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#短編

罪をなくした人

罪をなくした人

誰でもいい、この苦しみに根拠をあたえたまえ。

ロウソクひとつない石造りの壁にかこわれる空間で、一心に聖像へ相対する男がいた。出入りにつかわれる樫の扉は闇溜まりにかたく閉じられ、唯一採光をゆるされた対面上のガラス窓は秋を暮ゆく太陽に錯乱していた。
男は神に祈ることをしらなかった。それは自己の生命活動に許しをもらう必要がないと信じていたからだ。闘争心をみたすためにいたずらに魚をひっかける行為も、不快

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