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インサイドセールス出身の新米BtoBマーケターが10ヶ月間奮闘した話

こんにちは。あぶかわ( @abukawais )と申します。

初めてのポストなので、簡単に自己紹介します。アドビのデジタルマーケティング系のソリューション、Experience Cloudのマーケティングチームに所属しています。2020年は主に「Marketo Engage」というMA(マーケティングオートメーション)の新規向けマーケティングを担当していました。

MAとはなんぞや?という方はMarketo Engageのwebサイトに入門用記事があるのでご覧ください(とはいえめっちゃ長いですが)

MA(マーケティングオートメーション)とは?

私は元々、マーケティングオートメーション「Marketo」を提供するマルケトという会社に2017年に入社して、3年ほどインサイドセールスを担当していました(2019年にアドビと統合)。SaaSのサブスクリプションの商材なので、最近流行りの分業型の営業組織「The Model」を取り入れております。

アドビは外資系の中でもキャリアを重視する社風なのと、若手メンバーのキャリアを大切にしてくれる上司のおかげで、今年(2020年)2月からインサイドセールスとマーケティングを兼務し、3月から本格的にマーケティングに異動しました。そこからは、まさに嵐のような日々で、10ヶ月ほど経過して初めての年末年始休みを迎えているところです。

正直言うと、そこまでビジネス的には成果を出せている訳ではないのですが(具体的な数値も言えないですが)、インサイドセールスからマーケティングへのキャリアを掴みたい方や、BtoBマーケティングで何をしたらいいか分からず途方に暮れている、という方はそれなりにいらっしゃるのではと思ってまして、そういった方のお力になれればいいなということで、noteを始めてみました。

このエントリーでは、マーケティングに異動してから10ヶ月間の新米マーケターの奮闘記をご紹介します。長くて読むのめんどくさいよ、という方は、ウェビナーでお話した動画と資料を以下のURLにて公開していますので、ご覧いただけますと幸いです。

過渡期の組織、そして緊急事態宣言

2019年~2020年は、Marketo Engageのビジネスは過渡期と言える状況でした。アドビへの統合を経て、2014年にマルケト日本法人を立ち上げた創業メンバーや、中核として働かれていた方々が新たなキャリアへと進まれたり、アドビとの本格統合が進んで組織も大きく変わったりした時期でした。

外資系企業は外部からの即戦力人材の採用が多く、マーケティングはその道のプロも多いので、本来は未経験のメンバーが異動するのはあり得ないのですが、そういった過渡期の状況も味方して異動することになりました。

しかしながら、2~3月というと、アメリカでコロナ感染症が猛威をふるい、日本でも感染者が出だした頃です。Marketo Engageのマーケティングは主に2人で担当しており、もう1人も3月に中途採用で入社された方だったのですが、前任者は全員退職してしまい、オフィスは閉鎖され、フルリモートの環境でオンボーディングもほとんどない…という客観的に見たら超ハードモードな環境でのスタートとなりました。

元インサイドセールスとしてまず手をつけたこと

マーケターとして新米だったといえ、Marketo Engage自体がマーケティングのソリューションであり、SaaSをはじめ成長市場のマーケティングにおいてはMarketo Engageの提唱する「プロセスマネジメント」を愚直にやっていけば成果が出ることは分かっていました。また、インサイドセールスの活動も、プロセスマネジメントの考え方を基に活動を数値で管理しながらやっていました。

マーケティング施策も同様に、まずはインサイドセールスが目標を達成するために必要な数と質のリードを獲得しよう、という方針でやっていきました。

社内用語が多くて恐縮ですが、以下の図は、インサイドセールスが目標を達成するために、どれだけホットリード(厳密にはコールドではないリード)を創出するかという考え方を表したものです。AQLというのが、MAのスコアリングでアプローチ対象と認定されたリード(見込み客)を指すのですが、いかにこの数を増やすか、ということをまず考えています。

インサイドセールスのある組織のプロセスマネジメント

アドビのインサイドセールスチームでは、MBR(Monthly Business Review)という、毎月の活動の振り返りの場で活動数もチーム内で共有しています。アクティビティアポイントからの有効商談化率、着電からのアポイント率、着電率という形で数を逆算していけば、何件程度のリストが必要か、ということはメンバー全員の共通認識としてある程度出来上がっています。弊社のウェビナー資料から抜粋した図を参考に掲載します。

インサイドセールスのアクションプラン

ただ、リード(見込み客)のリストがどのようなものでもいいわけではありません。ここもインサイドセールス時代から、SEOソースのリードは商談化率が高く、広告経由のリードの商談化率が低い、といったものを数値化していたので、もっとwebサイトに注力した方がいいよな…みたいな仮説を立ててチャネル毎の戦略を立てることにしました。ご参考までに、以下の表はインサイドセールス時代の、とある四半期の私の担当エリアでのリードソース(リード獲得チャネル)毎の着電率、アポイント率、有効商談化率を出したものです。

リードソース毎の商談化率

おそらく、マーケティングのプロフェッショナルの方々は、より顧客の心理(パーセプション)に基づいたカスタマージャーニーを作成し、もっと緻密にコンテンツ計画を立てたりチャネル施策を考えたりされると思いますが、第一段階としては自社側からみたプロセスを基に、施策を検討していくことがよかったのかなと思っています。

時間が経つにつれ、徐々に出来ることを増やしていく

インサイドセールスとしてマーケターの方々とお話していた頃から、マーケターはかなり忙しそうだとは思っていましたが、いざ自分がやってみると本当に色々なことをやらないといけないことが分かりました。

前任の担当者がスーパーマーケターだったので、多くの施策が自動化されていたりデータがちゃんと入るようになっていたことと、グローバルのオペレーションチームがいたことで、比較的恵まれた環境ではありました。それでも、日々の業務では施策を考える以前に、例えば以下のようなことに時間がかかっていました(現在もかかっています)。

・ベンダーさまとの連携

・グローバルの担当者との連携(まず見つけるところから)

・SFAやMAに変なデータが入ったときの対処(インサイドセールスから突発的に言われる)

・SFAでのダッシュボードの構築

・各種マーケティング系のツールの管理(そもそも使い方も知らない)

・連携テクノロジー企業との協力関係維持

・見積書依頼や発注処理などの事務作業

・日々くる営業などの問い合わせ対応

ありがたいことに、調達や法務をはじめ、社内は優しい方ばかりで、分からないことは色々と教えてもらいながらでしたが、とはいえ、これらが積み重なってくると、戦略を考えたり、やりたい施策を一気にやろうと思っても難しいなあというのが正直なところでした。

そこで、ある程度時間を区切って、簡単にできて、かつインパクトのある部分から順に手をつけていくことにしました。

3月~ ウェビナーとMAオペレーション

3月からオフライン施策ができなくなったことで、BtoBマーケティングに一気にウェビナーの波がきたのは皆さまもご存知のことかと思います。弊社も例に漏れずこの波に乗りました。

セミナー登壇経験豊富なソリューション担当の方をはじめ、ウェビナーで話せる人を社内で見つけて、フルスロットルでやれるだけやってみました。大体2営業日に1回くらい、月12~3回くらいは開催していました。そうしていると、たまにバズる企画もあって、「ウェビナー開催のコツ」や「営業メール術」のウェビナーはメディアにも記事化してもらったりしました。

もう1つ、初めに手をつけたのが、MAを使った内部データの整理です。Marketo Engageのチームでは、APIでMarketo EngageとFORCASを連携してリード情報のリッチ化をしたり、リードのアサインの自動化を以前から行っていましたが、どうしても細かい部分の漏れが発生します。

特にMarketo EngageはMAの中でも機能が豊富で、インサイドセールスが活動しやすくなるように、「注目の出来事」というのをSFA上に表示させたり、リードのアサインを「Random Sample」というフローの機能を使って自動的に行ったりできます。こういった機能があるが故に、インサイドセールスからもっとオペレーションを改善してほしいという要望が出てきます。特に、インサイドセールスはリードのアサインが命で、これがルール通りにできていないと、都度手動で担当者変更をしないといけないのですが、これが本当に手間がかかります。

そのため、MAの運用を学びながら、インサイドセールスのメンバーからの意見も聞いて、プログラムを改善する、という地道な作業も継続的に行っていきました。とはいえ、一度プログラムを作ってしまえば、そこからは自動化できるので、MAを運用されている方々はコツコツとプログラムの改善をすることで、後で楽になるんじゃないでしょうか。

5月~ オンラインイベント出展とwebサイトの強化

ウェビナーの運営と内部オペレーションの改善に慣れてきたところで、次なる課題として「リードの量」「リードの質」問題が出てきました。

緊急事態宣言も出ていたので、当然インサイドセールスが架電しても電話は繋がりません。そのため、メール中心のアプローチに切り替えたことで、インサイドセールスの活動数は飛躍的に増加しました。その結果として起きたのが、テンプレート化されたメールを大量にお送りして、ご返信を頂いた方とのみコミュニケーションをとる、というものです。

そうすると、必然的にアポイント率が下がります。そうすると、もちろん新規リードが必要になるので、色々なイベントにスポンサーしてリードを獲得しようか、ということになりました。ここ数年は出展していなかった媒体のイベントにも出展したりと、色々と試行錯誤を繰り返してみました。

結論としては、イベント毎にアポイント取得率に5倍ほどの開きが出てしまい、すぐに成果が出る媒体と、フォローアップに苦戦する媒体に分かれてしまいました。オフラインの時代から継続的に出展していた媒体は成果が出ていた出ていたので、過去のデータを把握して施策を実施していくことは大事だなと思いました。

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Marketo Engageのコンサルタントに教えてもらった、Revenue Explorerというレポート機能で、アポイントや有効商談への貢献度を把握する日々でした。

リードをたくさん獲得したら、あとはインサイドセールスに任せる、というわけではなく、マーケティングとしてもナーチャリングしていくことで中長期的な成果が出てきます。

BtoBマーケティングにおけるナーチャリングは、基本的にはメールです。MAの細かな機能は各社異なりますが、Marketo Engageは以下のようなエンゲージメントプログラムと呼ばれる機能を使って、業界や職種、また行動スコアなどによってセグメントを分けた定期メール配信を行うことができます。

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まずは、リードを大量に集めて、メールでナーチャリングをして、開封やクリックして頂いた方には優先的にご連絡をする、という王道の施策を愚直に行うことにしました。

しかしながら、肝心のコンテンツが全く足りません。外資系企業のマーケティングチームは基本的に少人数で、過去の担当者もwebサイトのコンテンツになかなか手がつけられていなかったため、どんどん追加する必要が出てきました。

幸いなことに、グローバルには英語のebookが多数あったので、ピックアップしてダウンロード用コンテンツを拡充したり、BtoBマーケティングを支援されているパートナー企業が何社かいらっしゃったので、お願いしてブログを寄稿してもらったりしました。

1からコンテンツを企画するのはなかなか大変だと思います。最初は営業資料の体裁を整えて資料にしたり、予算に余裕があれば、マーケティングコンサルに入ってもらってコンテンツの企画を一緒に考えてもらったり、ということを地道にしていくとよいのかなと思います。

作成したコンテンツ

8月~ SEO記事の拡充とweb広告のチューニング

先ほども記載したように、リードソース(獲得チャネル)は非常に重要です。同じwebリードであっても、能動的に検索してwebサイトに辿り着いて頂いたSEO経由のリードからのアポイント率と、web広告経由のリードのアポイント率は3~4倍の開きがあります。

イベント系のリードはアポイント取得率は低いものの、リード獲得数が多いので、ナーチャリング施策で対応するとして、どうしても以下の2つは避けて通れないということで、手をつけることにしました。

①アポイント率の最も高いSEOを強化して能動的な見込み客と接点を持つ

②高騰しているweb広告のCPAを下げて獲得リード数を増やし、結果的にアポイント数を増やす

SEOソースのリードは、明らかに温度感が違います。そのため、インサイドセールス時代から、検索キーワードの洗い出しや、それに基づいた記事ライティングをしたりしていましたが、今はSEOコンサルに入ってもらっています。

SEOコンサルには、以下のどこまでお願いするか確認した方がよいです。

・キーワードレポート(検索順位)

・アクセス解析(とヒートマップも活用した導線改善)

・テクニカル面の改善案

・記事制作

私は現在、上記の4つを包括的にお願いしており、成果も出始めてとても助かっているのですが、一方でSEOコンサルの限界を感じる部分もあります。それは、キーワード選定です。各ベンダーさまはフレームワークをお持ちなので、ビッグキーワードなどはカバーされるのですが、新たなキーワードを選んでくるといった観点では自社の人間と同様の感覚ではいきません。

例えば、一見キーワードとしてはMAとは親和性の低そうな「カスタマーサクセス」という言葉があります。しかしながら、実はMarketo Engageのユーザーさまの間ではカスタマーサクセス組織の立ち上げが進み、その領域でのMA活用が進んでいます。これから立ち上げを検討されている方や、今ご担当されている方に向けた記事を制作することで、今はMAとの親和性が高くなくても、近い将来は検討して頂く可能性のある方と接点を持つことができるようになると思っています。

もう1つの点、web広告の運用は、弊社の場合は代理店の方にお任せしています。運用が難しく、深入りできていないが故に、CPAが上がってきてもすぐ手を打てなかったり、結構ブラックボックスになっているのが多い領域です。ここは良い代理店を探して、あとは信じるしかない部分が大きいですが、唯一自社でコントロールできるのがLPです。

Marketo Engageの機能を使ってLPを作成しているので、細かな修正はできるものの、複雑なものは作れません。

とはいえ、

①紫背景の暗めだったものを白背景に切り替える

②中身のサンプル写真を掲載する

だけで、LPのコンバージョン率が30~50%向上したものが複数できました。

11月~現在 社内アラート追加と独自コンテンツ企画

異動して8ヶ月ほどで、現在行っている一通りの施策には慣れ、成果も安定してきました。ただ、営業やマーケティングというのは、立ち止まると置いていかれるものです。

ウェビナーの波が去り、さらに競合企業含めた各社のメール施策やweb広告の強化によって、各施策の成果が薄れてきているのも感じています。

そこで今は、改めてインサイドセールスとの連携の強化が必要だと思い、社内アラートの強化に取り組んでいます。元々5~6用意していたものを、今は倍以上に増やして、成果の出るものだけを残すように調整しています。

また、引きのいいコンテンツ作りにも取り組んでいます。なかなか1人では施策が思いつかないものですが、Marketo Engageのユーザーを中心としたスタートアップにはマーケティング担当が多く在籍され、色々なアイデアで施策を行われている企業も多いので、そういった企業の施策を参考に、自社にも取り入れるべく企画を進めています。

10ヶ月間のまとめ

MAベンダーのマーケターであれば、ツールを使いこなして圧倒的な成果を上げる、というのをご想像される方も多いかもしれませんが、現実にはBtoBマーケティングの基本を愚直にやって、なんとか前年比トントンくらいの数字を出せているという状況だったりします。

とはいえ、2人でやっているもう1名の担当はカスタマーマーケティングも兼任しており、実質1.5名体制でここまで多くの施策を回すことができたのは、MAを中心としたオペレーションを前任者やグローバルのチームが整備してくれているからだなあと感じています。

ここでは書ききれなかった内容もあります。詳細はウェビナー動画や資料としても公開してます。もしよかったら見に来てください。

まだまだ新米の若造なので、皆さまからのアドバイスやご意見も是非お待ちしております。色々と情報交換させてもらえると嬉しいので、今後とも是非よろしくお願いします。

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