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ken_kohira
筒井康隆「万延元年のラグビー」
書き出しは
水戸藩の脱士二十人が、集合場所の愛宕山からおりて、外桜田までやってきたのは朝八時ごろである。雪はまだ降り続けていた。
小説に少しでも詳しい読者なら「フットボール」の方を思い出すだろうし、そうでもないな、という皆さまにおいては真剣な歴史小説を予期した事と思われる。
半吉は濠沿いに川岸を南に走った。「ええい、しまったしまった。こうと知っていたらウォーター・ポロの練習もさせておくんだった」
半吉と並んで駈けながら、重夫が笑った。「今は千八百六十年だ。ウォーター・ポロはまだ、ない」
残念なお知らせがある。著者は筒井康隆である。
ということでこれは歴史小説の皮をかぶったくそみそお笑い小説なのだが、最後の
もはや眼鼻のありかもさだかでない、赤剥けのその首が、半吉の眼の前の路上に落ちてきて、ぐしゃりと潰れた瞬間、半吉には首が、にたにたと笑ったように見えた。首が、このから騒ぎを笑っているのだ。半吉は確信を持ってそう思った。
の描写に至っては、もはや笑い話を超えている。
しかしこの乾いた―暴力性につながる笑いもまた筒井康隆氏の魅力の一つだと個人的に思うが、読者の皆さんはどうだろうか。
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