21世紀の社会にアジャストさせる必要がある」と、カーティス教授は締めくくられました。

カーティス教授を囲んでの懇親会

最後は、カーティス教授を囲んでの懇親会で、メンバーの皆さんは、カーティス教授と共に楽しく時間を過ごしました。

カーティス教授を囲んでの記念撮影

カーティス教授は「アカデミーヒルズでの講演は、とても話しやすく一番楽しかった!」とコメントをくれました。
その理由は、20代~80代、様々な職業、男女比も半々、という多様なメンバーからの質問が非常に刺激的で、カーティス教授自身も勉強になったからだそうです。
長い間本当にありがとうございました。

アカデミーヒルズ 熊田ふみ子

#アカデミーヒルズ #ジェラルド・カーティス #政治 #外交 #民主主義

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