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議論を可視化する -グラフィックレコーディング-

“グラフィックレコーディング”(略して、グラレコ)をご存じですか?
大きなホワイトボードや模造紙に文字やイラストを描いて、議論のプロセスを可視化をする手法です。参加者がリアルタイムに情報を共有できたり、イベントの終了後に写真に撮って記録として残せたり、一目で議論の全体を俯瞰できるのが特徴です。

2月13日にアカデミーヒルズで開催したイベント「なぜ今、『コンセプト』なのか?価値創造のための現実逃避のススメ」で、グラフィックレコーダーの中尾仁士さんにグラレコを描いていただきました。

イベント終了後のグラレコを囲んで記念撮影
中央が中尾仁士さん、左がドミニク・チェンさん、右が吉田将英さん。
中尾さんが描いてくださったグラレコ(議論のプロセス)


ところで、アカデミーヒルズでは、年間で約100本のイベントを開催していますが、「イベントのライブ感を、もっともっと広めたい!伝えたい!」とずっと思っていましたが、なかなか良い方法に巡り会えていませんでした。
今までトライした手法を紹介します。

テキストによる情報発信

アカデミーヒルズは2008年から講演録をwebサイトへ掲載して、情報を発信しています。この方法はイベントの“詳細情報を知る”ことには適していますが、それなりに時間がかかることと、全体を俯瞰するという点では課題が残ります。

動画による情報発信

2020年のコロナ禍以降、オンラインイベントが一挙に拡がり、動画による情報発信が容易くなりました。そしてどこにいても参加ができ、アーカイブも視聴できるので、時間と空間を越えたコンテンツです。
テキストよりもライブ感を伝えるには適していますが、やはり全体を俯瞰するという点では課題が残ります。
アカデミーヒルズでは、2013年から2022年まで開催したInnovative City Forumの10年間の軌跡を動画で追うことができます。

音声による情報発信

アカデミーヒルズではもっと気軽にライブ感を伝える方法として、音声コンテンツのPodcastも展開してます。
音声は「●●しながら」に適しています(例えば、「歩きながら」、「運転しながら」、「お料理しながら」・・・)。

アカデミーヒルズのPodcastはオリジナルコンテンツがメインですが、イベントにご登壇いただいた方にダイジェスト版として語っていただいたり、イベントの感想をスタッフが語ったりと、幅広くイベントのライブ感をお伝えしています。

このように、メディアごとに各々特徴がありますが、どうしてもある程度時間がかかってしまいます。もっと「パッと!」イベントを感じてもらう方法、可視化できる方法はないかな?というのが悩みでした。

そして、私のグラレコとの出会いは、2018年に虎ノ門ヒルズフォーラムで開催したat Will Workのイベント「働き方を考えるカンファレンス2018」でした。
その時のことは今でも覚えています。長年の悩みが解消されたのです。
「パッと見てイベントの内容・プロセスが見えて、その上可愛い!」
本当に衝撃的でした。

その後、アカデミーヒルズのイベントでグラレコを導入できたのは、2021年11月の下記のイベントでした。
この時も中尾仁士さんに描いていただきました。

2021年11月のイベントで中尾さんに描いてもらったグラレコ

そして、今回のイベントがグラレコの2例目になります。
2021年、そして今回も、「現在進行形のイベントで、議論がどのように進むのかが分からない状況において、あたかも先が見えているかのごとくグラレコがなぜ描けるのか?」とても不思議です。

イベントが終了したあとに、中尾さんにその不思議についてお話を伺いました。

イベント中にグラレコを描く中尾さん

・話を聞きながらどうして描けるのか?
スピーカーのお話からキーワードやイベントの主旨に合いそうなトピックを拾って、できるだけ短い文字で要点だけに絞って書くこと、文字で表現しきれないことや絵のほうがより伝わることはイラストで描いているそうです。感覚としては会議で議事録を取ることと同じ感覚とのことですが、時々聞き取れないこともあるとのことです。
下の画像は、今回のグラレコの一部を拡大してものですが、吹き出しの中が空欄になっています。それは中尾さん曰く「聞き逃した」からとのことです。聞き逃して書けなかった部分も、終了後に登壇者や参加された皆さんとの会話のネタになり、より理解を深めることができる優れものです!

・漢字など間違えた場合は?
「文字を間違えたり、書き損じた場合は、赤字で『×』を付けて書き直す」とのことです。
グラフィックやイラストレーションのようにきれいな一枚を作ろうとしているわけではないので、誤字や線の揺れを気にするというよりは、今この場で話されていることや空気感がどうすれば伝わるか?を気にしているそうです。
しかし手書きをする機会がめっきり減った私の場合、漢字がなかなか思い出せず手が止まってしまうことが多々ありますが、2021年も今回のグラレコにも赤字で「×」をされている箇所は無かったので、改めて中尾さんの凄さを感じました。

・模造紙を区切り良く使えるのは何故?
2021年は模造紙3枚、今回は2枚と区切り良く使いきれることも不思議でした。
それについては、イベ ントの残り時間を測りながら「2枚かな?3枚までいくかな?」と描きながら全体のバランスを見積もっているそうです。 ただこちらもきれいにおさめて一枚絵を作ることが目的ではないので、足りなければ紙を付け足せばいい、という気持ちで書かれているそうです。

・今までに一番大変だったことは? 楽しかったことは?
今までに一番大変だったことは、「大学の数学系の先生が登壇されたときは、数式が多くて理解できず大変だった」とのことです。
一方で楽しかったことを伺ったところ、「2023年に行われたジャパンモビリティ―ショー2023 主催者プログラムで、来場者の皆さんがイメージする未来のモビリティ社会をグラフィック化できたことです。幅10メートルの模造紙に、皆さんが語ってくれた夢・未来を可視化できて、本当に楽しかった!」とのことです。
これは、2024年お正月のトヨタイムズの広告でも使用されました。


中尾さんにお話を伺っても、「進行している議論を、何故こんなに的確に描けるのか?」という謎は解けませんでした。
やはり「それができる中尾さんは凄い!!」に尽きると思います。

そして、私が中尾さんから感じたのは、「議論を可視化するということよりも、話した人の想いを可視化・表現しているのではないか」ということです。その人が何を伝えたいのか、その想いと向き合っているから、素敵なグラレコが描けるのだと思いました。

イベント終了後にグラレコを撮影する参加者の皆さん
(右端は中尾さんです)

最後に、中尾さんのnoteを紹介します。
人の想いを表現するグラレコの素敵な世界に触れることができます!

アカデミーヒルズ 熊田ふみ子

#アカデミーヒルズ #グラフィックレコーディング #中尾仁士 #議論 #可視化 #グラレコ

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