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空中もお酒も怖い

アブセーラー。
空中でロープを伝って窓拭きをしている人。
この職業の名前も今調べて知った。

見つけると、
立ち止まり、見上げてついつい見てしまう。

怖くないのだろうか。
浮遊感で手が震えないのだろうか。

お風呂の水切りみたいなハケを器用に行ったり来たり。

強風が来たらどうなるのだろう。
不備があってロープが切れたらどうするのだろう。

1ビル1命。
朝から昼から命をかけている仕事と思う。

まあ、本当にこれはわたしの主観です。
高いところが得意な人もいるのだろう。

元々わたしもそうだった。
遊園地にある空中ブランコなんていい例だ。
大好きだった。
景色を見ながら揺られ、程よい浮遊感。
本当に空を飛んでるみたいで。
宇宙に近づいた気がして。
ジェットコースターより好きだった。
過去形である。

大学生になり、富士急へ行った。
大学1年生19歳。
久しぶりに空中ブランコに乗った。
『鉄骨番長』
おそらく、自分史上1番高いスリル満点の空中ブランコ。
隣で吐きそうになっている友達に爆笑しながら
楽しんだ。
本当に楽しかった。

大学2年生20歳。
大学の友達とは、年に一回の富士急が恒例になっていた。
やはり、空中ブランコへ一目散。腰のベルトを締める。
上がる。進む。回る。上がる、上がる。

待って。

怖い。

宙ぶらりん。

頼るものが両サイドの細い鉄の棒と腰のくたびれたベルト。
それだけなんて客観的に考えたら危なすぎる。
冷静に泣きそう。

手が震え、足はぶらぶら。

急に圧迫感に襲われた。
途中で降りるとか、逃げ出すとか、
何も手段がない。
このまま気絶して死ぬかと思った。

その時は目を最後まで瞑って過ごした。
なんとか耐えた。

降りてからも座ってない足。
(座ってないとはなんだ。立っているのだから座ってはいない。けどこの表現しか浮かばない。)

そのあと、『トンデミーナ』へ移動する友達を横目にベンチで足を座らせた。

20歳が境目だった。

20歳からお酒が飲めるようになり、
20歳から空中ブランコが乗れなくなった。

なんの代償なんだ。

私生活にはなんの支障もない。
むしろお酒が飲めることになり、今は大変な酒狂い人生になっているので、結果はマイナスなのだが。

と、まあ。
アブセーラーを見て、空中ブランコの楽しさを失ったことを思い出した。

そして、今お酒のせいで、
体脂肪が大変な数値になってることと、
昨日の深夜にラーメンを食べたことと、
今日も飲み会だということに気づき、矛盾で頭が割れそうになった。

いつもアブセーラーを見つけるのは
会社の行きしな。

仕事前に現実逃避のため、少々空想が広がる傾向がある。
今回もその現象の一部だ。

アブセーラーを見て、
お酒で食生活が腐ってる現実に話が飛んだ。

飛んではいない。
私は空中が苦手だ、地に足をついて今日も行ってきます。

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