「どうにも止まらない」
タクシー運転手時代の冷汗もんの思い出がある。ある日クラクションが故障した。鳴らないならまだしも、止まらないのだ。つまり
「パァーーーーーーーーー!!!!!」
と、鳴りっぱなし。
悪いことは重なるもので、こともあろうか故障した場所は
恐い方が住んでいる地区
であった。つまりその筋周辺の方々の住居が多くある場所である。
しかも朝8時の日曜日。
これは完全に寝ている時間だ。昨日は夜の街で忙しく働いて朝は大体睡眠中だ。そんな時にこの
「パァーーーーーーーーー!!!!!」
だもの。
私は青くなってとにかくボンネットを開けてみた。い、いや実のところ開けたところで直し方など分からない。車の構造に疎い私は、マジマジと鉄の内臓を見たあとパタンと静かにフタを閉めた。当然だが何も変わらない。
「神様たすけてくださいーっっ」
私はこころで叫んだ。周りを見るとヤバ系の住宅やアパートが密集している。この音を何とかしないと、大変なことになるー!!
無線で助けを呼んだが、なんせクラクションがうるさすぎてちゃんと伝わったか分からない。そうこうしていると、ヤバい空気を感じた。
「おい!なにしてる」
明らかに寝ていたと思われるその筋の若い衆の一人が近づいてきた。
「あっ、あぁ、はい、、すみません!こ、故障してしまって」
「だから早く止めろや!」
「そ、それが止められなくて困ってますぅ!」
「いいから止めろー!!」
音がうるさすぎるし、若い衆も眠たいせいか全然会話にならない。
その時同じ会社のタクシーが騒ぎを見つけて
助けに来てくれた!
そのおじさん運転手はササっとボンネットを開けて、右上の何かをチョチョチョイとしただけで
クラクションが止まった!
急に辺りが静かになった。とにかくは若い衆に謝って、おじさん運転手にお礼をした。こうして乗り越えたアクシデントだったが、なぜだか耳の奥で
「パァーーーーーーーーー」
と鳴りつづけている。
どうにも止まらない。
半日ずっとつづいて、私めちゃくちゃ辛かった。
ではまた。
もうやだー
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