#2 悪目立ちしている黒い羊
今回は、欅坂46 : 8thシングルの『黒い羊』について考察していきたいと思います!
そもそも、黒い羊とは?
黒い羊(black sheep)とは、(一家・仲間の)厄介者、邪魔者という意味です。黒い羊は、羊毛を白に染められなかったことから、白い羊の毛に比べて価値が低く、羊飼いが好ましくない存在という意もあります。
また、心理学用語に「黒い羊効果」というのがあり、集団の中で上手く溶け込むことが出来ていない人を、集団の一員として認めずに排除しようとすることを言います。
信号は青なのかそれとも緑なのか?
皆さんは、子供の頃に、こんな疑問を持ったことはありましたか?
何故、「緑色の信号を青信号と呼ぶのか」と。
私もうろ覚えだったので、調べてみたところ、信号機ができた頃から、法令にも緑色信号と記載されていたそうですが、新聞で紹介された際に、緑色信号が青信号と表記され、それが世間にも定着したことが有力な説です。また、緑色の野菜や樹木のことを青野菜や青汁、青葉など、日本では緑色の物などを「青色」と呼ぶ習慣が原因ではないかとされています。
※因みに私も子供の頃、こんな質問を両親にしたのですが、明確な答えは返ってきませんでした(笑)
この歌詞は、小さな疑問に興味・関心を持っている無邪気な子供(ある意味、黒い羊)の質問にまともに解答してくれない大人(白い羊)への不満・反感を抱いているのではないでしょうか?他にも、「それが当たり前(常識)だ」という型に当てはめようとすることへの比喩なのかもしれません。
夕暮れ時の商店街の雑踏と踏切
夕暮れ時の商店街は、雑踏すなわち夕飯用の買い物に来る客やお店、学校や会社から帰ってきた学生、会社員たちと一緒になりたくないから、遠回りだとしても、踏切を利用しているのではないでしょうか?
(これは、白い羊は雑踏を、黒い羊は踏切を利用するという、歌の中における「踏み絵」のような役割を果たしていると考えています。)
私も、学生時代は友達の多い方ではなかったので、よく一人で帰ってました。その時、「クラスメイトとばったり遭遇」なんてしたくなかったので、違う道から帰ったりもしていました。
放課後の教室
放課後の教室というのは、少し雰囲気が違いますよね。
それまでは、授業やHRなど教師(大人)に縛られた状態ですが、それが開放され、生徒たちだけになります。
部活に行く人もいれば、すぐに下校する人(アルバイトに行く人)も、友達と他愛もない話で駄弁ったりする人など様々な人がいます。今思うと、この時間どれだけ愛おしいことなのか、失わないと分かんないですよね、人間って(私の心、思い出がだいぶ美化されているのかもしれませんが…)同様に、その時間が辛いと思うこともあります。
この歌詞では、主人公などが嘆き悲しむような表現が散りばめられています。
・白けてしまった僕
・その場にいるだけで分かりあえてる
・誰かがため息をついた など
表面上、取り繕っている人たちを小馬鹿にしているようで、それさえも出来ない自分への皮肉にも聴こえる歌詞だと感じました。
言いたいこと言い合って解決しよう
言いたいこと言い合って解決しようなんて楽天的すぎるよ
これは、誰に向けて言っているんでしょうか?
「しっかり、自分の言葉を伝えれば大丈夫」などと励ます教師や両親といった大人たち(羊飼い)に対する反論でしょうか?
「言いたいこと言い合って解決しようすれば良い」と絵空事をぬかす白い羊のリーダー(スクールカーストやグループのトップ)たちでしょうか?
「自分が我慢すれば、事が解決する」と思い込んでいる、白い羊のリーダーには楯突くことのできない弱い羊でしょうか?
「楽天的すぎるよ」と言いながらも、心の何処かできっと理解し合える、そんな「本物」のような関係が欲しいと願っている『黒い羊』なのでしょうか?
誰へのセリフかは分かりませんが、きっとこの主人公は、得体のしれない「何か」に恐れて、発言していると思います。それが、大人の支配なのか、白い羊への抵抗なのか、黒い羊自身に向けたものなのか、それら全てを呑み込むような雰囲気(社会や常識に造られたもの)なのか?
ここまで、ああだこうだと言ってきましたが、結局のところ、答えは 本当の声=誰かのため息 なんだと思います。どこにも吐き出せない不平不満なのだと…
サビについて (1番)
・僕だけがいなくなればいいんだ
⇒そうすれば、止まってた針はまた動き出すんだろう
まさにその通りで、きっといなくなっても日常(時間)は進んでいくことは、紛れもない事実だと思います。
全員が納得するそんな答えなんかあるものか!
反対が僕だけならいっそ無視すればいいんだ
みんなから説得される方が居心地悪くなる
目配せしてる仲間には僕は厄介者でしかない
これは、全員が納得する答えが無いのだから、自分の反対意見は聞かなければいい。にも関わらず、白い羊たちは、体として黒い羊にも意見を聞きます。
ある意味、彼ら(白い羊)の同情・哀れみであり、内心は厄介者と思っているのでしょう(主人公の主観)
同じ色に染まりたくない
「朱に交われば赤くなる」
という中国のことわざがあります。
朱色が入り混じれば赤味を帯びるように、人は付き合う人の良し悪しによって善悪どちらにも感化されるものだという意味で、この場合白い色に染まってしまう黒い色ということになりますね。
しかし、この白と黒は特別な色であり、何色にも染められる白・何色にも染まらない黒という対比です。
薄暗い部屋の明かりを消すタイミング
「子宮回帰」という言葉をご存知でしょうか?子宮回帰とは、動物が持つ一種の防衛本能であり、外敵から身を守るために狭く・暗いところを好むことです。(人間の場合、胎児のときの記憶から、無意識に子宮のような暗い部屋を好むこと)
つまり、外での活動に疲れて、自分の心身を癒やすことだと思います。
スマホには愛のない過去だけが残っている
スマホは特にいじらなければ、履歴として様々なことが保存・記録されます。(検索履歴や写真など)
しかし、そこには愛のない過去だけが残っていると語っています。一体何なんでしょうか?恐らく、何か悲しい過去があるのでしょう。
例えば、大切な友人を失った、親との軋轢、失恋など…
もしかしたら、この主人公も昔は白い羊として生きていたのかもしれません。友達との馴れ合いや大人が言うことに従うなど、今とは異なる人生だったのかもしれません。
人生の大半=思う様にはいかない
『黒い羊』の歌詞は、この主人公の人生を表しています。
1番が現在 2番が過去 そして、3番が未来
そして、この2番の過去では、主人公が
白い羊 ⇒ 黒い羊
に変わっていったことを表現しています。
『黒い羊』のMVでも、平手さんは何度も階段をかけ登っていくシーンがありますが、
それは 大人への階段や自らの人生 など様々な意味が込められていると思います。
No No No No 全部 僕のせいだ
この『NO』という言葉は、大人たちからかけられた言葉だと思います。「諦めろと諭された」と同じ意味でしょう。
⇒そして、白い羊(同世代の生徒たち)や羊飼い(大人たち)から突きつけられた言葉によって、黒い羊は
自己否定
するようになったのでしょう…
サビについて(2番)
1番と異なるのは、最後の
「わかってるよ」という言葉です。
自分が、黒い羊であり、白い羊の中では厄介者で誰にも理解・共感してもらえることなんて自覚している。
一方、誰にも分かってもらえないことなんて最初から分かっていたという「開き直り」なのかもしれません。
期待していたのだと思います。
白い羊というサイレントマジョリティーが大人たちに支配されず、不協和音を恐れない黒い羊になることを…
いきなり、現れた白い羊
これは、大人たちに従ってばかりの白い羊たちへの最後の問い掛けだと考察します。
この黒い羊(主人公)は、黒という何色にも染まらないことを自分自身にも誓っています。
主人公は、自分がそうじゃなくなったときに(白い羊になってしまったら…)、自らのアイデンティティや存在意義を失うことに恐怖を抱いています。
大人にとって、反逆の象徴とは?
この歌詞では、髪を染める=反逆の象徴(大人に対する)
と書かれています。皆さんの学校の多くが未だに地毛は黒(遺伝的な理由や部活の影響などを除いて)という暗黙の了解または校則に記載されているのではないでしょうか?
(因みに、私の学校でも髪は黒と決まっていました)
ただ、次の文にある「誰かに迷惑をかけたか?」というのは、いささか身勝手な意見ではないのかとも思ってしまいます。
人間は一人では生きていません。集団で生活し、社会を築くことで生活基盤を構築しています。その集団(社会)を維持する上で、ルールはどうしても必要です。
たとえ、自分自身が迷惑をかけていないと思っていても、他人から視たら、迷惑行為かもしれません。
(それもまた、子供の頃に思うことではありますが…)
これは、凄く難しい問題です。是非、皆さんもそれぞれ考えていただけると幸いです!!
自分の色とは違う⇒では、その『色』とは?
十人十色という四字熟語があるように、人の考えや価値観、身体的特徴、国籍・人種など今地球にいる人は全員違う何かを持っています。その中で、どのように自分という色を表現するのか。
これもまた、一つの色に染めようとする大人への攻撃なのかもしれません。
『白い羊』のふりをする者
社会(組織・集団)において、妥協している者への問い掛けですね。ただ、全て本心で話すのはどこまで許されるのでしょうか?
人を傷つけるようなことを特に言ってはならない接客業において、相手の期限を損ねるような発言をすべきでしょうか?
そんな極端な話じゃないだろうと言われるかもしれません。もちろん、私も自らの発言をすべて曲げる必要は全くないと思っています。
白い羊が悪で、黒い羊であり続けることが正しいのかは少し微妙ですね。
※主人公は、黒い羊になることを選びましたが…
悪目立ちする『黒い羊』
それでも、それなら と順接から逆接を使用し、
悪目立ちすることを非常に強調しています!
主人公は、いなくなるという選択から
悪目立ちすることを選んだ!!
これは、一つの決意であり、どのような形、未来であったとしても自らの存在を貫く決意が感じられました。
平手さんが持っていた彼岸花の意味
彼岸花には、「まず花が咲き、後から葉っぱが伸びる」という通常の草花とは異なる生態を持っています。そのため、「葉見ず 花見ず」と呼ばれ、昔の人は恐れをなして、「死人花」、「地獄花」と呼んでいたそうです。
これを知って、欅坂46と重なる部分があるなぁと少し思いました。私の中で、欅坂46はAKB48や乃木坂46のように、少しずつファンを獲得し、人気になっていったのとは違い、いきなり曲が大ヒットしたというイメージがあります。秋元康さんは、そんな彼女らと彼岸花を重ねたのかもしれませんね。(本当かは分かりませんが…)
また、赤い彼岸花の花言葉は、情熱、独立といった意味も込められています。
最後に
どうでしたか?
この曲は、解釈に非常に時間がかかり、難しかったです。思春期特有の悩みや葛藤の中でそれでも『黒い羊』として生きる主人公は、どのような人生を歩むのでしょうか?
そして、この曲を歌った欅坂46も活動休止することを無観客ライブで発表していました。キャプテンの菅井友香さんが、「グループの名前が独り歩きして、耳をふさぎたくなるようなことに悩まされたりもしました」と仰っていました。文春報道や相次ぐメンバーの卒業・脱退、ナチス衣装による炎上などファンではない私でさえ、欅坂46はこれだけの問題を抱えながらここまでやってきたのだと思います。
しかし、それと同じくらい様々な曲で多くの人を励ましたり、勇気を与えたと思います。
これからどのようなグループになるのかは分かりませんが、また別の機会に、欅坂46の曲を解釈させて頂きたいと思っています。欅坂46の皆さん、これからのご活躍を陰ながら祈っています。頑張ってください!!
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