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すぐにマネできるコーチング指導①~国語読解で「わからない」と言われたとき~

当会のコーチング指導とは生徒への声掛けや質問の投げかけ、適切なトレーニングメニューの設計などにより「教える(ティーチング)」ことを避けて生徒の成長を促す手法です。
「教える」という行為をできるだけ避けることで、生徒が講師に依存心を持つことを防ぎ、主体性を持って勉強に向かう姿勢を育てることができる指導法です。

コーチングはとても人間的な指導法で、動画やアプリでは(今のところ)代替できない、生身の人間にしかできない指導法です。

コーチング指導の中で我々指導者は将棋のように1つの場面にいくつかの選択肢を持ちながら、その生徒にとってより良いと思われる応答を選んで指導しています。このコラムではシーンごとに我々の頭に浮かぶ指導の選択肢の中で、すぐにマネして実践できそうなものを解説付きでご紹介します。コーチング指導の奥深さを少しでもお伝えできればうれしいです。

今回のテーマ:国語の読解問題で「この問題がわかりません」と言われた時

■指導するときのポイント
国語の指導で一番大切なのはちゃんと文章を読んで、内容を想像して、その上で問題に答えるという姿勢を身につけてもらうことです。この姿勢がないままに問題集を解こうとするとそれらしい箇所から適当に言葉を抜き出すという答え方になってしまいます。ロクに読まないで解くということです。これでもある程度正答できてしまうのが国語の怖いところです。
ですがこのロクに読まないで解くというクセがついてしまっている生徒でも、こちらが上手く声掛けをすれば意識がちゃんと文章に向かい、想像力や思考力が働き、正しく問題を解くことができる場合も少なくありません。つまり教えなくても解けることがよくあるということです。

どんな応答をすれば良い?

①「どんなお話だった?」
「わからない」と助けを求めに来た生徒は十中八九「正解」を求めています。ここで設問にスポットライトを当ててしまうと文章を読んで想像することよりも、設問に正答することに重きを置く学習姿勢になってしまいます。
「どんなお話だった?」と問いかけることで、生徒の思考を「問題を解く」ことから「お話の中身を想像する」ことに切り替えることができます。

②「ちょっと音読してみて」
「ちゃんと読む」という姿勢が身についていないと思われる生徒にはこの対応です。音読してみてもらうことで、その生徒がどの程度文章を理解しているか、また、理解しようと試みたかを知ることができますし、生徒の意識も「文章を読む」に向けることができます。

③「何を教えて欲しい?」
「わかりません」は本来質問ではありません。「私はわかりません。わからない私を、あなたがどうにかして下さい」という大変受け身な姿勢です。「何を教えて欲しいの?」と問うことで、生徒の思考は「自分は何がわからないんだろう?」というところに向かいます。「自分は何が、なぜわからないのかを考える」ということが、理解力を養う第一歩になります。

④「え?そうなの?」
「あれ?わからなかったの?おかしいな。君の力ならできるはずなのに。」そんなニュアンスで言うセリフです。この生徒は読む姿勢がある、読む力がある。そう確信する時に、その「信頼」を伝える言葉として使います。このセリフの後に「いやいや、君ならできると思うよ?」みたいな言葉を付け足して、もう一度席に戻って考えてもらいます。本当にできない問題だと逆に自信を失ってしまうので、問題のレベルと生徒のレベルを見極めた上で使います。

⑤「へぇ~」
「わかりません」→「へぇ~」はいかにも冷たいセリフ(笑)でも僕はよく使います(笑)
生徒に依存心を持たせないために、距離を取る言葉です。安心と依存は仲良しです。「わからなくなったら先生に聞けばいい」は心強い状態でもありながら、甘さが生まれやすい状態でもあります。「わからなくなったら何でも先生に聞きにおいで」と距離を縮めるばかりでは安心と一緒に依存も生まれてしまいます。僕は生徒を安心させたいのではなく、不安と共生する強さを身につけてもらいたいのです。だからあえて距離を取り「勉強は本来、君自身の問題だよ。こちらはお手伝いをするだけだよ」というメッセージを発します。それを応答のスタンスで表現します。もちろんその後に必要なサポートはします。

⑥「ん~…、答えは……ウ だな」
答えを教えてしまいます(笑)これも僕が好んで使う手法です。もう少し詳しく言えば、まず文章をちゃんと読みます。「ふむふむ」とか言いながら。そして設問を見て、普通に答えを考えて、普通に答えます。それだけです。「答え教えちゃっていいの!?」と思う方もいるかもしれませんが、いいんです。
生徒側の目線で考えると「わかりません」と助けを求めに行ったら、いきなり「答えはウだな」と言われるわけです。その瞬間「答えを出したい」という生徒の目的は果たされました。だからと言って「ウですね。わかりました。ありがとうございます」と戻っていく生徒はいません。次の瞬間に「なぜ?」という疑問が浮かびます。さらに、こちらが実際に文章を読み、問題を解く姿を見せていたことで「どこを読んでいたんだろう?」「何をどう考えたんだろう?」という疑問も浮かびます。こうして生徒の思考は文章読解・文章理解に向かいます

ここでのポイントは

・あっさり答えを言うこと
・実際に解いている姿を見せること

です。

あっさり伝えることで生徒をいわば拍子抜けさせ、思考を「なんでその答えになるの?」に向けさせることができます。下手にヒントを出してはいけません
そして解いている姿を見せることで「どこを読んでどう理解したんだろう?」という部分に目を向けさせることができます。問題集の答えを見てそれを伝えても意味はありません


今回は6つの選択肢を紹介してみました。あくまで僕の場合ですが、実際には10通りぐらいから良いと思われるものを実行しています。⑥は実際にこちらも問題を解く必要があるので、ご家庭で実行するのは難しい場合もあるかもしれませんが、それ以外は簡単にできます。
是非試してみて下さい。

【アカデミー神戸進学会】
神戸板宿・宝塚山手台にあるコーチング型個別指導の専門塾です。「学習のプロ」が生徒の学力を細かく観察・分析し、学習法・計画法・キャリア形成に特化した指導をしています。
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