キャシー、号泣
オーストラリアでの留学生活も残すところあと2日。残るミッションは「帰国日、集合場所へ遅れずに行く」のみとなった。
これまで、僕は多種多様なミッションを乗り越えてきた。本題に入る前にその一部をご紹介したい。
・ヨーロッパ系の美女、初対面でまさかの日本語ペラペラ。(関西から来た高校生一同、「なんでやねん!」)
・日本語字幕なしの英語の映画を2時間みる。(内容が全然分からん!)
・お弁当がサンドイッチとりんごそのまま一個。(包丁は常備してない! ってか、剥き方知らんよ!)
一部ではあるが、このようなミッション?をなんとかクリアして最終日までこぎついた僕だったが、最終日のミッションが最も不安に思っていた。
それが、「帰国日、集合場所へ遅れずに行く」こと。
これにはわかりやすい不安材料があった。
それは、ぼくのホストマザー、キャシーは朝がめちゃくちゃ弱いこと。
さかのぼること1日目、僕ら日本の高校生に課せられたミッション「ホストファミリーに授業開始時間をしっかり伝えて、明日の1時間目は遅刻しないように!」は、キャシーの寝坊によって、あっさりと破られてしまう。そこから毎日、ホストファザーがお休みで送ってくれる日以外は決まって、教室に入るなり「あぼかど too late!!!」と先生に言われる日々であった。(そのおかげで先生たちとはすぐに仲良くなれた! キャシーありがとう!?)
帰国日前日、付き添いの山口先生は僕に口を酸っぱくして言った。「明日は、ほんと遅れちゃダメだからね!? 全力で起こすんだよ!? ほんと帰れなくなるからね!? 20分以上遅れたら、ほんとに置いていくからね!?」
”20ぷん以上遅れたらほんとに置いていくからね!?” から分かるように先生も、僕が時間通りに来るのは諦めていた。それも変な話だが、その時は「任せてください!」と意気揚々に答えた。「頼むぞ」と言って、先生は僕の背中を叩いた。
***
集合時間は8:00。
家からそこまでだいたい30分強。
現在、7:30。キャシー、就寝中。
そろそろ焦るあぼかど。
僕は6:00に目が覚めて、7:00にはパッキング等の用意も終わっていた。そこからはベッドルーム横の廊下を大きめの足音で歩いたり、冷蔵を割と大袈裟に閉めたり、部屋のドアをうるさめに閉めたりしたが、ベッドルームのドアは未だ開かない。
「ベッドルームに入って、起こせばいいじゃん?」という声が聞こえてきそうだが(これを書いていて僕もそう思う)、当時の僕はこっちに来る前に予習で海外ドラマを見すぎたこともあって、外国のベッドルームは神聖な場所だと強く思っていた。
それでも携帯の時計が7:40になった時、「もう、無理!」と思い、ドアノブを持った瞬間、部屋の中から激しい物音が聞こえた。
「ふぅーーーー」と胸をなでおろした。
1分もせず、キャシーは出てきて、「あぼかど !!!! Go Go Go !!!!」と言って、玄関に向かってきた。
この時、「よし、日本に帰れる!」と確信した。
学校の前に着くと、すでにバスがやってきていて、その周りには山口先生と各々のホストファミリーだけで、みんなは既にバスに乗っていた。
僕は慌てて車を出る。キャリーを引きずりながらバスまで走る。「先生ー!間に合いましたー!」と言って、バスに乗り込もうとした時、「お前、最後に感謝伝えたか?」と山口先生に目を見て言われた僕は「あ、伝えてない!」と車の方を振り返る。そこには誰もいない。
キャシーは目の前にいた。
彼女は文字通り、号泣していた。
「えーーー!切り替え早すぎやろ!」と関西弁丸出しで突っ込んだ僕の頭を叩きながら山口先生は「あほか!」と言って、ぼくの背中を軽くおした。
ぼくとキャシーは熱烈なハグをした。それは、空港で離れるカップルぐらいしかしないような(それもドラマで)ハグだった。
その時、こう強く思った。
山口先生、キャシーありがとう!(キャシーが日本語知らなくて、ほんと良かったー。)
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