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連載小説『ヰタ・セクスアリス・セーネム』四章 レンタル彼女(ニ)

 西本親子が食事を終えて、お母さんは婦人雑誌に夢中で、西本はスマホをみているていで、コーヒーをゆっくり飲んでいる。西本には詮索せんさくするつもりもないが、ますます気になってきた。となりに聞き耳を立てて会話を聞く。
 男性が話す内容は、先日の健診の結果がどうこう、肥満だとかBMIを挙げて数値のわるさ加減や、普段の生活習慣の乱れを笑い話にしている。よくある自虐ネタだ。それに一応彼女も付きあって笑い声も立てたりしている。
 一方で女性が、〇〇フェアーに間にあってよかったね、などと言っているので、このあと二人でその場所へ行く予定なのかもしれない。女性は穏やかでにこやかな印象。男性は彼女のペースに合わせている感じ。

「オレな、その時ピンときたで。これは『レンタル彼女』に違いない」と西本が仮説を挙げた。「あとで調べたろと思うたときには、お隣の食事もひととおり終わっててな、食後の会話の切れ目に女性が『そろそろ出ようか』て言うたんや。
「女性主導みたいやな」と順平は感想を言った。
「けどな、帰りは男が先に立って行って会計しよったわ。女性が少し間をあけてそのあとに続いて行った。オレの目の前を女の子が通るときに、お顔を観察しょうとしたけど、オレの反対側見ながら横切ってん。そやからオレからは顔がよう見えんかってん」悔しそうに西本が言う。
「おまえのダークエネルギーが女の子に伝わったんや。そら警戒するのが当たり前やろ」と順平が揶揄していった。

 順平はここまでの西本の話を聞いて、彼の想像がまんざら外れてもいないのでなないかと思った。もう少し知りたいという興味がわいてきた。
 ただ、この手の話に首を突っ込むのはいかがなものか、という順平の自我のひとりが言う。一方で、調べるだけならいいじゃないか。それも社会勉強だろう、という別の自我がささやいてくる。

 キャバクラについて先日西本とまとめたように、今回の問題を二人で掘り下げてみるのも一興かもしれない、そう順平は思って西本の方を向いた。
 



 

きのこ さんの画像をお借りしました。

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