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連載小説『ヰタ・セクスアリス・セーネム』四章 レンタル彼女(五)

「お前はどう思うた?結局レンタル彼女とジイってどうなん?」という順平の問に西本が答えた。
「オレが思うに、若い男性がレンカノのシステムで、恋愛やら婚活に必要なノウハウを習うたり、デート気分を味わいたい欲求を満たしたりするのが、まあ本来の趣旨で、健全っちゃあ健全な気がする」西本が続けて「ジイの場合は、キャバ嬢と比べた場合のメリットで選んでるんとちゃうかな。よりシロウトっぽい、うぶな感じの娘との出会いがほしいとか。同伴やら来店の誘いがしつこいキャバ嬢に嫌気がさしたとか」
「なるほど、そんな面があるかもしれんな。よっしゃ、前みたいにレポートにまとめよか。ジイとレンカノってぶっちゃけどうなん?について」 


レンタル彼女とジイに関する一考察

レポートbyた・にし(田所順平&西本健一)

 レンタル彼女(以下、カノという)とジイの相性を、キャバ嬢との比較で考えてみた。
 なぜその娘がカノになったのか。理想の相手を探しているということであれば、ジイ相手は需要と供給の要件不一致だ。しかし、マネー目当てということであれば、キャバ嬢の場合と同じく、お互いの不足を補い合う、<win win>の関係を築けるのではないか。
 ジイの方は、もっぱらカノとふれあうことで寂しいこころに、いっときでも慰めや癒しを得ることができるだろう。現役世代の生々しさやギラギラ感も卒業して、半分枯れたジイは、カノにとっても息抜き的存在になれそう。
 ただ、ジイにとってデートプランの立案などの煩雑さを考えればキャバ嬢よりもハードルか高いかも知れない。オプション料金などの出費もそうだ。
 リスクをどう回避するかも重要だ。遊園地のジェットコースターで首の筋が違ったり、若い世代ならだれでも知っているキャラクターの名前がわからなかったり、どうしよう?
 デート中に知人に出会うリスクも大きい。カノのことを聞かれてどう返事するか。本当のことは言いにくいから「オレのめいや」とか「飲み屋の娘や」とか言ったりするか。
 カノとのふれあいは、キャバ嬢の場合と同様、ジイのからだと心に好影響をもたらしそうだ。カノがかるーく「ジイ、たのしい!」と言ったときに、ジイの方では心拍が上がり、自律神経の亢進こうしんが上半身はもとより特に下半身、なかんずく下腹部近辺にまで律動が伝わっていく。
 ジイの方でもそれに応えて「カノ、たのしい!」と思わず口をついて出る。そしてジイは自分の発した言葉にも自ら反応するのだ。
 ジイがリスクへの対応と分限さえ誤らなければ、キャバ嬢と同様、幸せな出会いと言いうるだろう。


 和美が、リビングでソファーにもたれかかり、爆睡しているふたりの男を見てデジャブかと思った。いつかと同じようにテーブルには、夕飯の皿とビール瓶数本がカラになっていた。
 少年のようなふたりの寝顔を見て和美は思った。ジイ、進歩がないね。
 知らぬがほとけとはこのことか。和美は順平たちの活動の中身をまだ知らない。

 

 

 

 
のびつま さんの画像をお借りしました。

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