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【書評】読書のススメ_6月25日

今回は藤澤が担当です◎
1冊目は読みやすいミステリー小説から。2冊目は重ためですが読みごたえガッツリの小説をチョイスしました。
山手台教室では貸し出しも可能ですので、ぜひ一度手に取ってみていただければと思っております!

『銃とチョコレート』 乙一

こんな人にオススメ!

○読書好きの人
○ミステリー小説が好きな人
○小学生の高学年から大人の方まで

読みやすさ◎

乙一さんの小説はホラーやブラックファンタジーといった作品が多いのですが、この『銃とチョコレート』は児童向けに描かれたミステリ―小説です。主人公は子どもで登場人物もわかりやすい役柄ばかり。極めつけは登場人物の名前が有名チョコレートの名前であること。(ゴディバにロイズ、モロゾフやゴンチャロフなど)冒険モノの要素も入っていて小学生(高学年)にも読みやすい1冊です。

冒険モノの一面も

ジャンルとしてはミステリー小説に分類されるのですが、物語の筋としては世間を賑わす大怪盗の手掛かりを主人公の少年が見つけ、その手掛かりをもとに名探偵と冒険の旅に出るという読み方も。ふだんなかなか本に手が伸びづらいという男の子に(もちろん女の子にも!)ぜひオススメです◎


『 i 』 西加奈子

こんな人にオススメ!

○読書好きの人
○読んで涙を流したい人
○高校生から大人

読みごたえガッツリ

西加奈子さんの作品は、主人公が自身の半生を語るストーリーを軸に家族友人や恋人といった人間どうしのつながりがていねいに描かれています。一方で主人公が自分の生い立ちや生き方に向き合うテーマも多いです。人によっては鋭利で重たい作風かもしれません。しかし、読んだあとの余韻はスゴいものがあります。

今の時代だからこそ生まれた衝撃作

シリアという国に生まれアメリカ人の父と日本人の母の養子になったとある一人の少女。幼いころから社会の貧困や差別を目の当たりにし、本来は自分もそちら側の人間であったはずなのに、今は優しい夫婦のもと恵まれた環境に生きていることに少女は心を苦しませる。その苦しみはやがて自分のアイデンティティの確立に大きく影を落とし、社会とつながって生きていく自信を失わせてしまう。
この『 i 』は現代の格差社会と個人の多様な在り方に深く切り込んでいます。こんなに重たい小説をなぜチョイスしたのか、少し自信をなくしながらこの本紹介を書いております…汗。ただ、スマホひとつあれば世界で起こる様々なニュースを知ることができ、多種多様な考え方を良くも悪くも共有できてしまう今の時代だからこそ、そこにメッセージを投げかけるこの小説を読んで救われたと感じる人もいるでしょう。西加奈子さんのこの『 i 』に僕は衝撃を受けました。テーマは重たく感じられますが、文章そのものは読みやすいです。

鋭くて痛い、それでいて温かい

インターネットが広く深く普及し「情報社会」とも言われる今の時代では、ネットニュースやSNSを通じて多種多様な在り方や考え方が広く知られるようになりました。その中には折り合いがつかず悩む人も。この小説にもさまざまな背景や考え方をもった人々が登場しますが、そのひとりひとりがやっぱりどこか傷ついていて救いを求めています。主人公の少女も、もうすでに自分が苦しんでいるのにそのひとりひとりの苦しみさえも受けとめようする。読み進めていくと少しずつ胸がチクチクと痛んだのを思い出します。そんな少女も自分を取り巻くものと折り合いをつけながら、自分をちゃんと受け入れていくラストシーンには胸にこみあげるものがあります。


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