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主語を「わたし」に戻す -見える世界が変わる-

ライブラリーのメンバーが集うリアルイベント「ライブラリーラウンジトーク」を、スタンフォード・ソーシャルイノベーション・レビュー日本版の編集長、中嶋愛さんをゲストにお迎えして3月13日に開催しました。
「『なんか気になる』から社会問題の種を見つけてみませんか」をテーマにみんなで語り合いました。


社会問題とは何か?どのように発生するのか?

最初に、「そもそも社会問題とは何か。そして、社会の問題はいかにして社会問題になるのか?」について、社会学者のジョエル・ベストの「社会問題の自然史モデル」を使って、中嶋さんに説明いただきました。
ジョエル・ベストの著書『社会問題とは何か:なぜ、どのように生じ、なくなるのか?』に記されいる社会問題の自然史モデルでは、
①クレイムの申し立て、②メディアの報道、③大衆の反応(世論や噂話など)、④政策形成、⑤社会問題ワーク(政策の実施過程)、⑥政策の結果
のプロセスを経て社会問題となり、解決に向けてのアクションが起こるそうです。
「①クレイムの申し立て」とは、「ここに解決を必要とする問題がある」と世間に向かって主張することだと言えます。


あなたが、最近気になることは何ですか?

世の中には、SDGsに代表される社会課題が沢山あります。気候変動、貧困問題、ジェンダー格差など、どれも巨大で複雑な問題で、個人のアクションがどう解決につながるのか見えづらいところがあります。
そこで、今回のラウンジトークでは、大きな社会問題からスタートするのではなく、身近なことで「もやもやしていること、困ったこと、イラっとしたこと、悲しかったこと、やめてほしいと思ったことなど」から考えることにしました。
⾔い換えると、⾝の回りに起こっている「解決を必要とする問題かもしれない︕」を発表しあうという「クレイムの申し立て」(第1レベル)のための言語化です。これができたら、その問題に関しての情報が入ってきやすくなったり(第2レベルへの関与)、その問題に関わっている人たちとつながって自分にできるアクションが見つかったりするかもしれません(第4レベル、第5レベルへの関与)

最初は、中嶋さんが気になったことです。
それは、「家の近くにある公園で改修⼯事がおこなわれて樹齢を重ねた大木からまだ若木まで何本もの健康な木が切られたこと」でした。切られてしまった⽊は何かを邪魔している様⼦はなく、そもそも利⽤者が少ない公園なのに数千万円の費⽤をかけて改修⼯事を⾏い、⽊が切られてしまったことに「なぜ︖」を感じたというお話でした。

改修工事で伐採された木(中嶋さんの撮影)

都市の貴重な樹木がなぜ住民に十分に告知されることもなく切られてしまうのか。都内の公園で再開発を名目とした樹木の大量伐採がされていることも気になっていた中嶋さんは、近所の公園での「事件」をきっかけに、こうした動きに反対している人たちの活動についてもっとよく知りたいと思い、オンライン署名にも参加しました。

そんな問題意識もあって、近所で開催された市民講座に参加してみたところ、区の公園⽤地担当の⽅とお話をする機会があり、「公園の改修でなぜ大量の⽊が切られたのか」を質問したそうです。その⽅との会話の中で、その⾃治体は緑化計画について⽬標を設定して積極的に実施していることを知りました。中嶋さんは「残された木を守るために、自分も何かに関わることができるかも!」と期待が生まれたそうです。
ちなみに「木を切った理由」は担当部署に確認をしてご連絡をいただくことになったとのことです。

主語を「わたし」に戻す

次に参加したメンバーに「気になること」を話してもらいました。
・延命治療の決断を迫られることのつらさ
・安楽死という選択肢はありか
・認知症による財産凍結、その前にできることはないか
・スマホに頼りすぎて⼈類の能⼒が退化するのではないか
・メタバースで自分の時間が「溶ける」気がする
・飲食店で「⼥性だから」とご飯の量を減らされる
など、様々な「もやもや」が明らかになりました。

ラウンジトークとしては、ここで時間切れになってしまいましたが、中嶋さんのように、
・自分でネットで調べてみる
・問題意識を共有できるコミュニティに参加してみる
などのちょっとした行動を起こしてみることで、自分の「もやもや」や「なぜ?」が解消できるかもしれないと思いました。

今回のラウンジトークを通じて、これが正に、主語を「わたし」に戻すことだと痛感しました。
実はSSIR-Jの創刊号(2022年1月)で中嶋さんが書かれたEditor's Noteのタイトルが「主語を『わたし』に戻す」でした。

主語を「わたし」に戻す。(SSIR-J創刊号のEditor's Noteより)

私がこの言葉を初めて聞いたときに「主語を『わたし』に戻したらイライラ・ストレスが解消する!」と感じました。
というのは、1950年代に活躍した精神科医のエリック・バーン氏の言葉「他人と過去は変えられないが、自分と未来は変えられる」を思い出したからです。
主語を「わたし」にすることで、(大袈裟に言うと)人生の主導権を自分が握れるので、未来を変えることができると思います。
そして、社会に対しての良い影響(ソーシャル・グッド)に繋がるのではないかと妄想しました。

昨年、「主語を『わたし』に戻す」をテーマにしたSSIR-Jの創刊号記念イベントを、SSIR-J、アカデミーヒルズ、そして、特定非営利活動法人ETIC.で開催しました。詳しくはこちらの記事をご覧ください。

また、来月(4/10)にSSIR-Jの第4号『コレクティブ・インパクトの新潮流と社会実装』が出版されます。

コレクティブ・インパクトとは、様々なプレイヤーが共に社会課題の解決に取り組むためのスキームで、共に行動することで効果の最大化を目指すことです。
2003年に米国でSSIRが創刊されて今年で20年になります。その間にコレクティブ・インパクトのあり方が変わってきているとのことです。これからのコレクティブ・インパクトの可能性やあり方が論じられています。
来月の出版を楽しみにしたいと思います。

アカデミーヒルズ 熊田ふみ子

#アカデミーヒルズ #ソーシャルイノベーション #SSIR -J #ソーシャルグッド #社会課題 #コレクティブ・インパクト

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