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憲政史上最悪の宰相・安保晋五③終わりのはじまり

「…毛利さん」 都内の自宅マンションに入ろうとした毛利正義は呼び止められた。毛利が振り向くとレクサスからひとりの男が降り立った。週刊文藝の新屋編集長だった。 「こんな遅くに、何の御用でしょうか」 毛利は、右手首にはめたグランドセイコーを確認した…午後11時半。 「今週、黒沢検事長のネタを打ちます」 「ネタは?」 「検察庁詰め記者との常習的な賭け麻雀です」 「!!!」 煙草を1本振りだして口に咥えたが、路上喫煙禁止エリアであることを思い出し、毛利は手にしたデュポンで点火するのは

    • 憲政史上最悪の宰相・安保晋五②司法府支配

      毛利正義は、愕然とした…ついに、この男はここまで堕ちたか。 安保晋五は、2012年末、民自党党首として衆議院議員選挙に臨み、政権を奪還し二度目の総理の座についていた。 それから約7年。 世界中を恐怖が支配していた。コロンウィルスの蔓延である。それは、日本においても例外ではなかった。 アメリカ、ヨーロッパ諸国、中国等には及ばないまでも、感染者数1万5000名、死者800名を数えていた。 そんな折も折、安保晋五が手をつけたのが、検察庁法改正だった。 この非常時に、またしても自己

      • 憲政史上最悪の宰相・安保晋五①煉獄前夜

        次期総理候補と目されていたひとりの大物政治家がいま、弱者やマイノリティに捧げた人生の幕を下ろそうとしていた。 安保晋一郎が、第2私設秘書の毛利正義を骨と皮だけになった右手で、横臥したまま呼び寄せた。毛利は、晋一郎の枕元までにじり寄ると、その口許に耳を近づけた。 「…いいか、決して、決して晋五にわしの跡を継がせるな…残念ながら、あいつには人としての情がない。政治家には向かん!…あいつが政治家になり、万一にも権力を握るようなことがあれば、必ず国民が不幸になる…頼んだぞ、毛利

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