「スカウトされた話」
私はしばしばスカウトされる。ただし芸能プロダクションの人からではなく
ゲイの方からである。
その日は朝4時頃までタクシーを走らせていた。ススキノの外れで手をあげる男性2人を拾った。2人は肩を組みながら酔っ払っている。フラフラで車内に乗り込んできた。
「あっら〜っ、お願いねぇ〜!」
見た目はホスト風の2人なのだが、話ぶりは明らかにゲイの方々である。その2人はいきなり私に食いついてきた
「あらっ?運転手さん!いい肩幅してるわねぇ〜」
私の肩をガシガシしてくる。
「あっ胸もいい感じ」
胸をモミモミ。
「あっ、やめてくださいよー、お客さん!」
私は控えめに注意した。
話を聞いてみると、私みたいな体型や顔の人はゲイの世界では一定の人気があるらしい。具体的には、肩幅がガシッとしており胸もある。ヒゲは濃い目の
熊系タイプ。
つまり私である。
「運転手さん!うちの店で働かない?」
「人気でるよ、きっと!ギャハハハハーッ!!」
2人は大盛り上がりで爆笑している。
「もう!私なんかでは勤まりませんよーっ、はははっ」私は苦笑しながら返答した。
・ ・ ・
勤務明けの休日。
私は妻にゲイBARの方にスカウトされた話を笑いながらした。妻も笑いながら、
「稼げるなら、その道もいいかもね」
サラリとそう言った。目は笑っていない。
一瞬変な間が空いた。
いくら見た目が熊系の私でも、覚悟する時間くらいはほしい…。
私はお尻の穴をキュッと締めた。
ではまた。
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