おわりのはじまり
「真面目に一生懸命頑張って生きよう」
ずっとそう思って生きてきた。
いやずっとではない。
たぶん高校を留年し中退した時から。
自分なりに。自分のためにも。
真面目に一生懸命頑張って生きようとした。
でも、なぜだかいつも途中で苦しくなってしまう。
なんでだろうか?
こんなに真面目に一生懸命頑張ってるのに?
なんで?
高校中退以前は、幸せだったような気がする。
もう10年以上も前の事で記憶が曖昧だけど。
ちゃらんぽらんで、わがままで
迷惑をかけたり、嫌われる事もあった。
だけど、楽しく生きていた。
そもそも「生きてて楽しいか?」「幸せか?」なんて考えたり、意識した事がなかった。
おそらく「楽しく」て「幸せ」だったから。
親からの暴言や暴力はあった。
でも
「ばーか。わたしは間違ってない。あんたたちのやっている事がおかしいんだよ。自分より弱い者を捌け口にして情けない。いつか仕返ししてやる。寝首をかいてやる。」
そう思えていた。
中学の時、本屋で「“It”(それ)と呼ばれた子」という本を見つけた。軽く立ち見読みした。心臓がバクバクした。すぐレジへ持って行った。家に帰って一気に読んだ。涙がダラダラ流れた。やっぱり自分は間違っていない。そう思った。
しかし「高校中退」で心がポキリと折れた。
目の前の現実を受け入れられなかった。
卒業できず「社会不適合者」の烙印を押され
「居場所」を失った。
それまでは、家庭が針の筵でも「学校」という
「居場所」があった。
わたしは、「不真面目」で「メイクやファッション」「友だちと遊ぶこと」しか頭になかった。
楽しく幸せだった。
家でなじられ殴られ蹴り飛ばされようと
「居場所」があった。
気の合う友人や先生、学校が好きだった。
だから、親なんてどうでもよかった。
15歳の時、朝起きて学校に行けなくなった。
「単位が足りなくなり、留年になる。」
と、慌てた親に連れられ
不登校外来のある精神科を受診した。
「うつ・不眠」と診断された。
親の暴力はピタリと止んだ。
自分がこれからどうやって生きていけばいいのかわからなくなった。
早く「元に戻りたい」と、気持ちばかりが焦った。
学生じゃなくなったわたしは、学生の友だちに会うのがつらかった。
羨ましくて惨めになって、耐えられなかった。
誰にも会いたくなくなった。
自分の存在が恥ずかしかった。
外に出るのが無理になった。
1人、部屋の中で色んな事を考えた。
親の言う事を聞かず生きてきたからこうなったのか?
親が正しかったのか?
自分の好きに生きてきた。
そして、失敗した。
これまでの自分を全否定した。
自分の考えや生き方が間違っていたから、こうなった。
これからは親の言う通り
「真面目に一生懸命頑張って生きて行く」
自分で、そう決めた。
親はわたしが「ふつう」に戻れるよう必死になった。
引っ越しをしてくれた。
犬も飼ってくれた。
引っ越した先で、知ってる人がいない私立高校へ入学させてくれた。
そこで「真面目に一生懸命」頑張った。
アルバイトをしてみたりもした。
でも、継続してうまくはやれなかった。
親は「なんで普通のことができないの?」と困惑していた。
わたしも「なんでできないのだろう」と、苦しみ悩んだ。
わけがわからなかった。
考えても考えても、わからなかった。
考えることにも疲れた。
もう考える事をやめた。
憎くて恨んでいたはずの親に頼るしかなかった。
自分で自分の心を殺した。
生きるために。
そしてわたしはひきこもった。