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【徹底分析】動画を使った正しい学習法

僕を含めた今の大人世代が子どもだった頃、勉強するための方法と言えば

・生身の人間に教わる(集団授業/個別指導/家庭教師)
・本を使う(参考書/問題集)

の2択だったと思います。

でも、IT技術が発達し誰もがスマホやパソコンを所有する時代になった今、ここには第三の選択肢が加わっています。しかも、ものすごく強力な選択肢。
それが動画です。

身近なところではYoutubeで色んな科目の解説動画がいくらでも上がっていますし、
高校になると学校でスタディサプリなどの動画サービスと契約して生徒全員がIDを取得している場合もあります。
塾でも東進ハイスクールのような動画授業を専門にしているところもありますし、最近では集団・個別塾でも補助的に動画授業を導入している教室が増えています。

今や生徒たちの学習において新たなスタンダードになりつつある動画授業。

僕自身も、指導者として実力ある講師の方の動画を見て解説の勉強をしたり、学習法の専門家として動画授業を研究したり、そして学習者としても動画授業を活用してきました。

基本的に動画授業って素晴らしく、正しく使えばものすごく役に立つサービスです。
でも、使い方を間違うと途轍もなく非効率なことにもなりかねません。

今回は学習法の専門家の目線で動画授業を分析。
メリット・デメリット、そして正しい使い方をまとめてみました。
動画授業を学習に取り入れている方は是非参考にしてみて下さい!

動画授業のメリット

まずは動画授業のメリットです。
大きく分けると3つあって

・わかりやすい
・音声情報がある

・学習に入りやすい

です。
一つずつ詳しく解説していきます。

わかりやすい

何といってもコレでしょう。
Youtubeは誰でもアップできるので一概には言えませんが、それ以外の動画サービスについては担当しているのは基本的に腕利きの講師です。

これは動画授業の性質を考えれば当たり前の話で、
生身の人間が集団授業をするとなると一人の講師が指導できるのは20人~100人ぐらいが一般的です。
でも動画授業は一人の講師の授業を何千人、場合によっては何万人が見てもいいわけです。

ものすごく乱暴な言い方をすれば
集団授業の講師を100人集めて、一番上手い人の授業を動画化して全生徒がそれを見ればいい。

こういう話です。

話の組み立て、比喩、情報量、抑揚といった生徒が感覚的に「わかりやすい」と感じる要素もそうですし、例えば単元の構成や説明の仕方が後々の単元と接続性が良かったり応用が利きやすかったりといったプロ目線のマニアックな要素まで含めてかなり研究され、作り込まれていることがわかります。

もちろんライブの集団授業にはそれ特有の空気感のつくり方や生徒の引き込み方があります。
個別指導は基本的に一から十までを説明するのではなく、生徒のつまづきに合わせてピンポイントで解説したり、会話の中で理解を促したりするので根本的に別の技術です。

だから他サービスと一概に比較はできないのですが、それを差し引いても非常に価値を感じるわかりやすさだと言えるでしょう。


音声情報がある

これは参考書などで勉強する場合と比べての話です。
当たり前ですが動画には音声があります。
たいていの動画授業は板書もありますから、視覚情報+音声情報がダブルで入ってくることになります。

学習においてこの音声情報というのはかなり重要です。

マニアックな話は割愛しますが、単純に全く同じ説明だったら
・本に書いてあるものを自分で読む
・本を目で追いながら誰かが読んでくれる

の2択なら後者の方がラクに感じられると思います。

音声情報がある方が記憶やすいし理解しやすい。

勉強が上手い人なら本で勉強していても自分で音声化する習慣があります。
(覚えたい用語や公式は何度も口に出して覚える など)

でも勉強があまり上手くない人はそういう習慣がありません。
その時に動画授業のような音声情報を伴った解説はすごく便利です。


学習に入りやすい

勉強ってなかなか手につかないですよね。
特に始めようとするタイミングが一番しんどい。

やらなきゃやらなきゃって思ってても、ついつい先延ばしにしてしまいがちです。

でも動画授業は基本的にはいつでもどこでも見ることができます。
しかも、スマホのアプリをひとつ起動すればOK。
超お手軽です。

これがライブの集団授業や個別指導ならそもそも授業日以外には解説は聞けないですし、自習に行こうにも身支度をして移動するという結構なコストが発生します。

僕も普段はついついサッカーの動画なんかを見過ぎてしまうんですが、
「そろそろ勉強しなきゃな」
と思ったら、とりあえずそのままパソコンで動画を起動して再生ボタンを押すようにしています。
いざ始まってしまえば話の上手い先生が勝手に授業内容に引き込んでくれますから、勉強のきっかけには最高です。


ここまで動画授業のメリットを3つ並べてみましたが、要約すれば
「動画授業は学習者にとってラクである」
というのが本質です。

ですが、この「学習者にとってラク」という性質が、裏返してデメリットにもなります。
次は動画授業のデメリットを見ていきましょう。

動画授業のデメリット

デメリットは

・わかったつもりになりやすい
・条件次第では非効率
・集中が途切れやすい

の3つ。

わかったつもりになりやすい

勉強というのはざっくり言うと筋トレと同じで、負荷が強いほど効果が高いものです。
ですが動画授業というのは先ほど述べた通り学習者にとってラクなんです。
これは言い方を変えれば学習効果が下がりやすい、具体的には

・覚えた気になりやすい
・わかった気になりやすい

ということです。

これはライブの集団授業や個別指導にも言えることですが、いくら解説がわかりやすくても、その時点で問題が解けるようにはなりません。
「わかる」というのは勉強の準備が整ったに過ぎないのです。

そこから覚える・考える・使うといった練習をしてはじめてモノになります。

でも「わかりやすい解説」は聞いた時点である種の満足感を覚えてしまい、動画授業をただ見るだけで勉強を終えてしまう人が多いんです。

これはもう動画という形態の性質上仕方のないことです。

もちろん演習問題や確認テストがついている動画サービスもありますが、演習問題には結局解説がついているので解けていなくてもまた解説を見て満足するだけだし、確認テストは動画を見た直後ならできて当たり前のレベルであることが多いです。

これが動画授業の大きな落とし穴です。

条件次第で非効率

動画授業はどんな単元でも一から十まで丁寧に説明します。

これは、さっぱりわからない苦手単元なら絶大な効果を発揮します。

その反面、7割程度は理解している単元については授業を見る時間の大半は無駄です。
(もちろん「よい復習になる」という解釈はできますが)

大学受験に顕著ですが、ある程度のレベルになってくると
・手取り足取り誰かに教えてもらう
が大変非効率なことになります。

それよりも生徒自身が
・どこを覚えられていて、どこは抜けているのか
・何をどの程度理解できているのか
などを自分で把握し、そこに適切な手当てをしていくような勉強法が重要になります。

カッコいい言葉で自己調整学習と言いますが、学力の高い生徒は十中八九これができます。

動画授業はこの自己調整学習をするという観点では少し不便です。
だから受験日が近づき、学習者のレベルが上がるにつれて非効率さが目立つようになってきます。

集中が途切れやすい

ゲームに没頭していると誰かから声を掛けられても気づかないことがあります。
このように、深い集中は途切れにくいものです。

でも深い集中というのは、それだけ
・情報を得ようとしている
・色んなことを思考している
といった前向きな状態であるということ。

ですが動画授業の場合、ここでも学習者にとってラクという性質上、姿勢がかなり受け身になりがちです。

また、大抵の動画はこれまた学習者に親切に10~15分程度で完結するようになっています。
すると学習の切れ目が15分ごとに発生することになります。

こういった姿勢・切れ目の問題で動画授業は集中が途切れやすいという欠点もあります。

学習には入り込みやすいが、その分途切れやすい。
ということです。


動画授業の正しい使い方

さて、ここまでメリット・デメリットを見てきました。
長々と書きましたが、これらの性質を理解しておけば動画授業を正しく、効率的に使えるようになります。

メリットは放っておいても享受できるのですから、そこにデメリットを消すような工夫を盛り込めば良いわけです。

今回はオススメの方法を2つご紹介します。

授業再現

これは動画授業を使う人全員にやって欲しい方法。

ひとつの動画を見たら、その動画を見ていない友達に同じ授業をしてあげるつもりで動画の内容を自力で再生するというもの。
「ざっくりとした流れ」とかじゃなくて、精密に。板書の内容もノートなどに再現します。
(もちろん一言一句ではなくていいですが、情報は抜け漏れないようにして下さい)

ちなみに誰かに教えるつもりで脳内で説明することをセルフティーチングといいます。
これも成績優秀者がよくやっている方法。

さらっと言ってますがこれは激ムズな勉強法です。
実際、僕は高校生や社会人にこの方法をやってもらうことがありますが、最初は9割の人ができません

できるのは勉強のセンスがある人だけ。

だからここで、勉強のセンスがある人が無自覚的にやっているコツを2つ、こっそりお伝えします。

ひとつは授業の構成に注意を払うこと。

授業の構成というのは例えば英語であれば

6章:不定詞
 (1)名詞的用法
  (a) Sになるケース
  (b) Oになるケース
 (2)形容詞的用法
 (3)副詞的用法

みたいなことです。

勉強が上手い人は自分が学習している項目が、全体の構成の中のどこに位置づけられているのかを常に気にしています

「この授業のテーマは不定詞で、それは(1)(2)(3)の3つに分かれていて、今はその中の(2)をやっているんだな」

みたいなことが常に自覚できている状態です。

ちなみに上の例では
〇章→(1)→(a)
みたいな記号(?)を使いましたが、こういうのテキストに書いてますよね?
勉強が下手な人はこういう記号を無視しています。

内容そのものよりも、まずこういった構成(を示す記号)に注意を払う習慣をつけましょう。

もうひとつのコツは、動画を見ている最中、こまめにそれまでの内容を頭で反復することです。

自分のレベルに合った動画を選べていれば、見ている最中に

「あ、ここはもうわかった」

と頭に余裕ができる瞬間が何度もやってきます。

その時にすかさず

「これまでの内容はこんな感じだったな。こういう構成の中で、ひとつ前に内容はこうだったな」

ということを頭の中で反復しましょう。もちろん動画は止めません。
頭の容量の半分で動画の内容を聞き続け、余った半分でこれまでの内容を反復するようなイメージです。

学んだ内容を頭の中で反復することを維持リハーサルといいます。
勉強が上手い人はちょっとしたスキマに維持リハーサルをしています。
(ちなみに学校の授業を1回聞いただけでテストまで記憶が保持できる人もこれをやっているケースが多いです。)

慣れてくればひとつの動画の中で5~8回は維持リハーサルを挟むことができます。

・構成に注意を払う
・維持リハーサルをたくさん挟む

この2つのコツを身につければ、1回動画を見ただけでその内容を再現することができるようになります。

難しければ最初は1つの動画を半分に割って、前半だけ勉強して再現→後半を勉強して再現という形にしてもOKです。
逆に慣れてきたら動画の再生速度を1.25倍や1.5倍にして挑戦してみて下さい。

この方法を採ると、動画を見ている時に頭にハンパなく負荷がかかることが体感できると思います。
常に頭が忙しい。常にしんどい。そんな感覚。
でも頭への負荷=学習効果なので、その大変さの分で学習効果が上がっていると捉えて下さい。


問題集と併用

もうひとつオススメの学習法は、動画授業と問題集を併用するというもの。
動画授業を見たあとに、別で用意した問題集で該当単元の問題を解く。
ただそれだけ。
ありふれていて申し訳ないのですが、やはり王道は正義なのです。

ちょっとそれっぽい解説を加えておくと
単に情報をインプットするよりも、それを思い出して使おうとする(想起と言います)と記憶効果が高まります。これをテスト効果といいます。

まぁこれは感覚的には当たり前の話だと感じられると思いますが、意外とみんなやっていません。
やはり「わかった」という満足感によりそこで学習を終えてしまうのです。

だから動画授業で学んだ内容を必ず問題集で演習する。
これをセットにして下さい。

さらに、この学習法は回数を重ねるごとに効果を発揮してきます。

1回目はほとんど問題は解けないと思います。
ただ動画を見るだけの学習は効果がかなり低いからです。

でも2回目は後から問題集を解くということを意識できるようになります。
動画を見てる最中にも

「ここは問題集で問われるかな?」
「どういう形式で問われるだろう?」
「問われたら答えられるかな?」

という思考が働くようになってきます。

ここでもただ動画を見るだけでは発生しなかった負荷が発生しています。これが学習効果に繋がります。

回数を重ねるにつれて、どういう意識で動画を見れば学習効果が高いか(後の問題集の正答率が高いか)がわかってきます。


さて、ざっくり2つの方法を紹介しました。
まずはこれら(特に動画の再現)をそのままやるだけでも学習効果は上がるはずです。

ただ、学習において大事なのは自分で自分を観察し、肌感覚を大切にしながらやり方を創意工夫していくことです。今回紹介した2つの学習法を雛型にして、自分なりの改良を加えてみましょう。

ウチの塾生であれば授業内でもっと細かなアドバイスをするので、授業の時にリクエストして下さいね!

Youtubeを使う人の注意点

ここからはおまけです。
動画の中でもYoutubeを使う人に特有の注意点についてです。
(大人の方で資格試験のためにYoutube動画を活用する場合も同様です)

それは
網羅性が確保されているか
ということ

Youtubeはスタサプなどの動画サービス/東進などの塾で見る動画とは原理が全く異なります。

決定的な違いは
Youtubeは再生回数を増やす必要がある
ということです。

再生回数が回らないとYoutube動画の製作活動そのものが続けられない。

という縛りで授業動画を作るのはかなり大変なんです。
その結果として

・生徒の需要が大きい単元
・その講師が解説を得意としている単元

に偏ってしまい、1つのチャンネルだけだと網羅されていない単元があったりします

また、動画を上げているのがプロ講師ではなく、単に解説が上手い人である場合は1つの単元の中でも受験や定期テストに必要な情報が網羅されていないことがあります。

なのでYoutubeを活用して学習する場合は必ず問題集とセットで勉強し、必要な情報が網羅されるようにしましょう。

オススメはスタディサプリ

そういう面倒なことを考えるのが嫌な人は、有料ですがスタディサプリがオススメ。

ド定番の授業動画サービスですが、授業の質がめちゃくちゃ高いです。
月2,178円でこのクオリティの動画が見放題って、はっきり言ってチートです。

・わかりやすさ
・単元網羅性
・情報網羅性

全てが揃ってます。
値段が安いからチープに見える人もいるかもしれませんが、先入観を排してフェアに見れば、このクオリティ以上の授業ができる人なんて塾業界で本当に限られていると思います。

「わかりやすい解説」が欲しいだけなら月2,178円だけ払ってスタディサプリを使っていれば塾・予備校に通う必要はないと思います(これはウチも含めてです)。

今や「わかりやすい解説」にはお金をかける必要がない時代です。

まとめ

まとめです。

動画授業には
・わかりやすい
・視覚情報+音声情報のダブル
・学習に入りやすい

というメリットがあります。

これは動画が性質上「学習者にとってラク」だからです。

ですがこの性質が反対に
・わかったつもりになりやすい
・条件次第で非効率
・集中が途切れやすい

というデメリットにも繋がります。

だから動画授業を活用するなら受け身の姿勢ではなく
・動画内容を自力で再現する(セルフティーチング)
・問題集と併用する

などの工夫を盛り込みましょう。

ポイントは学習中にちゃんと自分に負荷をかけるということです。

動画授業は正しく使えば高品質で廉価というものすごくコスパに優れた学習ツールになります。

正しい学習法を身につけて、賢く動画授業を活用しましょう。

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アカデミー神戸進学会は
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下のホームページで他にも勉強を専門的に分析・解説した記事をいくつか書いていますので、興味のある方は是非ご覧ください。


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