はじまりのオトケシキ
みなとまちのうたプロジェクト
鍵盤楽器と声を用いたアンサンブルユニットのmica+hachi。「みなとまちのうた」をテーマにした彼女たちの楽曲制作過程を音と文字で綴ります。
聞き手は、港まちづくり協議会の古橋、アッセンブリッジ・ナゴヤ(以下:アッセンブリッジ)音楽プログラムディレクターの岩田、アシスタントの了徳寺でお送りします。
第1回:はじまりのオトケシキ
みなとまちのうたプロジェクトのきっかけとなったのが、2019年3月9日に開催されたコンサート「音景色ーオトケシキー」(mica+hachiにクラリネット奏者の岡林和歌を加えた3名でのコンサートを開催した)。港まちのお寺という風変わりな会場に、たくさんの方々がにぎやかに集いました。音が「空間」を作り、「まち」や「ひと」を繋いでゆくことで、一つの景色が生まれる…。「オトケシキ」のコンセプトの背景にあった不思議な「まち」や「ひと」のつながりとは?
誰とはじめるのか
岩田
昨年の「音景色ーオトケシキー」コンサートを改めてまとめるということで今回の音源を編集していただいたんですが、最初はhachiさんが作業を始められたんですよね。確か、映像もつけてみたと聞きました。
hachi
はい。映像なしで音だけでもつのかな?というのが私の最初の印象だったので。映像をつけたらどうなるかなとiMovieで遊んでたんですよね。演奏に対して説明の文章を入れたりとかして…。
mica
で、それを見せてもらったときに視覚的な、つまり映像から入ってくる情報が多かったので、YouTubeぽいなぁって…。それを引き取って、なんとなく私の方でもやってみようということで、作業を始めました。
hachi
でもmicaちゃんの音の編集を聞いたら、映像は全然いらなかったなって。
古橋
面白いですね。おそらく「遊んで」たというのは“探っていた”ということで。まず手を動かしてみるというか、それを始めてみることで、動き始めることってありますよね。
mica
プロセスの最初の一手という意味では、確かにその通りでしたね。
古橋
今回の「みなとまちのうた制作プロジェクト」も、ちょっと似てますよね。まずは始めてしまって、それから起きる出来事を見つめながら、方向性を探っていくというか…。最初は、キャスティングからでしたよね。
岩田
ええ。最初は古橋さんからお話しがあって、アッセンブリッジ の音楽プログラムにmicaさんをお誘いすると面白そうということで、micaさんに打診して、hachiさんともつながっていって…。
mica
まちづくり関連の方からのお声かけでしたので、練馬のまちでやっている活動とかを面白いと思ってくれてるのかしら?なんて。直接お会いしてみたら、やはり単純に愛知出身の音楽家みたいなことだけではない関心を向けてくださっていたのが、本当に嬉しくって。
古橋
アッセンブリッジのコンセプトは、音楽とアートを通して人々に橋をかけていくということなんですが、再生芸術であるクラシック音楽と、何もないようなところにコンセプトを立ちあげて新たな表現を試みる現代アートでは、クリエイティブの手法が全然違っている。にも関わらず、一緒に何かをしていこうとすることの難しさが、現場ではずっと課題になっているんです。
僕は、直感的にスタッフィングというかキャスティングが大事だなぁと。「誰と何をするか」の「誰と」の部分ですよね。で、micaさんのご主人とお仕事させていただいたときに、偶然micaさんのことも知って、面白そうだなぁと。で、偶然にも岩田さんと同じ大学だったので、まずその偶然に驚いて思わず岩田さんに聞いちゃった。
岩田
実際、私の妹もピアノだし、共通の知人もいて、すぐに、あーこの人だ!って感じでした。過去のお仕事を拝見すると、音楽だけではない世界観をお持ちの方だし、いろいろされてて凄いなぁと。実際にお会いしたらとても素敵な方で…刺激的なコーヒータイムでした。
mica
私は逆にクラシックの世界でご活躍されている岩田さんを尊敬しています。私には、やりきれなかった方向というか…。実際、私は純粋なクラシックとは別の世界に興味が行ってしまった人間なので。あのコーヒータイムというか、直接お話できたときのことは、私もよく覚えています。そのとき制作していた、SLOW LABELとのパフォーマンス活動にも興味を持っていただけたことも、うれしかった。
写真左から:mica ,岩田,長谷川,岡林 (2019年3月のオトケシキ終演後)
港まちは母の生まれたまちだった
古橋
hachiさんとは、これまでに活動もご一緒にされていた?
mica
はい、何度かご一緒させていただいていました。その度に思っていたんですが、hachiさんは本当にかゆいところに手が届くアシストをしてくれる。私1人じゃ対応しきれない大人数のワークショップのときでも、現場ですぐに私の意思を汲み取って、支えてくれるhachiさんの存在に何度も助けてもらいました。hachiさんのアシストは、なんというかビヨンドアシスト(笑)。凄く心強いんですよね。
ご自身もクラシックの学校を出られているという共通項もあり、今回のお誘いには適任だなぁと。私だけでは足りない部分も、2人でやると演奏ごと膨らみますし。だから「他に誰か一緒にやりたい人はいますか?」と聞かれたときに、hachiさん以外は思い浮かばなかったんです。それに、ご両親が愛知県出身で、hachiさんも愛知への接点を探っていた時だったんですよね。
hachi
私の両親は愛知県の出身ですが、転勤族だったので私自身は愛知県に住んだことがなく、お盆とかお正月に行くおばあちゃんちっていうのが愛知県でした。
最終的に両親は故郷に戻りましたが、私自身はそこに友達もいないし、街のこともよく知らなくて。でも実家の台所に立っていたあるとき、窓から吹いてきた心地よい風に、ふと「音楽って東京じゃなくてもどこでもできるな〜」て思った瞬間があって。そのときから、気持ちが変わってきたんです。
ときを同じくして、愛知での仕事を引き受けたことがあり、もっと縁を作りたいと言う気持ちが出てきました。そうして知り合いも増え、音楽の仲間もできてきたことが、すごく楽しくて。あーいい感じで点と点がつながっていくなぁと。そこに今回、またmicaちゃんから声をかけてもらってうれしかった。
風に導かれたようにして港まちと繋がったら、さらにそこは母の生まれ育った街だった。もう、本当にびっくりして(笑)。そんなご縁もあって、このプロジェクトは私自身とても楽しませてもらってます。
古橋
意味のある偶然の一致。それに気づくことの始まりは直感だったり、面白そうだという好奇心だったりしますよね。
mica
私も大学から東京に出てるんですけど、それまでは音楽高校でもなかったので、愛知には音楽的なつながりって、全くゼロ。大学を卒業後、アメリカで10年近く過ごして、戻ってきたのも東京‥。なので、音楽的な接点が本当に愛知になく。ただ両親がずっと、愛知のクラシック業界にいた、というのはあって。だから愛知県は親の場所、みたいなところがすごくあったんですよね。それが、私個人に興味を持ってくれた方が声をかけてくださった、自分のきっかけで戻って来れたっていうのがすごく感動的なことで、岩田さんとも再会できたということもすごく嬉しかった。もとを返せば、夫きっかけだったのかもしれないですけど、それも含めてすごい感慨深いなぁと思っていて。しかも音楽の一筋縄じゃないポイントに目を置いてもらっていたってことが、とても入りやすかったです。
まちづくりと音楽はどうつながるのか
古橋
面白いですね。始まりは、率直に会ってみただけ。で、次に「オトケシキ 」をやってみた。
mica
最初のコーヒータイムのときに、古橋さんから、年度末までまだ時間があるから「なんかやりましょう!何がやりたいですか?」みたいな振り方をされて…。。「わぁ!すごくざっくりした振り方(笑)」って。でも結果的に、私がやってきた音楽をクラシックだけじゃない視点で表現しようとすると、どんなやり方があるのかなとすごく考える機会にもなって。
私、コンセプトを考えるところがすごく好きなので、まちづくりと音楽がどうやったらつながっていくかなぁって、個人的な関心から考え始めて。
古橋
うんうん。
mica
既に数年前に「オトケシキ 」というコンセプトの原型のような音楽、“一つのコンサートを聴いてくれた人たちの中にそれぞれの景色が浮かんでくれるといい”という考えで、コンサートをしてるんです、mica+hachiで。今回も、その「オトケシキ 」というコンセプトであれば、街なり人なり、きっと広がっていくだろうなぁというのがあって…なぜか?というと…そこは、それこそフィーリングですね。それに触れて、hachiさんのインスピレーションも広がるだろうなぁとか。そんなことを想いながら相談した記憶があります。
hachi
micaちゃんとの音楽って、私が普段やっている音楽とちょっと違う感覚があるんです。…なんて言ったらいいだろう?何かと交わる、にじむ…。その何かと音楽との相乗効果というか。文化だったり「ひと」とか「まち」、そういう関わりから音楽を届けることが多い。mica+hachiでいろんな場所でやってきましたが、京都でのコンサートがはじめての「オトケシキ 」だったかな?
mica
そうです。京都でした。京都市立芸術大学の先生から、「音楽を介してまちと人をつなげる」という催しの一端に誘われたんですよね。
インスピレーションを使って届ける音楽
hachi
micaちゃんとの音楽は、音楽以外にも頭を使って届けるプロジェクトが多いです。ちゃんとそこに腑に落ちるコンセプトが見つからないと進めないというか。楽しい曲を並べるだけじゃなくて、訴えかける何かみたいなもの…。それを受け取った人が、いろいろ考えたり感じたりできるような出し方をしていかなくちゃというか。
だから難しいといえば毎回難しい。だけどその腑に落ちるところをクリアしたときはすごく楽しいし、返ってくる反応から育つものがあるというか。だからmica+hachiのセッションを重ねる度に、自分たちのできることが増えていっているよね(笑)。
mica
確かに(笑)。最初mica+hachiで始めたころは、単純に一緒に音楽やろうよぐらいだったんです。でもだんだんと私に飛んでくるプロジェクトのせいもあり、コンセプトから目を離せなくなった。さらに、hachiさんがそれにどんどん応えてくれる(笑)。それでだんだんハードルが上がっていって、今やそれがmica+hachiのカラーなのかもねって、自覚するようなここ最近、というか。
京都での「オトケシキ 」は、お客さんが高齢者のみだったんですよね。
hachi
そうそう。高齢者の方たちをいかに楽しませることができるかなって考えた時に、皆さんが好んでくれそうな音楽を届けるだけじゃなて、”mica+hachiらしさ”をちゃんと出せるようにしようって。そこを考え始めると結構時間がかかるんですけど、その一つ一つがとても有意義だし、その積み重ねが今に至っているんじゃないかと思います。今回の「オトケシキ 」にもそれは反映されていますし、「みなとまちのうたプロジェクト」でも、そこを揉んでるんだと思います。
岩田
コンセプトを大事にしている。そこに核があるからこそライブの時もその反応を共有できるみたいなことですかね。
コンセプトに音楽を乗せる
mica
コンセプトありきで私たちが変幻するので、コンサート自体のカラーも結構変わってくるのが特色になってますね。それを強みにしなくちゃと思うようにもなってきました。
一番最近mica+hachiでやったのは「音とにじむ」。ちひろ美術館・東京でのコンサートです。いわさきちひろさんの絵画の手法に「にじみ」という水彩技法があって、それを受けて演者も聴衆も含めて「音・空間・人」が、にじんでいくようなコンサートがいいな、と思いつきました。水彩の色ってポタッと紙に落とした時に、ふわーってにじむ。それを、コンサートで体感できないかなぁって思ったところから始めて。
せっかく美術館でのコンサートだから、視覚的な演出にも挑戦してみたくなり。最初は演者が真っ白な服で登場して、コンサートの途中で即興の時間を設けて。美術担当の人が各々の演者の服にもリアルタイムで色を付けていく。コンサート後半になると真っ白な服が目の前でカラフルになっていくので、聴いてくださる方たちにとっても、見た目が華やかになるじゃないですか。だから曲もカラフルになっていくって感じで。その「にじみ」をキーワードにして、みんなが曲を選んだり…。
古橋
コンセプトベースドの音楽。おもしろいですよね。僕らには、お二人と何かをやってみたいという直感はありましたが、その何かをあの当時に、はっきりと掴んでいたわけではなかったです。でも、「オトケシキ 」を拝見して、その何かをもう少し見てみたいという期待感はより高まったというのがありました。
『音とにじむ』コンサート:ちひろ美術館東京より
コミュニケーションをとる楽しさ
岩田
冒頭で、愛知との繋がりなおしを語っていただきましたが、あの「オトケシキ 」、あのコンサートから何かが始まったんじゃないかしら?って想いが私にもあって…。それが何かってことは、今はまだ言語化ができないんですけど…。でも、なんというか、もう少しこのままここに滞在していただいたらどうかしら?みたいな。滞在っていうのは、もちろん気持ちを置き続けていただくという意味です。そしたら何かが変わるかなぁって…。だから、本当に逆に制限がなさすぎるほどのフレームではあったんですけど、お二人にはこの港まちを題材にした楽曲制作をお願いしてみようと思ったんです。
mica
なるほど。私は、今回の音源を制作するにあたって、もう一度、「オトケシキ 」を聴きなおしてみて、「あ〜私は皆さんと近くにいるよ、というような気持ちで名古屋弁を使いたかったんだなぁ」と(笑)。それが自然に出ていたっていうのは発見でしたね。アメリカでも東京でもMC(演奏合間のトーク進行)をしますけど、故郷の空気感に図らずも自分が行ってしまったのが嬉しかった。そういうノリ、ずっと出したかったんだなぁと。故郷っぽさに対してのニヤニヤしちゃう感じ。自分が知っている場所を誰かと共有できるって、こんなに嬉しいんだって気持ちがすごく出たなぁと。特に皆さんとコールアンドレスポンス(呼びかけと応答のこと)をしたときですね。
岩田
それは自分でも割と予期せぬ気持ちだった?
mica
自然と出ちゃった。hachiさんはまたちょっと違うのかもしれないけど。
hachi
そうですね、名古屋弁は出ないな(笑)。愛知は母の故郷でとても縁があるんですけど、私はそこに住んでいたわけではないので。でも、私は、何でも目の前のものを楽しむことが得意で、こんなことできるかなあんなことできるかなって考えるのが大好き。
だから、ライブしながらmicaちゃんからインスピレーションを受けて、皆さんの感じ方にもすごく感化されていました。故郷かどうかは関係なく、コミュニケーションを取る楽しさみたいなものを感じさせていただいてます。
この感覚が、これを聴いてくれる人、読んでくれる人にも伝わるといいなと思っていて。
古橋
「オトケシキ 」には、いつものアッセンブリッジや港まちづくり協議会では見られないような方々がたくさんお見えになってましたよね。
mica
とても和やかな雰囲気だったなと思います。
hachi
でも始まる前は、誰が来るのかもわからない。お客さんが来てくれるのかもわからない。
こっちも向こうも何やるんだろう、どうなるんだろうみたいな(笑)。
mica
だからその中でよくこんなに集めてくださったなーって思ったんです。岩田さんすごいなぁ。
岩田
いやいや早川会長さん(学区の会長でもあり、hachiさんのお母さんの小学校時代の同級生ということが今回判明!!)とか、hachiさんのお母さんとかのおかげじゃないかしら?
hachi
でも、お互い初めて同士の方々もいたはずなのに、とても温かい雰囲気が生まれていたよね。
mica
そうだよね。あれがもう少し硬い雰囲気だったら、あんなにレスポンスもしてくれなかっただろうから。
岩田
お二人のお母さんとか、名古屋のお友達の方とかもいらっしゃってたのかな。あとはまち協の関連であるとか、いろんな世代の方々がミックスされていた感じがありました。「どこから聞きつけていらっしゃったのかなぁ〜」みたいな人もいたので、どういう風に集まったのか私たちもきちんとわかっていないんですけど、もともとすごい聞きたいって言う気持ちがあるような人たちが多かったような印象でした。そこにつながりがあると、気持ちが最初から開いた状態で来てもらえるのはすごくありがたいですよね。
その景色がまちをつくっている
mica
みんなで一つの景色をというより、それぞれがそれぞれの日常の中で開く窓というか、「オトケシキ 」を聴きながら、ご自分で浮かべてみたい景色にフォーカスして欲しいというようなところがあるのかもしれないですね。
こちらからこれを聞いて欲しい、感じて欲しい、というのはとくにありませんでした。その人が自然と何か感じてくれたのなら、たぶんそれは全部正解なんだと思います。
古橋
「ただ歌を届けたいだけじゃなくて、その窓を開けてみて欲しい。」
それって、とってもいいなと思います。なんというか、マンションに住むいろんな人々が、自分の部屋の窓を開けて、中庭を覗いているような景色が浮かびました。
mica
その景色って「まち」をつくっているみたいじゃないですか。そこには、コミュニティがあって、人が行き交い、共に時間を過ごしたりして、互いに影響しあっている。
古橋
皆さんの中にいろんな風景が立ち上がっていて心がイキイキと動いていて、それをこちらから見ているとなんだか「まち」が動いているみたいに見えるというか。なんかそれがすごく面白かった。僕もそんな記憶がよみがえってきました。
↓ 次回へつづく。↓
プロフィール
mica+hachi/ミカハチ
mica bandoと長谷川久美子による、アンサンブルユニット。主に鍵盤楽器と声を用いる。音が作る空間、「まち」と「ひと」の繋がり、その瞬間に生まれる音楽を大切にするコンサート「オトケシキ 」を筆頭に、日本各地でコンサートやワークショップを行っている。
坂東美佳/mica bando
愛知県生まれ、東京都在住。
鍵盤楽器と声を用いてパフォーマンスや楽曲制作を行っている。2019-2020年六甲ミーツアート「ザ・ナイトミュージアム」、越後妻有「Gift for Frozen Village/ 雪花火」、2018年山口ゆめ花博「KiraraRing」「夢のたね」髙橋匡太作品音楽担当、2014-2018年パフォーマンスプロジェクト「SLOW MOVEMENT」他音楽担当、2018年オリジナルアルバム「Anonymoth」発表。東京芸術大学音楽学部ピアノ科・バークリー音楽院シンセサイズ科卒業。
長谷川久美子/Kumiko Hasegawa
東京都在住。
ピアノの遊び弾きから自然と作曲をはじめる。東京音楽大学作曲科 映画・放送音楽コース卒業。ピアノ連弾ユニットHands two Handsとして活動後、映画やCM音楽の作曲、アーティストへの楽曲提供やアレンジなどを手がけながら、池田綾子、松本英子、手嶌葵らのピアノサポートをつとめる。幅広い音楽活動の中、あらためて自身の音楽の原風景に立ち返り、2019年、1st.ソロアルバム「花を摘む」をリリース。
岩田彩子/Ayako Iwata
愛知県在住。
アッセンブリッジ・ナゴヤの音楽部門ディレクターを2017年より務める。生涯学習としての音楽のあり方や、演奏家の社会的繋がりに関心を持ち、コンサート企画や、音楽教育に携わる。
了徳寺佳祐/Keiske Ryotokuji
愛知県在住。
アッセンブリッジ・ナゴヤの音楽アシスタントとして2018年より制作勤務に就く。長久手市文化の家創造スタッフとして作曲・ピアノの業務にあたる。
古橋敬一/Keiichi Furuhashi
愛知県在住。
港まちづくり協議会事務局次長。学部時代にアラスカへ留学。アラスカ先住民族の文化再生運動に触れ大きな影響を受ける。帰国後、大学院へ進学すると共に、商店街の活性化まちづくり、愛知万博におけるNGO/NPO出展プロジェクト、国内および東南アジアをフィールドにするワークキャンプのコーディネーター等の多岐にわたる活動に従事。多忙かつ充実した青春時代を過ごす。人と社会とその関係に関心がある。2008年より港まちづくり協議会事務局次長として、名古屋市港区西築地エリアのまちづくり活動を推進している。
このインタビューは、愛知と東京を
インターネットで結んで行われました。
写真左上より:古橋,岩田,了徳寺,mica,長谷川
おまけーイントロの小話
古橋
この音源なんか面白いですね。なんだろう?
岩田
映像がないのが逆にいいというか…。
mica
あえて私が名古屋弁で話してるようなところも残してます。その方が、あのときの場の雰囲気が伝わるかなぁと思ったんですよね。。本当は(恥ずかしいので)、カットしたいところなんですけど。
了徳寺
1つ聞いてみたかったのは、最後の部分で音源を重ねられているのは、何か意図があるんでしょうか?
mica
(実際のコンサートの)一つ一つの曲を順番に紹介していこうとすると、そこにはどうしても意味のない間が生まれてしまう。演奏をして、MCをして、観客のみなさんとコミュニケーションが重なっていくと、空間の中にだんだんと場ができてくるじゃないですか。
その場の雰囲気を少しでも表現したいと思いまして。だから終盤の盛り上がりの曲間をわざと重なるように繋いでます。1つの音が消えないうちに次の音を重ねていって…。あの場に漂っていた高揚感みたいなものが出せたらいいなと。
特に最後の曲は、背景の皆さんの拍手がもっと流れていてもいいなぁとか。実際にそうだったんですけど、あのゴチャゴチャっとした最後の感じを伝えたいなぁと思って。
了徳寺
なるほど…ある意味「名古屋飯っぽい」というか(笑)。カラフルで素敵だなぁと思いました。
古橋
実際のコンサートでは同時に聞こえていなかった音をあえて重ねてる?
mica
このコンサートでは、会場のみなさんとのやりとりをどうしても入れたくて。でもそのやりとりだけを裸にしちゃうと、後ろのノイズが気になってしまう…。でもそのノイズって、空気感でもあって。
岩田
うんうん。
mica
だから、例えば手拍子というノイズも空気感だから、後半の乗ってきたところの手拍子を持って来て重ねてみたり…。
コンサートのことを後で自分が振り返ってみたときに、あの曲が来てこの曲が来て、だんだんとテンションが変わっていったな、という感触が私の中に明確に残っていて。その感触を6分の中に凝縮して再現しようとしたら、曲の繋ぎ方が自然に変わっていったんですよね。だんだん後半になると演奏者の音圧も変わっているんです。その変化をどう感じてもらえるのかな?って。
了徳寺
つまり、ただのダイジェストの音源ではなくて、コンサートを振り返ったときの印象を組み立てて、それを6分で表現したみたいな。
mica
そうそう。その作業。全くその通りです。
そんなふうにして振り返って、再構築しました。
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